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こꯓレ)ろ🌟🦄🌈🌟
2025-02-26 23:39:48
9780文字
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ハイノイほにゃっと小説
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クピードーの記憶③
記憶喪失ハイノイ続き
ほわっとした事後描写あります🫡
♦︎
翌朝、休日だったので朝食後のチャンドラを呼び止めて記憶が戻った事を告白した。
「実は昨日の段階で思い出してたんだけど、何か気まずくて言えなかった」
「はぁ? アルバートは怒ったりしないだろ、むしろ喜んで泣くと思う」
「うん。怒られる心配はしてないけど、昨日顔ぐっちゃぐちゃになるまで泣かせたからむしろ言えなかったっつーか
…
恥ずかしかったっつーか」
みんなの前であんなに力強く「世界よりノイマンが大事」だと叫ばれたらいくら何でも恥ずかしいに決まっている。
「それで一晩放置したのかよ、可哀想だろ。さっさと言っちゃえよ」
「そう、だよな
…
謝らないとな」
チャンドラがその場でハロの通話機能を使い、ハインラインに「後からノイマンを連れて行くから今日は絶対に外出しないで家にいるように」と連絡してくれた。
ナタルとソーマは昨日からチャンドラ家に泊まっていたので、帰宅前に記憶が戻ったことを伝えた。
「二人とも、忘れててすまん! 全部思い出した。帰ってくるのが遅くなってごめんな」
リビングでコノエと子ども三人がソファに座りテレビを見ている時に告げたら、ソーマが立ち上がって小さな声で呟いた。
「
…
アーニー父さん?」
「うん、ただいま。ソーマ」
「お父さん!」
ソーマはさっきまで握りしめて離さなかったテレビのリモコンを放り出してノイマンに抱きついてきた。かろうじて転倒を免れ脚に縋り付くように抱きついた息子の頭を撫でてやる。
「よがっだぁ〜!」
ぶわっと涙が溢れる息子は、元気なように見えても本当はノイマンに忘れられてしまったことが寂しかったようだ。ナタルも涙目で抱きついてくる。
「アーニー父さんおかえりぃ!」
「ナタルも心配かけてごめんな」
「アル父さんには?」
「今から帰って言う」
「早く帰ってあげて! ずっと待ってるんだよ!」
「うん」
ナタルに言われて罪悪感が募る。小さな子どもから見てもハインラインはノイマンをずっと待っていてくれたのだ。
「ノイマン、本当に良かった」
子ども達とハロに囲まれ一緒にテレビを見ていたコノエもホッとした表情をしていた。彼にもたくさん心配をかけた。
「迷惑をかけてすみませんでした。ありがとうございました」
ノイマンが頭を下げると、コノエは笑って言った。
「いいや、君が死んだと思った時にはダリダもたくさん泣いたから、生きて帰ってきてくれただけで本当に嬉しいよ。だから心配はしたが迷惑ではなかった」
「アレクセイ! そんなに泣いてませんが⁉︎」
「そんなこと言って、ママ、熱出るくらい泣いてたじゃん」
「うっ
…
」
すぐ横にいたチャンドラが頬を赤らめて否定するが、セレネに熱まで出したことを暴露されて押し黙る。
「ありがとな、チャンドラ」
「いや、別に泣いてないし
…
」
気まずそうに目を逸らすあたり、熱を出すまで泣いてくれたのは事実のようだ。
子ども達と一緒に帰るつもりだったが、コノエに止められ、先に二人で今後の事を考えた方が良いと進言される。それもそうかと子ども達をチャンドラ家に預けて先に一人で戻る事にした。
脚に抱きついて離れなかったソーマはコノエが抱き上げてあやし、その間に娘たち二人に見送られてチャンドラの運転で自宅に向かう。
久しぶりに帰宅するとエントランスには新しい手摺りとスロープが増設されバリアフリーに改築されていた。
「これってもしかしなくても俺のために工事したのかな」
「あいつってこういうところマメだよな」
チャンドラの肩を借りて車を降り、杖をついて真新しいスロープを上がる。
玄関のパスコードを入力して中に入ったところでチャンドラが言った。
「子ども達は今日も預かるってアレクセイが言ってたからどうぞごゆっくり」
「流石に申し訳ないんだが
…
あとでちゃんと迎えに行くから」
「アレクセイが言うにはそれは絶対無理らしい。だから気にすんなよ! それより頑張れよ」
「無理って何だ?
…
まぁいいか。じゃあ、行ってくる」
チャンドラに励まされ家の中に入ると、家の中も完全にバリアフリーになっていた。
一階の玄関近くの客間がノイマンの個室になっており、いつ帰って来ても良い様に準備してくれていたのだと思うと嬉しい。
みんなの前で熱烈な愛の告白をされ、気まずくて記憶が戻ったことをすぐに言えなかったのが申し訳なくなった。
リビングまで入るが、人の気配がない。ソファにはブランケットが丸まっており、テーブルの上にウイスキーの瓶とグラスが放置されている。昨日はここで寝たらしい。
「アーニー
…
?」
声をかけられ振り返ると、ドアのところにハインラインが立っていた。昨日の格好のままで、前髪が濡れているから顔を洗っていたのだろう。
「すみません、昨日シャワーを浴びずに寝てしまって。チャンドラからの連絡で起きたので何も支度が出来てなくて
…
」
「ただいま
…
」
つい目を逸らしそうになったが、それはダメだとまっすぐハインラインを見つめて言ったら、泣きそうな顔をして笑った。
「
…
やっとアーニーと目が合った」
目が合っただけで泣くほど嬉しいと思われているなんて、俺は愛されている。
「俺はお前に捨てられるのが怖かったんだ」
「
……
は?」
「脚がダメになって、操舵士として使いものにならなくなって、お前の作った船を飛ばせなくなって、幻滅されるのが怖かった」
「何を言ってるんですか」
「だから忘れてたんだと思う。ずっと忘れててごめんな、アル」
「アーニー
…
記憶が
…
」
「うん、思い出した。お前は俺との約束を全部守って待っててくれたのに、俺は帰ってくるのがこんなに遅くなってごめん」
謝って頭を下げている間、ハインラインは何も言ってくれなかった。恐る恐る顔を上げると青い眼にいっぱいの涙が溜まっている。
「ナタルとソーマを守ってくれてありがとう」
大切な子ども達を無事に地球に降ろしてくれた。ノイマンがいない間も抱きしめて、守ってくれていた事に心から感謝する。
「アーニー!」
ハインラインは名前を呼んで駆け寄ってくるが、直前で立ち止まって膝をついてしまった。
「ごめんなさい。僕のせいで君が死にかけるようなことになった。許してくれ。嫌いにならないで! 何でもする!」
抱きしめられるのかと思ったがそうじゃなかった。土下座する勢いで言われたが悪いのはハインラインを暗殺しようとしたテロリストであって、事件でのケガを謝られる筋合いもない。先にシャトルに乗れと言ったのもノイマンの意思だ。
せっかく抱きしめてくれるのかと期待したのに肩透かしされたようで面白くない。
「何もお前のせいじゃないだろ」
「でも」
「怒ってないし嫌いにもならない。愛してるから久しぶりに帰ったパートナーにキスくらいしてくれよ。俺からいってもいいけど、一回しゃがむとまた立つの大変なんだぞ」
「え」
「お前こそ怒ってんのか? 俺が半年も帰らない上に家族のことを忘れたから」
ハインラインが天才らしからぬ呆けた顔で数秒固まった後、立ち上がって飛びついてくる。ハグされて、背中や腰に回された腕に少しずつ力が込められぎゅうっと身体をくっつけられたがそのゆっくりとした動作がいじらしい。昨日襲いかかったことを気にしているに違いない。
怪我したナチュラルなんて簡単にねじ伏せることが出来るのに、ノイマンの反応をつぶさに観察し、嫌な思いをさせないように慎重に触れてくる優しいコーディネイターだからハインラインのことが好きになった。
「怒るはずない。アーニーも約束を守ってくれた」
「アル
…
」
キスして欲しくて名前を呼んだら、正しく意図を汲み取ってくれた。触れるだけのキスを二回。それから下唇を舐められて、少しだけ口を開けると舌がぬるりと入って来て、ノイマンの舌を舐めたがる。いつものキスのルーティンに安心した。愛しい人の腕の中に帰ってこれたのだと思うと目頭が熱い。
「んっ
…
ン。ぁ
…
」
くぐもった吐息に唾液の混じる濡れた音が響いて胸がいっぱいだった。ハインラインの愛を失わずに済んだ。何に変えても生きることに固執して良かった。また会えて良かったと心から思う。
尖らせた舌で口蓋をぞろりと舐られて、腰のあたりに快楽が溜まっていく。この半年、性欲なんてどこに行ったのかと思うくらい枯れていたのにキスだけで急にしたくなった。
ハインラインがキスの合間に甘い声で名前を呼んで、「大好き」と「愛してる」を譫言の様に呟いているからだろうか。
抱きしめられているのを良いことに杖を手放してハインラインに体重をかけて抱きつく。
「アー、ニー
…
?」
「おれも、すき」
「ッ
…
!」
「愛してる」や「好き」を言葉に出して伝えるとハインラインが異常に嬉しがって、がっついてくるから普段はあまり言わないようにしているのだが、今日くらいはむしろ言いたい。
案の定、ハインラインのキスは急に激しくなったし、身体を抱きしめる腕に力がこもる。
「ンッ
…
ァ。ん、んっ」
後頭部を掴むように抑えられてキスの息継ぎがしにくくて苦しいのに、それが気持ち良かった。
久しぶりのキスをしばらく堪能したが、それだけでは足りなくなって自分からハインラインにもたれかかって昂った下半身を押し付ける。
キスは大量の唾液を飲まされて、飲み切れなかった分が口の端から伝い落ちていく。挙句にぞろりと歯列をなぞられて腰が震えた。
「ンァッ
…
あっ、アル
…
」
長かったキスが終わった時には、ノイマンは膝から力が抜けてその場に倒れてしまいそうになる。腰を支えるハインラインの腕の力は強く、気持ち良すぎて涙が滲み、ぽやんとぼやける視界を向ければさっきまでメソメソ泣いて謝っていたのが嘘のようにギラついた男の顔になっていた。
こういう表情をしたハインラインは、必ず激しく求めてくる。ノイマンはこのあと自分がどうなるか完全に理解して、期待してしまった。
キスが気持ち良かったのはノイマンも同じで、久しぶりにたっぷり抱かれたい気分になっている。
「
……
朝だけど、時間なんて関係ないよな?」
「当然です」
「愛してる」
ノイマンがハインラインの理性にとどめを指すと、ハインラインは嬉しそうに笑ってノイマンの身体を抱き上げてくれた。
二人の寝室は二階にある。横抱きにされて階段を上がるハインラインの足取りはしっかりしたもので、こういう時に人種の差を強く感じる。
ノイマンもハインラインを抱き上げることは出来たが、こうも軽々というわけにはいかなかった。
「なぁアル。俺、片脚無いし、服で隠れてるところも結構火傷の痕すごいけど、平気?」
「平気とは?」
「いや、傷痕見て気持ち悪いとか萎えたりとか
…
まだ片脚でバランス取りづらいときもあるし、前みたいには出来ないと思う」
「ハッ! 愚問です」
寝室へ向かいがてら、不安に思っていたことを確認すると、ハインラインは少し不機嫌になった。
両眼が無事だったのが奇跡だったと言われた程、顔や腕の火傷が酷く、赤黒い痕は現在も濃く残る。頭も少し火傷したので髪が生えにくくなっている部分もある。
たどり着いた寝室のドアは自動で開いて、ハインラインはベッドの上に恭しくノイマンを降ろして座らせてくれた。
「嫌じゃないのか? いざヤる時に萎えても怒らないから安心してくれ」
「萎えない」
「
…
実際やってみなきゃわからないだろ。大丈夫って思っても見たらやっぱりダメなこともあると思うし
…
」
ノイマンの前に跪き、両手を取って見上げてくるハインラインが言った。
「僕がどれだけこの時を待ち望んでいたか! そんなことくらいで萎えるわけないだろう」
「
……
そっか」
そんなこと、になるのか。ノイマンはハインラインの言葉に満足した。傷だらけの自分が受け入れられなかったらという不安をきっぱりと否定されて嬉しかった。少なくとも、どんな自分でも受け入れてくれる気概はある。それだけで充分。彼の向けてくれる優しさに愛しい気持ちが溢れそうになる。
「ただいま、アル」
「おかえり、アーニー」
視界が涙で潤んでしまうのはどうしようもない。ハインラインにまた抱きしめてもらえるのが嬉しい、幸せの涙だ。
「アーニーの不安を取り除くために、僕に出来ることはある?」
「じゃあ、風呂に入れてくれ。一人で入ると立ち上がるのがキツい」
「わかった。他には?」
「えっ
…
と。抱かれる準備もして欲しい」
男同士で愛し合うためには準備が要る。これまでは羞恥心もあってハインラインに頼んだことは無かったが今は自分で出来るか自信がなかった。
「中、きれいにして
…
欲しい
…
」
「勿論、全部僕に任せて」
ノイマンは恥ずかしすぎて顔が熱くて仕方ないのに、ハインラインは背景に花が舞ったのではと錯覚するくらい嬉しそうにしてノイマンの唇に触れるだけのキスをして「バスタブに湯を張ってくる!」と言ってバスルームに飛び込んで行った。
準備まで任せるのは流石にやりすぎたかな
…
と早速後悔してしたが、今の状態で自分で十分に準備できそうに無いのも事実。
寝室に併設してあるバスルームから、バスタブに湯を張る音がきこえてきた。すぐに戻ってこないので何やらハインラインが準備してくれているようだった。
待っている間に久しぶりに帰って来た寝室を見回すと、何も変わっていなくて安心してしまう。ぼうっとして待っていると、嬉々としてバスルームから出て来たハインラインが手に色々と洗浄のための道具を抱えている。
「アーニー、準備ができた」
「あ、ああ」
本当に準備を任せてしまうのか
…
と思うとまた頬が熱くなったがここでやっぱり嫌だとは絶対言いたくない。ノイマンも今すぐハインラインに抱かれたかった。
♦︎
ハインラインに全部任せるのは、思ったよりずっと恥ずかしかった。
もう何回も肌を重ねてきて何を今更と我ながら思うが、今までは見せてこなかったところへもう一歩踏み込んでこられて、これまでで一番左脚を失ったことを後悔したかもしれない。
だが、ハインラインはずっと嬉しそうに甲斐甲斐しく世話してくれるし、壊れもののように慎重に優しく扱われて不覚にもときめいてしまった。
ベッドに潜り込んで上掛けを被って二、三日丸まっていたい程の恥ずかしい行為も、愛しているから見せられるし、愛されているから許容できる。
泣きたいわけでは無かったが、意思とは関係なく涙が出てきたときにはこれ以上ないほど慌てて焦って謝ってくるハインラインが健気で可愛いと思った。
バスルームも寝室も、レースカーテンごしの柔らかな陽光が差し込んでいて明るく、何もかもが目に入る。不安も羞恥も乗り越えて朝からセックスする背徳感を覚えながらも半年以上触れ合っていなかっただけにお互いの熱を貪りたいという想いは一致していた。
左脚が無い分、体重の掛け方や出来る体位が限られる。バランスを取るのが難しくて、これまでにしたことのない体位を試したりと新鮮な刺激にむしろ興奮した。
なぜこの幸せを忘れられていたのだろう。ハインラインが与えてくれる快楽を全部思い出して満たされて、意識が飛ぶくらい気持ちよくされてしまう。
もう何も出ないところまでイかされたあとは、延々とドライでイかされて気持ちいいところから降りてこられなくなった。
ハインラインが満足するまでひたすら揺さぶられていつの間にか寝てしまっていたが、夕方に目が覚めてもずっとベッドの中である。
ハインラインは横でずっとノイマンの寝顔を眺めていたらしい。指一本も動かせないほど疲れているし喘ぎすぎて枯れた声で「のどかわいた」と訴えたら、口移しで水を飲ませてくれた。
ゼリー飲料のパウチの飲み口を噛まされて少しずつ飲み干すと、一旦シャワーを浴びさせてくれたが風呂上がりのケアをされた後はいつの間にかシーツを変えたきれいなベッドに戻された。
そろそろ子ども達も迎えに行かなければならないのに、疲れたから少し寝るのかと思いきやセックスが始まる。散々イかされてまだ腹の奥が疼いている状態でまた抱かれてすぐに理性が蕩けた。意識が飛ぶまで揺さぶられ、目覚めると抱かれてを繰り返して時間の感覚が無くなった。
何度目かの目覚めで、ハインラインにキスされて身体を弄られて
…
という時に流石に殴った。
「お前
…
いい加減にしろよ!」
大きな声をだして力一杯殴ったつもりだったが、ハインラインの肩をトンと押したくらいの力しかなかったし、情けなくも喉は枯れて掠れ声だった。
それでもノイマンの憤りはしっかり伝わったようでさっきまで満面の笑みだったのが一転してこの世の終わりかというくらいの悲壮な表情になって平謝りしてくる。
「ごめんなさいアーニー
…
おこらないで」
「いや、怒るだろ
…
なんで怒られないと思ったんだよ」
「だって気持ちよさそうだったから
…
」
「バカかお前は
…
限度ってもんがあるだろ」
この稀代の天才様はたまにバカになる時がある。主に自分が関わっている時なので悪い気はしないのだが抱き潰されて動けなくなったとなると話は別だ。
コノエが子ども達を預かってくれると言っていたのはこういうことかと合点がいった。
「今何時だ?」
「朝の九時」
「はぁ
…
一日経ってる
…
」
「いや、二日です」
「は?」
まさかの丸二日、ベッドの上とは思わなかったので驚いた。
「子ども達は?」
「先生とチャンドラが預かってくれています。連絡はしているが
…
」
「当たり前だ
…
クソッ! あぁ
…
」
寝返りをうってハインラインに背中を向ける。ナタルとソーマに何と言って謝ろう。せっかく思い出したのにまだ満足に抱きしめてやれてない。
チャンドラにもコノエにも既に多大な迷惑をかけているのに、記憶が戻って更に二日も子ども達を預かってもらう事になろうとは。しかもセックスで潰されてとなると、合わせる顔がない。
「アーニー? あの
…
」
途方に暮れていたらハインラインが震え声で呼んでくるので、振り返って怒鳴った。
「お前はもう少し考えろよな! いくら何でも
…
」
「ひっ
…
」
「あ
…
」
ハインラインはびくんと身体を震わせて捨てられた仔犬のような顔をしてノイマンを見ていた。これ以上言ったら泣かせる、と悟って急に冷静になって黙る。
不可抗力とはいえ、寂しい思いをさせたのはノイマンの方だし、丸二日も求められたのは愛されている証拠だ。
「
…
いや、怒鳴ってごめん」
「ぼ、僕が悪いんです! 謝らないで」
「いや、俺も悪かった。つか
…
疲れた
…
お前は歳の割に元気すぎ
…
」
手を伸ばして、身体を起こして欲しいとジェスチャーで伝えると、丁寧に背中を支えられて上半身を起こされた。改めて身体を見ればキスマークと噛み跡だらけで、服で隠れないところにまで痕がつけられている。
「うわ
…
痕が
…
」
「我慢できなくてつい」
「しかもあちこち筋肉痛だ
…
腰痛い
…
」
「マッサージします」
「いやいい。早く子ども達迎えに行きたい。風呂入るから手伝ってくれ」
「はい!」
手早く身支度を済ませてチャンドラの家に行かなければ。
身体を洗うのも、湯船に浸かるのも、風呂上がりのケアも、着替えまでハインラインが手伝ってくれた。ここまで甲斐甲斐しいと手伝うというよりむしろ全部やってくれたという方が正しい気がする。
服を着せてもらい、洗面ドレッサーの前で椅子に座って髪を乾かしてもらう間、どうしても手間をかけさせることに申し訳ないと思ってしまう。
…
が、ハインラインはなぜかやたらと機嫌が良く、ソーマと一緒によく見ている夕方の子ども向けテレビ番組のテーマソングをハミングしている。
「なんでそんなニヤけてんだよ」
ノイマンが鏡越しに尋ねたら、急に真顔になった。
「別になにも
…
」
「いや絶対ニヤけてただろ」
ハインラインがニヤけていたところはしっかり見ていたし、鏡越しに目も合ったのに、何故そんな見え透いた嘘を言うのか。
「エロいことでも考えてたのか? あんだけヤったのに?」
流石に二日間ベッドの中に居たのは初めてだったし、ノイマンはかなり疲れている。それだけ寂しい思いをさせてしまったと思えばむしろ罪悪感を覚えるのだが。いくら何でもヤりすぎだ。腹が立ったのでため息を吐いて視線を逸らしたらハインラインは急に慌てふためいてドライヤーをオフにすると横に跪き、ノイマンの膝に両手を置いて謝ってくる。
「本当はニヤけてました! すみません!」
ノイマンがそっぽを向いたの見て怒らせたと思ったらしい。こんなにすぐ手のひらを返すくらいなら最初から正直に言えば良いのに。往生際の悪さに少し呆れる。
「着替えを手伝えて嬉しかったというか
…
この脚ならもう一人でどこかに行くことも無いと思うと嬉しくて
…
アーニーは不自由な生活になったのにそれを喜ぶなんて愚かでした
…
許してください
…
」
罪悪感からか言い訳の口調も丁寧になっている。震え声の謝罪はノイマンへの執着を語るもので、大好きと愛してるの言い換えに聞こえた。
「なんだよそれ、独占欲ってことか?」
「そ、そのようなものだ
…
前は長期任務でアークエンジェルに乗ったりオノゴロ勤務でも毎日仕事で家に居る時間が短かったしずっと家にいてくれたら嬉しい。退役には賛成だが就職先を探すのはしばらくやめておかないか?」
「俺が操舵士でなくなってもいいのか? お前の作った船を飛ばせなくなっても?」
「脚が片方無いくらいどうとでもなる。そういう艦を作ればいいだけだ。たとえ腕が無くなっても、眼が見えなくても、生きてさえいてくれたら僕が必ず何とかする。操舵士を続けたいなら続けられるようにする」
「
…
頼もしいこって」
当たり前のように言い切られて、そうか、アルバートはこういうやつだよな。と思い出す。
尊大で、それに見合うだけの能力があって、大抵のことを何とかしてしまう。
つい忘れてしまいがちだが、ノイマンを愛して尽くしてくれるパートナーは一応世間では稀代の天才と呼ばれている男だった。
「なら義足作ってくれないか」
「もう出来てる」
「え?」
「オーブに戻ってすぐに義肢について勉強したんだ。モビルスーツのノウハウがあったしある程度はすぐに形になった。モビルスーツを歩かせるより人間に義足をつける方がはるかに簡単だからな。自分の意思で思い通りに動かせるサイバネティクス義足も何種類か準備してあるし、神経系の接続も僕が出来た方が良いかと思って医師免許も取った。オーブで義肢に強い整形外科がある病院も買収済みで、手術もすぐ出来る、普通の義足で良いなら今すぐ着けられるが」
「
………
ははっ、お前ってほんと、そういう奴だよな」
何の気なしに義足をねだってみたらもう完成していて、いつもの早口で淡々と説明してくるので笑ってしまった。本当にノイマンのために一生懸命だ。
「そういう、とは?」
「俺のことが大好きで、健気で可愛い」
「か、わ
…
?」
ハインラインはノイマンが可愛いと言うと照れて喜ぶ。
頬を染めるハインラインの頭に手を乗せ、艶やかな金の髪をわしゃわしゃと掻き乱した後、指で雑に梳かす。そのまま耳をくすぐって、指先で頬を撫でると、ノイマンの手のひらに頬を擦り寄せてうっとりと見つめてくる。
天才のくせにたまにポンコツで、ノイマンの前でだけ見せる甘えたそぶりが可愛い。
「こんなに綺麗でかっこいい男なのに、俺の前でだけ可愛いとか、反則だろ」
「別にそんなつもりはないんだが
…
」
「いや、可愛い。俺のかわいいアルバート」
キスして欲しくなって、指でハインラインの唇をふにふにと軽く揉むと嬉しそうに目を細め「アーニー、愛してる」と呟いた。
ノイマンも「愛してる」と言おうとしたが、ハインラインのキスに口を塞がれて何も言えなくなってしまった。
おわり
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