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nuka_boshi
2022-08-17 20:56:28
5187文字
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すとぼ関連
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【StoryBox派生自己解釈二次】メモリアと何かのクロスオーバーしようとして力尽きた【メモリア派生未完】
タイトル通り。肝心の一番描きたかったシーンの前日譚として書いてた小説が書きかけのまま眠ってたの発見したので勢いに任せてキリのいいところまで書いてサルベージしてみました。序章というか、起承転結の承にギリギリ届くかなーみたいなとこで終わる。誤字脱字チェック?推敲???そんなものは知らん!!!
そのうち気が向いたら続きも描きたいけどしばらくは他のが描きたい。
世界を作りたもうた二柱の神は、今は袂を分かち世界を去った
――
なんて言ったら、胡散臭い話の類だと思われるだろうか。神話の時代の史料というのは殆どが失われているから、調べる人間も少ないし。私はたまたま、自分の名前の
起源
ルーツ
を知る為に調べたから知っている、ただそれだけだもの。
そう。私の名前
――
リンという名前は、かつて世界を作ったとされる神様の名前にあやかったものだとされている。神様の名前を使うだなんて恐れ多い、と思われそうな話だが、そうした人というのは実は珍しくない。というのも、神話の時代の史料は軒並み失われてしまっている為、神様の本当の名前を知る人は誰もいないからだ。掠れた文字を繋ぎ合わせて辛うじて読み取れるのが、『リン』と『レン』。神様から生まれた名前だからきっと神様が守ってくださる筈だと、そうした祈りを込めて『リン』と『レン』と名前を付ける。そんなわけでリンという名前は、神様の名前でありながらも何処にでもありふれた平凡な名前でもあるという、なんとも風変わりな立場にあるのだ。
もちろん、ありふれた名前という事は、同じ町でも同じ名前の子供が何人もいるということになる。だから、そんな時は他の人と間違わないように何かしらの特徴を名前の代わりに呼ぶ。例えば私の大切な幼馴染の場合は、『絵描きのレン』。私は会ったことは無いけど、町にある大きなお屋敷に住むお嬢様の場合は『館のリン』という具合だ。
じゃあ私はなんと呼ばれているかと言うと、『なぎさのリン』。音の響きだけなら綺麗だけれど、この呼び名を聞いた人たちは大抵が複雑な顔をする。何故ならなぎさというのは、『渚の孤児院』の子供を指す呼び名だからだ。
「僕はなぎさのリンって名前、好きだな。リンにとてもよく似合ってるもの」
そう笑ってくれた絵描きの彼の言葉が忘れられなくて、いまだに私は『なぎさ』の名前を棄てられずにいる。既に孤児院を出て一人暮らし、他の名前を名乗っても良い頃合いなのに、敢えて『なぎさ』で居続ける変わり者のレッテルを貼られながら。
孤児院には、大勢の子供が居る。だから、名前が被るとそれだけで名を呼ぶのが大変だからと、ありふれた名前はなるべく付けない決まりがあるらしい。そんな中で『リン』という名前が付いていたのは、他でもない実の母が付けてくれた名前だからだ。
母がどういう人だったのか詳しくは知らない。だけど、その笑顔と温かな手、リンと呼んでくれた声がすごく優しかったことだけは覚えている。残念ながらどんな声だったかは、昔のことすぎて全然思い出せないのだけれど。
ただ確かなことは、母は亡くなるその時まで私を愛してくれたこと。そんな母の遺した唯一の物が、名前だった。母が遺した名前に、幼馴染が意味を加えた。だから私にとって、自分の名前というのはなによりも大切な宝物だった。名前を呼ばれる度に、私を確かに愛してくれる人達との繋がりを感じさせてくれるから。
「
……
ふぅ。そろそろ良いかしら」
森の入り口で、私は汗を拭いながら立ち上がった。手には沢山の木の実。生活が苦しい時などに、時折こうして木の実を取りに森に入ることがある。ついつい時間を忘れて夢中になってしまうことがあるから、程々にしないとそのうち『木の実のリン』なんてあだ名をつけられそうだ。自重しないとね、と私は心の中で小さく舌を出す。
ふと、森の奥から微かに雷の音が鳴り響いたことに気付く。
――
森の奥には恐ろしい魔女がいる。絶対に立ち入ってはならない。
脳裏を掠めたその言葉に、鼓動が早くなるのを感じる。
――
大丈夫。ここは森の入り口だもの。魔女がいるのは森のもっとずっと奥深く。だから平気。
自分にそう言い聞かせ、足早に森から立ち去ろうとする。
こうやって気もそぞろになっている時に急ぐということは、それだけ無用なトラブルを呼び込みやすい。だから私は、足元に生えていた木の根に思い切り蹴躓いた。
「きゃっ!?」
身体はなんとか踏み留まるも、集めた木の実の類はそうはいかなかった。慣性の法則に従ってそのまま地面に散らばる。
「あっ、まっ
――
待って!」
一際大きな果実が転がるのを見て、私は慌てて駆け出した。
林檎。
――
絵描きの彼に、作ると約束したアップルパイの材料。森に生える木から成る林檎は、街中のそれより一際甘いことを、私はとてもよく知っている。
美味しいパイを焼く為にも、あの林檎だけは死守しなくては。ただそれだけを考え、林檎を追う。伸ばした手を掠めて転げる林檎をどうにか掴んで
――
。
「きっ
……
きゃああぁぁぁああ!?」
一体誰が気付けると言うの、踏み出した先が崖になっていただなんて。
こうした場面で、人は走馬灯を見るという。時間の流れをゆっくりと感じたり、過去の思い出を見たりするらしい。だけど私には、そんな余裕などあるはずもなく。
気付いた時には、強かに身体を打ちつけたまま、崖下に横たわっていた。
生きているだけ奇跡かもしれない。だけど、それが一体何になるというの?
私はじわりと滲んだ涙を拭い、唇を噛み締めた。
――
痛みで足が動かない。動けない。
私はここに来ていることは誰にも告げていない。いくら森の入り口には魔女が来ないとは言え、あまり外聞が良くないと考え、幼馴染にすら隠している。もし私が帰って来ないことを誰かが不審に思っても、見つけてもらえる可能性は限りなく低いのだ。
「
――
レン
……
ッ!」
もう会えないかもしれない、そう思うとどんどん不安になって、涙が溢れてくる。あの便りない、それでいて温かな笑顔に、もう一度会いたい。
――
会いたい。
降り出した雨に打たれながら、私はただ神様に祈った。もし叶うなら、もう一度レンに会わせてと。レンの名前を呼びながら。
そして。
「あらあら、大丈夫?」
優しい声が聞こえて、私はハッと顔を上げた。黒い装束、特徴的な黒い帽子。目の前に居るのが紛れもない魔女である事に気付き、私は息を呑む。思わず悲鳴をあげようとして、
「
――
怖がらないで?
……
と言っても難しいかしら。困ったわねぇ」
優しく、それでいて困ったように笑う紫紺の瞳に、私はただ言葉を失う。
誰もが恐れる、怖い怖い魔女。そんな、私がこれまで想像してきた魔女と、目の前の魔女はあまりにもかけ離れていた。むしろ
――
、
「それじゃあ、傷の手当てをしましょうか」
優しく微笑む魔女は、記憶の彼方に消えつつあった母の姿を思い起こさせるようだった。
◇◆◇
「
……
はい、これで大丈夫。あとは、あまり無理しないようにね? 可愛い女の子だもの、傷が残ってしまったら大変だわ」
言われるがままに魔女の住む家に来てしまった私は、ただ戸惑ったまま魔女の治療を受けた。魔女は、癒す事には向いていないのだという。それでも、包帯を巻く魔女の手つきはただ優しくて。こちらを労っているのがよくわかった。
「ありがとう、ございます
……
」
「いえいえ、どういたしまして。
……
ところで、貴女の名前を聞いてもいいかしら?」
ひょっとして、私を呪うのに使うのだろうか? ギョッとして警戒した私に、魔女は慌てて「違うの、そうじゃないのよ」と弁明してみせる。
「名前を知らないと、貴女のことをきちんと呼べないでしょう? それって、すこし寂しいじゃない。せっかく貴女を大事に思う誰かが、貴女の為に付けた名前だもの。ちゃんと名前で呼びたいわ」
その明るい笑顔に、私は思ってしまう。
……
魔女って、悪いものではないのかもしれない。
もし魔女が悪いものだというのが誤りで、本当はとても優しくて、人と仲良くしたいと考えているのだとしたら、それはとてもとても悲しいことだと思う。
目の前の魔女は、私を助けてくれた。だから、私は魔女を信じてみよう。
そう心に決めて、私は自分の名前を口にする。
「疑ってごめんなさい。それから、助けてくれてありがとう。私はリン。なぎさの、リンです」
――
言ってしまった。もう後には引けないと感じながら、少しだけ緊張しつつ魔女を見る。魔女は途端に花開くような笑顔を見せて、私の手を取った。
「まぁ、凄い偶然! 私の娘もリンって言うのよ!」
その言葉に私はびっくりしてしまう。だって、魔女といえば人間とは違う、どこまでも怖い生き物だと聞いていたから。そんなありふれた名前じゃなくて、もっと特別な名前を付けているに違いないと思ったから。
「む、娘さん
……
いるんですか
……
?」
「えぇ、それと息子が一人、ね」
子供の話をするその笑顔が本当に幸せそうで、私は思わず見惚れてしまう。
「実のところ、貴女を助けるかどうかギリギリまで悩んだの。だって森の入り口は、人間の居場所だもの。魔女が踏み入って、怯えさせてはいけないから」
「
……
じゃあ、どうして
……
?」
「貴女、ずっとレンって名前を呼び続けていたでしょう?」
魔女の言葉に私は漸く思い至る。魔女の息子がレンだと言うなら、私は魔女の息子の名をずっと呼び続けていたように見えたのだと。
「あ、あれは
――
!」
「その人が、私の知るレンでは無い事はわかっていたの」
じゃあ、どうして?
私の無言の問いに、魔女は困ったように微笑んだ。
「
……
レンさんのことを呼ぶ貴女の声が、私の娘に似ているように思ったの。そうしたら、居ても立っても居られなくて」
紫紺の魔女は、嬉しそうに微笑んだ。
「だって、私は魔女である前に、リンのお母さんだもの」
その笑顔が、亡き母ととても似ていて、だから私は強く思った。
この人を、信じてよかったと。
魔女はきっと、悪いものではないのだと。
「話が逸れてしまったわね。私の名前は
――
」
◇◆◇
「それで、そのまま帰りも魔女に送ってきてもらったの?」
「うん。森の入り口までだけどね」
信じられない、と呆気に取られるレンに、私は苦笑する。私だって、逆の立場だったら絶対同じ反応する。ううん、レンは人をすぐに信じすぎだって、そう怒っているに違いない。
「
……
レンは、怒らないの?」
私の言葉に、レンは「なんで?」と首を傾げる。
「そりゃ、びっくりしなかったと言えば嘘になるけど
……
リンはその人の事、信頼できるって思ったんでしょ? なら、リンを信じるよ」
真っ直ぐな笑顔を向けられて、私は思わず目を逸らす。
――
頬が熱い。これだからレンはどうしようもないんだ。当たり前のように言われたその言葉がどれだけ嬉しいか、知りもしないんだから。
「今度、あの人にもアップルパイを焼いて持っていく約束をしたの。あと、息子さんの方にはもう会ったのよ。私たちと同じ年頃の、静かな人。魔女さんが言うには色々難しい問題を抱えているみたいなんだけど、だからかな? すごく大人っぽいひとだった。妹さんの方にはまだ会ってないけど
……
今度紹介してくれるって! だから、レンさえ良ければ今度二人で会いに行かない?」
「会いにって
……
魔女に?」
「そう!」
私の言葉に、レンは少しだけ戸惑った。
「そりゃリンを助けてくれた人だから会いたいけど
……
でも、それ相手には言ったの?」
「あ。
……
い、言ってない
……
」
「行きたいのは山々だけど、知らない人がいきなり来たら魔女の方もびっくりするんじゃないかな?」
びっくりする、とはまた上手くぼかしたものだと思う。実際には驚く程度じゃ済まないだろう。魔女を憎む人は数多く居るのだから。その事に思い至って落ち込む私に、レンは慌てて付け加える。
「こ、今度! 今度リンが遊びに行った時にでもまた改めてその話したらいいんじゃないかな! 僕も、その魔女に会ってみたいし!」
あわあわと焦るレンがなんだかおかしくって、私は思わず笑ってしまう。つられて、レンも。
「それじゃ、約束! 今度あの魔女に会いにいきましょう!」
「うん!
……
ところでリン、その魔女の名前って聞いていい? リンはもう自己紹介したんでしょ?」
「だーめ、教えないっ」
私はレンの問いかけに悪戯っぽく答える。
本当は教えてあげたい。だけど、きっと名前を教えてくれたのは信頼の証だと思うから。
「私と、私の魔女さんとの秘密!
……
悔しかったら、実際に会いに行ってちゃんと本人から聞く事!」
一陣の風が、海から来る潮の香りを運んで通り過ぎた。
◇◆◇
とりあえずここまで。このあと新緑の瞳が綺麗な謎のおねーさんとメモリアリンちゃんが話をする漫画を挟んで、メモリアレンくんが魔女に会いに行く小説を書きたいなーって構想練ってました。
今思うと長げぇ。でもおねーさんとメモリア組の会話は私が見たい。
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