トウメイ希望
2025-02-24 22:05:12
3395文字
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タウタイ・モアナは暴君なのか?

ノリと勢いで書いたネタオールキャラもの。マウモアのいちゃつき度合いは薄め。
モアナ2本編後、モアナちゃんに憧れる名もなきモブ視点。海のモアナは結構暴君だよーなモニロトケレと、ひたすら後方腕組彼氏ヅラなマウイです。なんでも笑って許せる方のみどうぞ。


「最高の世界」のモアナちゃがなかなか豪快に強引で好きです。まぁ個性豊かな仲間達をまとめなきゃいけなくてなりふり構ってられなかったんでしょうが。


 宴の中心にはモアナがいた。リズミカルな太鼓に合わせ、モアナが足を踏み鳴らす。踊りに合わせてパレオが花のようにパッと開く。
「いいぞー、モアナー!」
 歓声や口笛が上がって、島の熱気が膨れ上がる。
 我らがモアナはモトゥヌイみんなの憧れで、それはオレにとってもおなじだ。群衆と共に彼女に見惚れながら、ほぅっとため息をもらした。

「いいよなぁ、モアナ……かわいくて、優しくて、前向きで……最高のリーダーだよなぁ……
「先生が良いからな」
 少し離れたところにいた半神マウイ様が、後方腕組彼氏ヅラでうなずいた。「俺が育てた」と言わんばかりだ。
 いつの間にいたんだろうこの神様。ちょっと疑問に思ったものの、気を取り直してモアナに意識を戻す。
「きっと、どんな困難にも、モアナは恐れず凛として鼓舞してくれるんだ。そして成果を上げたら「すごいわ!」って手放しに褒めてくれるんだろうなぁ……ああ、次はオレもモアナの船に乗りたいな……
 甘美な妄想にうっとりと目を閉じた。

「やめておけ、モアナはかなりの暴君だぞ!」
 顔にかかったしぶきに目を開ける。ペッペとツバを飛ばして反論してきたのは、村一番の偏屈じーさん、ケレだ。汚ねぇ。
「年寄りを海に連れ出す、ガンギマリの目で『海は最高!』って洗脳する、トラブルがあると『ご先祖様が導いてくれるから大丈夫』で押し通す……おまけにワシがカナヅチだと知ると海に突き落とそうとしおった!」
 なんて悪意のある解釈だ。
「はは、まさか」
 顔を拭きながら受け流す。
「ケレじーさんはひねくれすぎなんだよ。どうせ大げさに言ってるんだろ。
 安定した食料調達のために村一番のベテラン農夫を選んだんだろうし、洗脳も何もモアナは心から海が好きなだけだ。ご先祖様の導きなんて、勇気が出る演説じゃないか」
 ……ところで海に突き落とすってなんだろ。
 オレを援護するようにモニが続く。
「そうそう。それに落とす前に、ちゃんとココナッツの浮き袋をつけてあげてただろ」
「ほら、やっぱりモアナは優しい。ココナッツの浮き袋を……え、ココナッツだけで?」
 外海を泳ぐにはちょっと心細すぎやしないか?
 マウイ様に問いかけるように視線を送ると、
「まだまだ甘いな。問答無用で放り込んだ方が早い」
 満足げにうなずいていた。「俺の弟子って優しすぎるんだよなぁ」と言わんばかりだ。

 モニが満面の笑みでぬっと割り込んでくる。
「まぁ実際、モアナはすごいよ。何しろ僕が一生懸命描いた絵を次々に海に放り捨てたんだ!」
「え、海に捨てたの? 語り部の記録を?」
「ウン! すごいよね、きっとあの時の僕にはまだ推しを描くだけの画力が備わっていないことを見抜いていたんだ! あんな稚拙な作品を憧れのマウイに見せてしまっていたらと思うと、恥ずかしくて……
 捨ててもらって良かったー! と尻振って喜ぶモニを尻目に、マウイ様を問いかけるように見る。
 マウイ様はあごをさすりながら片眉を上げていた。「なかなかやるじゃないか」と言わんばかりだ。
「さすが巻き毛ちゃんだ。俺が千年かけた石像をぶち壊すだけある」
「え? 半神マウイ様の作品を? ……イデッ」

 唐突に頭に何かが当たる。拾い上げると、船の模型だ。
「モアナはただ、モニにオールを持っててほしかったんじゃないかなー。あの子、目的のためなら手段を選ばないし」
 ロトが、次々と試作品を放り投げながらこちらを見もせずに言う。
「あたしも船の改造に集中してたら、帆から宙づりにして振り回されたしねー」
「宙づり……振り回す……
 いっそここまでくるとマウイ様がどう弁護するのか興味ある。とマウイ様を見ると、まるで「まったく困ったお姫様だ」とでも言わんばかりの後方腕組彼氏ヅラで
「ほんと……悪い子だよな」
 そんな爽やかボイス(CV:尾上松也)で言われても。

「あの!」
 ついにこらえきれず、マウイ様に疑問をぶつける。
「さっきから聞いてると、モアナがすっごい暴君に聞こえてくるけど! きっとどこかに誤解があるはずなんだ! ただの暴君だったら、マウイ様の親友になんかなれるはずがない!」
 というかどうか憧れを壊さないで欲しい。
「お願いです、マウイ様! モアナに航海術を教えるようになったきっかけを話してください!」
 マウイ様に懇願すると、やたらとぶっとい肩をすくめた。
「動けなかったんだ。あいつ、俺のケツに毒を刺したから」
 
 その瞬間、すさまじく速い足音が近づいてきたかと思うと、
「マウイー! 来てたのね!」
 ビタン! と激しく腹打ちの音を立ててマウイ様の背中に飛びついたのは、我らがタウタイ・モアナだった。踊りがひと段落ついたらしい。
「よお、巻き毛ちゃん」
 衝突されたにもかかわらずマウイ様は一歩も揺るがない。ただ、にやりと片眉を上げてモアナを振り返る。モアナは満面の笑みでマウイ様と視線を合わせると、初めてオレ達に気づいたようだった。

「ああ、それにみんなも!
 ちょうど良かったわ。早速、次の航海の相談をしたかったの! マウイ、あなたは来てくれる?」
「もちろんだ。お前はまだ産まれたての半神だからな。大先輩のマウイが必要だろ?」
 なんだか見てはいけないものを見てしまった気がするが、当のモアナもみんなも、平然と会話を続ける。あの距離感に動揺しているのはオレだけなのか。みんな慣れすぎだろ。
「ワシは行かんぞ。畑を放っておきすぎた。見回らなきゃならん」
「あたしも今回はパス。せっかく新しいオノをもらったし、新しい船をたくさん造りたいよ」
 モアナはしゅんと肩を落とした。
「そっか……モニは? あなたは来るでしょう?」
 マウイ様オタクのモニなら二つ返事で答えそうだけど、残念そうに首を振った。
「すっごく、すっごく行きたいんだけど……当分の間は、外の人たちと伝承を教えあわなきゃいけないんだ……島によって違うみたいだから……だから、帰ってきたら色々聞かせてね」
「そう……仕方ないわね」
 あからさまに落ち込むモアナに、オレは(いつまでマウイ様の首にかじりついてるんだろう)と思っていた。身長差のせいでモアナの足がぷらぷら揺れているけど、二人とも疲れないんだろうか。

「あ! でも、彼がモアナの船に乗りたいって!
 それって当然だよね! 風と海の半神マウイと千年に一度のタウタイとの旅! 伝説が生まれるところを間近で見れるんだ!」
 と、モニがオレを指さしたので、思わず素っ頓狂な声を上げた。
「えっ、オレが?」
……良かったな、巻き毛ちゃん。採用面接の時間だ」
 確かに御社に憧れてはおりましたが、勤務条件を拝聴したうえでなお応募するかと言われるとちょっと。

「本当!? 助かるわ! 外の人たちが来て、海の道がつながって……これからどんどん忙しくなるところだったの」
 モアナはキラキラとした目でオレを見つめてくる。やめてやめて、断りにくい雰囲気にしないで。
「ええっと……でもオレ未経験だし、サンゴ礁の越えかたも知らないし、泳ぎにも自信ないし」
「大丈夫、誰でも最初は初心者よ。私が教えるわ!」
「良かったな、マンツーマンだ。できるか? 実際の雰囲気は三人の先輩に教わったろ」
 と、マウイ様は偉そうにオレに視線を向ける。
 必要とあらば問答無用で海に放り込むらしい半神マウイ様と、その英雄の尻に毒を盛ったタウタイ・モアナの視線が、オレに注がれていた。

……やるよ。ワシからの餞別だ。手向けかもしれないがな」
 ケレじーさんがスッとココナッツを差し出した。





〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜





……残念だわ。急に忙しくなるなんて……
 ケツを抑えつつ急速に遠ざかっていく背中を、モアナは肩を落として見送った。
「ま、仕方ないな。しばらくは俺たちだけで海を渡るしかないだろ」
 こつん、と肘で小突いてオールを差し出してやる。
「そっか……また二人きりだね。よろしくね、マウイ!」
 モアナは妙にくすぐったそうにオールを受け取ると、満面の笑顔で俺を見上げてきた。
「ああ。……よろしくな、モアナ」
 ニヤリと笑顔を返してやった。内心で胸を撫で下ろしながら。