白崎ぼたん
2025-02-26 21:48:26
1644文字
Public ツイノベ
 

一番近くで、俺に笑顔を見せて

甘え切っていた攻め×一生傷になりたい受け
さらに続きました。 ↓前の話です!
もっと大切にしたらよかった https://privatter.me/page/67bc73ef324ea

最悪の気持ちで、攻めは週明けを迎えた。
幼馴染はずっとむくれているけど、構う気にもならない。
受けと受けの友達が、一緒に教室に入ってきた。二人からは楽しげな空気がいっぱいに満ちていて、昨日からずっとそうだったんだってはっきりわかった。

「昨日楽しかったなー」
「うん、本当にありがとな!」

嬉しそうに話す二人の会話に耳をそばだて、呆然とする。どうやら、寮に帰ってきてからも部屋で遊んでいたらしかった。

「で、映画どうだった?」
「めっちゃ笑えた。お前絶対好きだと思う」

二人に、ほかの友達が話を聞いてるのを、聞きたくないのに、じっと聞き耳を立て続けた。
受け、そいつと二人で映画見たの?そいつと夜通し一緒にいたの?
ぞっとした。まさか、ふたりはまだそんなんじゃないはず。否定するけど、体の芯が冷たい。
担任が入ってきて、席に着いた受けをそっと見やる。鞄から取り出したペンケースが違った。きっとあいつからのプレゼントだ。嬉しそうにそれを見ている受けを見ると、飛んで行って、投げ捨ててやりたい衝動に駆られる。
いやだ、受け。受けは俺のなのに。
心の中で叫んだ。けど、その言葉が、あんまり空虚に響いて、驚いた。いつの間に、俺と受けは、こんなに遠くになっちゃったんだろう。泣きたい気持ちになった。
担任が話すのも遠く、ずっと拳を握りしめていた。

受けがどんどん遠くなる。
痛いくらい焦がれてるのに、じっと見ているしかできない。なのに、諦められない。友達の隣で笑ってる受けを見ると、俺のだったのにって思う。どこ見てるんだよって腹も立つし、おかしいくらいに嫉妬する。

なんとか一緒にいられないかなって、攻めは受けと登下校や移動の時間を合わせたり、同じ話題に入れるよう、ずっとアンテナ立てたりしてた。
けれど、受けの隣には、いつも当たり前って顔してあいつがいた。
邪魔だ、どっか行けよ。いつも受けにはりつきやがって。
心の中でののしった。けれど、それで何かが変わるわけじゃなかった。
俺のことは、もう受けはどうでもいいのかな。忘れちゃったのかな。
当然か。だって別れちゃったんだから。そう思って、泣けた。嘘だ。全然、当然だなんて思えてない。

「攻め、はやく行こうよ」

幼馴染が、袖を引っ張る。攻めは、それを外した。幼馴染はあれから無視してきたが、また声をかけてくる。そういう仲だ、自分たちは。ケンカしても、だらだら、いるのが当たり前の兄弟みたいで。でも、今、一緒にいる気分じゃなかった。なんとなく、受けに、見られたくなかった。

実験室に移動しながら、前を行く受けをじっと見つめる。幼馴染が「本当に仲良しだよね」と冷笑した。

「最初は攻めへのあてつけかなって思ってたけど、ガチなのかなあ。すごいなあ、あんなすぐ次いけないよ」
――うるさい!」

気づいたら怒鳴ってた。幼馴染は、ぽかんとして、それから眉をつりあげた。けれど、攻めの顔を見て固まる。

「うざすぎ。ムカつくことしか言えないならどっか行けよ」
「せ、攻め……?」

そう言って、攻めは幼馴染をおいて歩き出した。お腹の中がぐちゃぐちゃにされるみたいに気持ち悪かった。足早に歩いたので、受けたちを通り越す。通りすがる一瞬、受けが、少し驚いた風に見たのがわかった。
咄嗟に攻めは立ち止まって、受けを見る。視界がかすかに揺れていた。受けと視線が交わる。心があふれた。

「受け、早く行こうぜ」

けど、あいつが促して、受けを連れて行ってしまう。受けは、戸惑った様子で、けれども「おう」と、ついていった。――待って、受け!
生徒たちが攻めの脇を通り過ぎていく。攻めは、そこから動けなかった。伸ばしかけた手を、握りしめた。

「行かないで……

好きだよ、俺が絶対一番、受けのことが好き。お願いだから、俺の傍にいて。お願いだから。
もういちど、一番近くで、俺に笑顔を見せて。
ただ、それだけ。なのに、それが一番、遠かった。