2025-02-28 15:35:34
1310文字
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父と息子たち

次男とか三男は何を持って帰ったのかな~という妄想。当然何もかも捏造。


 昔むかし、とある所にとある男がいた。男には息子が三人いたが、誰に己の跡を継がせるかは決めかねていた。常々男が語るには、みな頭が固く今ひとつ冒険心というものが足りない。つまらぬ男にこの家を任せる訳にはいかない。男は息子どもを呼びつけると、外国へ行って海の向こうで面白いものを見つけて来い、と家から叩き出してしまった。
 息子たちは困惑したし、ほとほと呆れ果てたが、父がこれと決めれば従うしかないとはよくよく分かっていた。これまでも散々、その思い付きに振り回されてきたがゆえである。それぞれ路銀と共はつけてくれたのが、不幸中の幸いであった。そういう訳で三人は三人とも、違う場所へと向かった。

 数年が経ち、はじめに帰ってきたのは二番目の息子であった。彼は父のやる事なす事に普段から人一倍悩まされており、此度もわざと他の二人より厳しい所へ放り込まれたと思っていたので、酷く腹を立てていた。恨みが転じてどうにかして父の鼻をあかしてやろうと、躍起になっていた。そこで魑魅魍魎が跋扈する迷宮で自ら仕留めたものの中で、一番強く一番大きな魔物の首を持って帰った。本当は丸ごと引きずって来たかったが、流石にそれは難しかったので首を落として野で焼き、巨大な頭の骨にしてこれでどうだ文句があるかと父の前に突き出してみせた。
 家中のものはみな感心したが、男はさして驚きもしなかった。
「お前は全く、俺の期待を裏切らない」
 そして機嫌良さそうに笑って言った。
「予想通りだ。だからまぁ、それ以上でもそれ以下でもないな」
 素直で実に愛い奴め、と褒められて、次男坊は全く嬉しくなかった。

 それからまた暫くして、末の息子が帰ってきた。幼いながら賢い三男は、四人の部下と自分の背に持てるだけの宝物を担いできて、旅はとても楽しかったと言った。
 まだ子供で外の世界といえば生家の周囲しか知らぬ己にとって、外国では見るもの触れるもの全てが珍しくて面白かった。道中で得たものは多々あれど、とても選びきれなかったので持てるだけ持ってきたと。
 宝物の山はしかし、大人の目から見れば質はまちまちで品もありきたりである。
「面白くはあるがなぁ」
 うちの蔵に入れる程でもない、と男が言うと、末息子は悲しむでもなくそうですかと納得した。どころか笑顔でこう言った。
「ではこれらは私にください。ここまで付いてきてくれた者たちに山分けさせてやりとうございます」
 父は好きにするが良いと言った。末息子に付けてやった部下達はみな喜んで、流石は御館様なんとお心の広い、と口々に言った。
「子供らしゅうございますな」
 その時男の傍にいた部下のひとりが、少し背が伸びたとはいえあのように幼い、と溜め息をついた。
 男はまた笑った。末息子の持ってきたものの中にあった、真っ赤な珊瑚の珠を手の中で転がしながら。血潮のように赤い珠だった。
「そう思うか。――俺はあいつのああいう所が、全く末恐ろしい」

 残るは一番上の息子である。
 怯えて父の背中に縋る姿をよく憶えている。あの頃よりは、少しは強くなった。
 一体なにを持ち帰るものか、男はそれが楽しみだった。