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望月 鏡翠
2025-02-23 21:44:22
902文字
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日課
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#1642 「葱」「話す」「鈴」
#毎日最低800文字のSSを書く/三題噺
切れ味のいい鋏だ。
指の骨ですら、力を込めて握ればパチンと切り落とせてしまいそうだ。よくよく手入れされている。それのために一定の時間をかけているというのが、信じられない。どうやったら一日の内に、そんな時間を用意できるのだろう。
この人の周りでは、時間がゆっくりと流れているのかもしれない。
お皿の上に草やら花やら枝やらが、立てられていく。それが何かしらの教養であるということを、その人から教えてもらったが、賢いとなぜ草をいじり出すのかまでは理解できなかった。
それがわからないから、俺は頭が悪いということなんだろう。
今は葱にしか見えない、しかし匂いが葱ではない植物の長さを整えているところだった。毒があるから、口に入れない方がいい。どうしてもやりたいのなら止めないけれど。
そう言って、切り落とした葉を投げてくれた。
野良猫に餌をやるように。
時間がゆっくりと流れる世界にいる人だから、話す言葉もゆったりとしている。
毒があると言われたので、それを口には入れなかった。毒があると言われていなければ、食べられるものをくれたのだと思って、喜んで口に入れただろう。
俺はこの人の持ち物であるから、その行動や言葉を疑うことはしないのだ。だけど、考えることはしていいと言われている。
考えるというのがどういうことかわからないというと、毒があると聞いたから今投げたそれを食べなかったことだと教えてくれた。それでいいらしい。
鈴が鳴って、呼ばれた。
では、それを片付けてください。
そう言われて、枝の切れ端やちぎられた葉っぱを集める。
途中で、呼び止められる。
「どうしてそれを捨てて良いもので、こちらは捨ててはいけないものだと思ったのですか?」
「間違えましたか」
怒られるかもしれないと思って、正座をする。
「いいえ、合っています。わからないというけれど、あなたは価値のあるものとないものを見分けた。知らなくても私の振る舞いから学んで、考えたのです。本当はよくわかっていますよ。口にするのが苦手なだけです」
難しいことはよくわからないけれど褒められたことは、わかった。
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