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orikoriko1125
2025-02-26 22:27:34
4429文字
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カキゼイ
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目に物見せてくれ
ぜゆがメロメロになる話を書きたいと思った結果……。
部活が始まる前の、だーれもいない時間にうとうとするのが最高に気持ちいい。
だんだんみんなが集まってきて、少しづつ覚醒して、今日も部活頑張ろってなんのよ。
でも今日は強制起床、たまにあるパターン。座ってる椅子の脚蹴られるのは、初めてだ。
「ねえ
……
昨日までのブライア先生から出された課題、提出してないでしょ」
「してないねぃ」
そもそもそんなのあったか、授業に出るのも気まぐれでやんすから。
「あんたが出してくれないと、先生もあたしも明後日からの校外活動、行けないの!」
「そりゃ一大事で
……
」
口を開くごとに、ゼイユの目がつり上がって行くのが面白い。美人が台無しじゃねえか。
「今日の八時にあんたの部屋に取りに行くから、絶対に終わらせなさい! 出来なかったらどうなるか、分かってるでしょ?」
「え〜、ゼイユ様こわーい」
つり上がってた眼が細まって、でんこうせっかでまた椅子ごと蹴られた。
不機嫌な背中が部室を出ていく。そういえば最近怒った顔しか見てねえな、たまには喜ばせてやるか。
まずは課題を探すとこからだねぃ。
「やっぱり、というか
……
あんたほんとに悪い期待は裏切らないわね」
「へっへっへ、褒めんなって」
「全っ然褒めてないから!」
あんなにキレてたのに、約束通り来るのはさすが。
課題は運よく机の一番上に乗っかってて、穴埋めるだけの簡単なやつ。先生の慈悲か?
「わりいけど、九時に出直してくんねぇかい? それまでには終わるから」
「ここで待たせて貰うわ。あんた監視してないとサボるでしょ」
「
……
マジで?」
夜に男の部屋に行くのに、そんな足出した部屋着で来るのはどうかと思う。待つならしまっとけ。
ついでに髪も上げないでおけ。しっかりしてんだか、してねーんだか、元先輩は心配なのよ。
「だってあと少しでしょ? このあたしに取りに寄越して、二度手間かけさせるなんて何様よ」
「そりゃそうだけど
……
」
「適当に待つから、とっととやりなさい!」
勝手に人のベッドに座って、落ちてる漫画を我が物顔で読み始める姿に、こりゃ弟の部屋に来たのと同じつもりと気付く。
いないものとして扱いたいのに、ページをめくる音や呼吸音が集中力を欠く気がする、元からねーけど。
「ねえ、喉乾いた。なんかちょうだい」
「ご勝手にどーぞ!
……
女王様すぎんだろ」
言動だけはガキの頃、家に遊びに来た友達と一緒。姿さえ見なけりゃ別に何でもないな。
「ありがとー」とキッチンから声が聞こえるのを流したら、プリントの文字がさっきより頭に入って来る気がした。
「おわっ
……
た」
ホコリ被ってるけど、狂ってはいない時計はまだ十五分しか経っていなかった。
待ってて貰ってよかった、更に怒らせちまいそうだったな。
そういやさっきまで嫌ってほど感じてた気配が、一切ねえ。
いつの間にか部屋出てたのか? ベッドの上には読みかけの漫画が伏せられてて、ゼイユのスマホも並んでる。
「
……
ゼイユ? うわっ」
暗いキッチンの床に白くて細いのが、ほおり出されて、焦った。
流しを背もたれにして夕方に部室で見たのと全然違う、溶けそうな眼でオイラを見る。
「大丈夫か!? どうしたんでぃ」
「
……
ぼーっとしてるだけよ。あれ美味しかった」
暗くても分かるくらい、耳も顔もやたら赤い。指さしたカウンターに置かれた缶。
ヤバい、とっくに卒業した友達が来たとき勝手に置いてったヤツ。
「わりい
……
あれ、酒。捨てようと思って忘れてた」
「そうなの? 美味しかったからいいわよ」
妙に上機嫌で怖えーし、確か酒は飲んだらいけない年齢だったな。
「
……
立てるか? とりあえず水飲め」
「はぁー? 立つくらいできるけど、バカにしないでよ」
「してねえから」
ケラケラ笑って「待って、立てない」と全然面白くないこと言い始めた。
「座ったままでいいから飲めって」
「ありがと」
こんなに上機嫌なゼイユは珍しい、喜んだ顔は見たかったけど思ってたのとちげーな。
でも怒ってるより、全然いいけど。
コップの中の水が空になったら、部屋に送って
……
。
いや、もし酒飲んだのバレたら校外活動に行けなくなる、どころか実家に強制送還。
しかももれなくオイラも道連れ
……
?
「もう少し酔い醒めるまでいてくれるか?」
「別にいいけど? 床硬いからあっち行きたい」
オイラの楽しい学園生活を延長するためには、しばし匿うしかなくなった。
手を引いて立たせても、機嫌は全然悪くならなくてこっちも調子狂いそう。細い手まで熱い。
「あんたの手、冷たくて気持ちいいわね」
「
……
そりゃよかった」
うふふ、と笑ってまた勝手にベッドに座る。勘弁して欲しいけどしょうがない。
「手、離してくれね?」
隣に座るわけにもいかねえし。ゼイユを見下ろすのは初めてだ。
「もうちょっと貸しなさいよ。顔熱くてやなの」
人の手を氷代わりにすんな、勝手に当てられた左の頬が、想像以上に柔らかくて熱が移りそう。
「気持ち悪くねえの? ちょっと横になるか?」
「なんか大丈夫みたい。でもぼーっとするから、横に座って肩も貸して」
聞こえないフリをする。何言ってんだ、貸せるか!
「
……
座って」
バンバン左側のスペースを叩く。
めんどくせー親戚のおっさんだと思えば、ギリ耐えられるか?
距離開けて座ったのに、詰められた。背はゼイユの方がデカいのに、座ると高さ同じなのどうなってんだよ。
投げ出された白い腿が、赤くなってるのを目に入れて後悔する。やっぱりおっさんじゃねえな。
「あんた三留の上、飲酒ってどんだけ不良なのよ」
「だから、勝手に置いてったんだって。オイラは下戸」
ヤバい、一回は飲んだことあるのをゲロってしまった。
「そーゆーことにしておくわ。あたしは初めて飲んだけど、なんか楽しいわね」
さっきからずっと、とろけた笑顔をしてるからそれはわかるって。
「お前さん、大人になるまで飲まねえ方がいいと思うけど。なんか、」
かわいすぎるから。
あぶね、変なこと言いそうになった。
「
……
なんか? なに?」
「なんか
……
ヘロヘロしてっから?」
「全っ然、ヘロヘロしてないわよ!!」
ヘロヘロのまま、右肩にもたれてくるな。めちゃくちゃいい匂いするし。
所在なくて、スマホロトムを呼んで適当な動画を再生する。目に入ったチラチーノのサムネイル、これでいいか。
『
……
ここヒオウギシティで大人気のレストラン!! 看板ポケモンはオーナーの相棒、チラチーノのチヨちゃんです〜!』
全然頭に入ってこねえ。チヨちゃんより、隣で「チラチーノ、かわいい」って言ってるお前がかわいいけど。
レストランを掃除するいい子のチヨちゃんを見守ってる間に、番組はエンディングを迎えていた。
「
……
ねむい」
顎が外れそうな大あくび。歯並びのいい歯がよーく見えた。
「送るから、帰って寝ろぃ」
「むり、いますぐねそう」
勝手に寝始めようとすんな! 細えのに、揺すってもびくともしねえ。
「起きろ、起きて
……
」
長いまつげすら動かない。一瞬で寝られるのは羨ましい。
「じゃあベッド貸すから寝てろ。オイラはどっか行くからよう」
さっきまで石みたいに動かなかったのに、ばちって眼と口だけ開けた。
「
……
行かないで。寂しいじゃない」
何言ってんの? もうやだ、この女
……
。なんでそんなにしょんぼりしてんだよ。
「わーったから! 寝ろ!」
また笑って「隣どうぞ」と更にわけわかんないこと言い出した。かわいい。殺す気か?
「ムリムリ
……
」
「はぁ? あんたあたしの隣で寝られないって言うの!?」
めんどくせー親戚のおっさんが言うやつな。今はおっさんの隣で寝たい気分。
でもゼイユなのは変わんねーし、限界まで距離を取る。半分落ちてる気がするけどしゃーない。
なるべく天井を見て、隣を意識しないように。シミを数えてる間に終わってくれ。シミねえな。早く寝ろ。
「お前大人になっても、男と二人きりで飲みに行くなよ。頼む」
「なんで?」
マジで分かんないのか? ねーちゃんしっかりしてくれ!
「
……
お前みたいな女にこんなことされたら、普通の男は
……
なんかおかしくなるから」
「しないけど」
してるから、忠告してんだよ。たまには元先輩の言う事聞いておけぃ!
「
……
カキツバタ以外にはしない。カキツバタが、好きだから」
「は」
好きなの!? 嘘だろ?
「嫌?」
「
……
嫌、じゃねえけど、シラフのときに言えって。聞かなかったことにすっから」
なんで今言うんだ。嫌どころか嬉しい、けど今じゃねえだろ。
早く寝ろ、ってもう一回心の中で願う。一生懸命瞼を閉じてたら距離を詰められた。
勝負の最中じゃねえから、背を向けさせてくれ。
背中があったかい、この匂いの花、実家の庭に咲いてたかも。細えのに柔らかい。
もっと関係ないこと考えろ、ドードー、ドードリオ、タマタマ、ナッシー
……
。
腕が腹に回された。あったかいより、熱い。
自分のことを好きな女が、隣にいる。いいんじゃないのか。後から訴えられる?
ナッシーの次、何だっけ。
……
もう知らねえ、無理だ。
「
……
ゼイユ! あ」
願いはちゃんと届いてた。振り向いた先には、ヘロヘロした寝顔の女が寝息を立ててる。
危ない、マジで危なかった。さっきまで振りほどけそうも無かった腕も、あっさり外れた。
床に転がって椅子に掛けたジャージをひっぱって、布団代わりにして、カエンジシまで脳内で唱えたらやっと瞼が重たくなってきた。
「え? なんで!? 頭いた!! ちょっと! あんた、な、なんかした?」
目覚ましアラームは最近はもうかけてねえはず。スマホロトムの目覚ましよりうるせえな。
「
……
してねえって、されたのはオイラだけど」
「あたしが? 何したのよ!?」
やっとのことで起き上がると、腕を何回もはたかれた。寝起きなのに元気すぎんだろ。
「してないけど、されたんでぃ」
時間はまだ明け方、よかった。時計見たついでに、発端のプリントを取る。
全てはこれのせい、いや自業自得?
「
……
静かに部屋戻れよ。これ課題。待たせて悪かったな」
「終わったの? やればできんじゃない。いつもやってよ」
耳が痛い。やらなくていいならしたくないんだって。でもお陰で、寝起きの剣幕が一瞬で落ち着いてくれた。
「へいへい。ゼイユはもう夜に男の部屋、行くなよ。酒も飲むな!」
長い脚でドアに向かいながら、器用にプリントを確認する。一刻も早く帰ってくれ。今日の予定は二度寝にするからよ。
「わかってる。
……
あんた以外のは行かない」
「へ?」
「カキツバタが好きだって、言ったでしょ。じゃあね」
どう頑張っても二度寝出来ない事態になってしまった。
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