わらびもち
2025-03-01 11:45:08
895文字
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周防 海鶴

急に生えてきた自探索者の過去


小さい頃は良かった。
他者との差を何も気にせず、好きなことにただ没頭できた。男も女も、上手いも下手も、ただボールを追いかけることを楽しんでいた。

最初に転機があったのは小学校中学年頃。最初は塾に通い始めて時間が合わなくなった子が。次は違う遊びにはまって遊ばなくなった子が。母親に苦言を呈された子が。
どんどんサッカーをしなくなっていった。女の子の遊びじゃないって、そう言った子もいた。テレビの中では、プロになってサッカーをする女の人もいるのに、画面を隔てないこちらの世界でサッカーは男の子のものだった。

それでも私はサッカーをやめなかった。男の子に交じってボールを追いかけて。
放課後遊ばなくなっただけで、女友達と仲が悪くなったわけではないし、あまり気にしていなかった。寂しさもほんの少しだった。

次の転機は中学校に上がった頃。
それまで一緒にサッカーをしていた男の子はサッカー部に入った。女子サッカー部はなかった。
「女の癖にサッカー上手いのキモ」
今にして思えば、思春期特有のものだろう。遊びだけでなく体格も性差がハッキリしてきて、男も女もそれを意識しだして。何かと男女で線引きをしたがる時期だったのだろう。

それまでサッカーしか無かった自分には何も残らなかった。
女の子も入れるサッカークラブが近くにあればまた違う生き方をしたのかもしれないが、そんなものはなかったし、あったとしてもそんな経済的な余裕はなかった。

外に出なくなった。誰とも遊ばなくなった。朝起きて、学校へ行き、食べて、寝る。朝起きて、学校へ行き、食べて、寝る。

そんな怠惰な日々の中で訪れた3つ目の転機が高校入学直前、携帯を買い与えられたことだ。繰り返しの日々の中に新しく入り込んできた機械を弄っている内にたどり着いた動画サイト。そこでは色んな世界で、色んな人が、色んなことをやっていた。好きなことをして笑う人が眩しかった。知らない世界を覗き見ることが楽しくて、憧れは次第に自分の中に根付いて、応援することが生き甲斐にさえなっていった。

そうやってたくさんの動画を見ていく中、私は推しに出会った。