来羅
2025-02-26 18:55:59
1270文字
Public 怪物
 

バレンタイン その1(jwds)

甘々なバレンタイン

「正気ですか」
 呆れたと言わんばかりの声にドンシクは笑った。
 想像通りの反応だったが、こうまで予想通りだと愉快になってくる。
「もちろん、正気ですよ」
「僕に、なんですよね」
「そうですよ」
 渋い顔でテーブルを見るジュウォンは、恐る恐るといった感じでテーブルに手を伸ばす。
 一抱えもあるかという大きさのバスケット、の中にはチョコレートとハートのバルーンに囲まれた兎のぬいぐるみがどんと座っていた。これまた大きなリボンでらっぷんぐされていて外からは見えないものの、ちゃんと実用的であろうネクタイとタイピンも入っているプレゼントはドンシクが自ら選んで組み合わせたとっておきだ。
「世の中はバレンタインですからね」
 ソファに座って起用に頬杖をつきながらドンシクは告げた。
 派手であればあるほど想いの大きさを示せると、この時期になると街はバレンタインバスケット一色になる。ドンシクとて、田舎町にいてもなお、例年ジファやジェイからチョコレートの入った小さなバスケットを貰ったものだ。
 思いついたのは突然。とてつもない大きさと豪華さのバスケットを貰っていそうな(でも貰わないだろうことも想像に難くない)男にあげたらどんな顔をするだろうと興味が湧いた。
 女性から男性にプレゼントする日だけれども、恋人の日ならば男性が男性にあげたっていいだろう。
 唐突な思いつきに楽しくなって、気が変わらないうちにソウルまで買いに出たのは昨日のことだ。さすがのドンシクも店の前では躊躇したものの、店先の兎と目が合って勇気を貰ってしまった。
「好きでしょ、兎のぬいぐるみ」
「それは子供の頃の話です!」
 えええ、かわいいのに。
 バスケットから救出した兎を抱いて、腕を振らせる。
 はぁ、と大きなため息は返ってきた。失礼な。
「ジュウォナが冷たいよ、ジュウォン」
「はい?」
「ジュウォンって名前にしましょ、この子」
「嫌ですよ」
「大事にしてもらうんだよ、ジュウォン」
 ぬいぐるみの頬をぎゅっと潰してキスを贈れば、ドンシクのジュウォンはさらに顔を顰めてしまった。
 その顔は。
「そんな兎より僕にキスしてください?」
「言ってません!」
 からからと笑うドンシクにジュウォンが叫ぶが、その目尻を赤くしていては肯定しているようなものだ。
 かわいい、かわいい、ぬいぐるみよりもかわいい年下の恋人は赤くなりながら怒るという器用なことをやって、ドンシクからぬにぐるみを取り上げた。しかしそのまま放るのかと思えば、ベッドのヘッドボードに「お前はここ」と座らせるものだからたまらない。
……何笑ってるんですか、ドンシクさん」
「いや、俺のジュウォナはかわいいなぁって」
「褒められてる気がしません」
「褒めてますって」
 おいで、と手を差し出せば素直に近寄ってくる恋人に愛しさは募る。
「ホワイトデー期待しててくださいね」
 ドンシクをソファに沈めながら、どこか座った目で恨みがましく言うジュウォンに、ドンシクはおどけて眉を上げた。
「お手柔らかに!」