やまだ
2015-06-14 18:24:02
777文字
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ジュリエットとクロノ

のあのせりふ妄想

……それでも歩む道は自由なんです」
 怖い。気を抜けばみっともなく声が震えてしまいそうだ。
 腐敗しきった世界で出会った唯一無二、この上なく尊い人にまっすぐ見据えられる、その視線の強さがジュリエットはおそろしかった。けれどもこればかりは譲れないからぐっと顎を引く。
 気の遠くなるような時を生きてきた人に、彼からすればほんの瞬きひとつほどしか生きていないジュリエットごときが意見するのは噴飯だろう。それがわかっていても、とてつもない意志の力を必要としても、今ばかりはジュリエットは彼に、クロノに逆らう。
「たとえ穢れた血だろうが、たとえ咎持つ者だろうが、道が続いている限り不幸も……幸せだって、潰えません。俺はそう思います」
 ふっとクロノが目を眇めた。肩を強張らせるジュリエットを無視して細く長い息を吐く。
……そうか」
 風に溶かすような声だった。
 今クロノが何を思っているのか、ジュリエットには汲むことができない。それでもしっかりと首肯した。
……せ、んぱいだって、もっと」
「ロウ」
 ゆるい瞬きののち、クロノはごく微かに口べりを上げる。駄々をこねる幼子を宥めるための表情によく似ていた。
「そうだな。俺も、俺の道も、続いている」
……はい」
「ならば歩こう。おまえの言うとおりだ。進んだその先に、どれほど微小でもさいわいが待っているのなら、躊躇などしている暇はないな」
「はい」
……では行くか。ついてこい、ロウ」
……了解!」
 さっと身を翻し歩きだす背は、ジュリエットがあとへ従うことを疑いもしていない。それをかつてのジュリエットならば愚かだと嘲笑しただろう。今はただ唇を噛む。
 いつまでも、百年でも千年でも、この人と同じ道を歩いていくことができたなら、きっとジュリエットにとって他の不幸など話にならないほどの僥倖だ。