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来羅
2025-02-26 18:54:38
1401文字
Public
怪物
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お付き合い記念日(jwds)
付き合って1年目の話。
奮発したなぁ、と最初に思った。
翌日は非番だというジュウォンが夕飯を一緒にと誘ってきたのは、もうだいぶ前のことだ。そんな先の約束などいったいどうしたと思ってカレンダーに印を入れて気付いたのもだいぶ前。
連れていかれたのはちょっと小洒落た料亭だった。日頃のドンシクにとっては敷居が高すぎて近寄ることすらできない場所だ。物慣れたジュウォンは出迎えの愛想笑いすら返して個室へとドンシクををエスコートする。さすが坊ちゃんは格が違った。
「あの、嫌でした
……
?」
自信満々な顔して女将を案内させていたくせに、ふたりきりになった途端にジュウォンは不安そうな顔をする。その叱られる前の子供みたいな顔に、かわいいなぁと微笑ましくなったのが次に思ったこと。
「こんなところ、来たことないから緊張します」
「僕もです」
あなたといるから、なんて真顔で返されて、そうじゃないと言い返せず口籠る。この年下の恋人は時に直球すぎてドンシクには未だに眩しい。慣れない。くすぐったい思いで卓につけば、予め頼んであったのだろう料理がこれまた豪華なものだった。
それなのにジュウォンは何も言わない。言い出せないだけかもしれなかったが、それならと余計にドンシクも言い出せない。奇妙に押し黙るジュウォン相手に、最近はどうですかなんて当たり障りのない話題を振った。とはいえそれはいつものことだ。
少しばかり緊張しながら滅多なことでは口にできない料理の数々と腹に収めていく。この魚はなんで、この肉はなんで、と説明する様は堂に入っていて、住んでた世界が違うのだと実感させられた。
本当ならば。
本当なら、こんな場所で、こんな草臥れた中年に人生惑わせられてはいけない人なのだ。それなのに。
「ドンシクさん」
嬉しそうに、照れくさそうに名前を呼ぶ男の手を離せないのはどうしたことか。
何度も正気に戻れ、ドンシク、と言い聞かせた。何度も目を覚ませと頬を叩いた。それでも何度繰り返しても心は勝手に期待するし、抱きしめた腕は解けない。
「ジュウォナ」
この先もこんな調子かもしれない。少しの後ろめたさと、どうしようもない愛しさを抱いて、ドンシクはその最愛を見つめる。
「これ、あなたにあげます」
事前に用意していた贈り物を手渡せば、ただでさえ大きな目がさらに大きく見開かれた。
「どうして」
「どうして? だって、一周年記念でしょ、俺たちの」
好きです、とはじめて言われて一周年と少し。幸せは、彼と共にこそあるのだと思い知らされて一周年。
「
……
覚えてないと思ってました」
「酷いなぁ、ジュウォナ。俺、そんなに薄情に見えます?」
「見えます」
断言されて、あららと笑う。違いない。こんなに早くから予定を埋められなければ思い出さなかったのも確かだ。けれどもあの日の全てが未だに鮮やかに思い出されるのも確かなこと。
「あなたが一年前にくれたこの日を、忘れやしませんよ」
ジュウォナ。
愛しさを込めて呼べば、ジュウォンの目元が赤く染まる。
やっぱりかわいいなぁと思いながら手を伸ばすと、強く握りしめられた。そしてジュウォンはこの世のあらゆる幸せを嚙みしめたような顔で微笑む。
「僕を、選んでくれてありがとうございます」
うん、と言ったか。俺も、と言ったか。噛みついてきた唇に言葉は飲まれて、あとはもう何もわからなかった。
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