nuka_boshi
2015-12-13 22:09:14
4717文字
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すちぃむ☆KINOKOシリーズ第一弾 マカロニ&初恋組ネタ

旧題マカロニで初恋組ですちぱんさせたい。なんかすちぱんっぽい系初恋組のネタ。gurinさんの呟き見て思わず書いた。えせすちぱん。
後でTL覗いたら全然違うネタだったのでああすみませんと思いつつ勿体ないので公開。ちなみに推敲してない。

べきり、という嫌な音を聴いた気がして、ロヴィーノ・ヴァルガスは立ち止まった。
音の方向は、そう、ちょうど今から向かおうとしていた先の道だ。我が身1つで来ていたのであれば、そのまま駆け抜けたい所ではあったが生憎とこちらは大切な荷物達を連れ歩いている最中だ。ここで無茶な行動を取っては、折角苦労して連れてきた荷物がダメになってしまうかもしれない。
眼を細めてよく見ると、煙る視界のその先、ぱらぱら、と砂埃のように細かな金属片が宙を踊っているのが見て取れた。……と、ロヴィーノの脳が認識した瞬間、瓦礫が滝のように降り注ぐ。
それはロヴィーノの足元にまでは届かなかったが、山を作り道を塞ぐには充分な量だった。
本日五度目の回り道が決定した瞬間である。虚しいとはわかっているが、仕方ないとは百も承知だが、それでもこう叫ばずにはいられない。
……チクショー、人の許可なく落ちてくんなこの瓦礫ども!!!」
ロヴィーノは涙目になりながら自立歩行型スーツケースを誘導するのだった。

……行き過ぎた文明は、やがて惑星を滅ぼすだろう。
多くの学者がそうと知りつつ、それでも人類は生活の利便性を棄てられなかった。
人々は、惑星を活かす事ではなく、死滅した星で生き残る事を追求した。
人間とは、どこまでも業の深い生き物である。
或いは、これは天罰だったのかもしれない、と言う者もいる。

……千年前の事だ。とある事故が起こり、この星は一度、死の星になった。
事故の内容をロヴィーノはよく知らない。そもそも生まれる前の事だし、全く興味もない。ただ、大人達が皆一様に眉を寄せて「忌まわしき事故だった」と呟くその姿と、「あの空をお前達にも見せてやりたかった」と時折寂しそうに笑う祖父の顔、そして、祖父の傷だらけの身体が妙に印象に残っていた。
……それ以上でも、それ以下でもない。

そう、過去の事や空の事、惑星の事になど興味がないのだ。
過去など知った所で何も変わらないし、『空』だってそんなもの知らないのだからわざわざ見たいとも思わない。ロヴィーノにとっての空は今自分の真上に存在するスモッグに覆われ濁りきった空間の事だ。惑星の寿命の話だってそうだ。著名な学者サマはあれやこれやとこぞって机と睨めっこしているらしいが、学のない自分に同じ事が出来るはずもない。そのうちどっかの誰かが良い方法を考えるだろ、と漠然と思っている。自分の星がどうのこうのとかいう答えの出ない難題なんかより、どうやって今日を食い繋ぐか、とか、どうやって明日も楽して暮らすかの方がよっぽど重要だ。

……そうだ、俺はズルいんだ。)
嫌な事にわざわざ付き合うつもりもそんな義理もない。面倒事に首を突っ込む勇気もない。何処ぞの自称ヒーローは青空を拝む為とか言って今も各地を飛び回っているが、好奇心に殺されるくらいなら退屈で鬱屈とした狭い箱庭で静かに飼い慣らされるほうがよっぽどマシだ。

……そう思っているにも関わらず、ロヴィーノが今立っているのは、この星の中で唯一安全が保証された場所『ドーム』からは遠く離れた『死の街』だ。

世界屈指の大工業都市、ペペロンチーノ。

この街から、全ての悲劇は始まったのだ。

もう誰も立ち寄る者は居ない忌まわしき場所。
誰も訪れない禁忌の街。
もう何者も生きる事は出来ないとされる死の街……

「くっそ!いつまでもこんな陰気な所に居たら心までカビ臭くなるってのに……あんの馬鹿!!」

悪態を吐きながらも、ロヴィーノは迷わず街の中心部へと向かう。
ロヴィーノの目的はただ1つ。

この街に住む最後の住人であり、大切な弟でもある、フェリシアーノに会う事である。




ながくなるので中略(・ω<)⌒☆




「ちぎゃあっっ!!?」
転んだ拍子に足元の紫色の水溜りを思わず蹴飛ばしてしまい、ロヴィーノは悲鳴をあげた。
否、水溜り、という表現は語弊があるかもしれない。溜まっているのがただの水であれば、触れたその瞬間、じゅっ、と嫌な音を立て煙を上げるような事はないのだから。

慌てて飛び退き足元を見やれば、靴底に仕込んだ金属板の厚みがちょうど半分ほどになっているではないか。
派手に音を立てる心臓のあたりに左手を当て、ロヴィーノは大きく息を吐いた。毎度思う事ではあるが、この街は命がいくつあっても全然足りない。

……あいつなんでこんなところに住めるんだよ……
小さく呟いたその瞬間、キィ、僅かな金属音を立てて扉が開いた。

……兄ちゃん?」

そこに立っていたのは、きょとん、と眼を見開くフェリシアーノだ。
ようやく目的の人物に会えた安堵で、ロヴィーノはまた大きく息を吐くのだった。


フェリシアーノに案内された部屋で、ロヴィーノはようやくゴーグルとマスクを外した。このダサいゴーグルとマスクなんてできれば付けずに歩き回りたいのだが、『ドーム』と違ってこの外の世界はマスクを外せば五分と保たない死の世界だ。生きる為には贅沢は言えない。
「ありがとう兄ちゃん。……ごめんねこんなところだから大したもてなしも出来なくてさ。」
「男からのもてなしなんて気色悪いモン要らねーよ。……お前が弟じゃなくて美人なベッラだったら喜んだけどな」
「それ、もてなされなくても喜ぶじゃん。」

思わず顔を見合わせてくすくすと笑う。
フェリシアーノに会うと、いつも此処が死滅した都市の再奥だという事を忘れてしまう。
……ところで、兄ちゃん。『ドーム』での生活はどう?」
「まあ、悪くねぇよ。最初の内は動作不良ばっか起こしてた空気清浄機や濾過装置も、最近はきちんと動くようになったしな。……さすがはギルベルトってところか。」
移動式要塞都市ブルートブルストこと通称『ドーム』。それは今やこの世界で唯一安全な場所だと言われている。
遠い海の果てにはまだもしかしたら人が住める楽園があるのかもしれないが、今やこの世界の海は入るもの全てを溶かし尽くす酸の海である。
海を渡りきる飛行技術も大昔に廃れてしまい、他の大陸へ渡る事は不可能だ。
だから世界が滅んだ後、誰もが他の大陸への移動を諦めた筈だった。
三百年前、ギルベルトという学者が移動要塞を創り上げるまでは。
……たしか、お師匠さんとの約束なんだっけ。みんなが幸せに暮らせる場所を探すってやつ。すごいなぁギルベルトは。」
お師匠さん。ギルベルト本人は親父と慕うその人物は、移動要塞の建築中に事故で亡くなったらしい。
それでへこたれずにたった一人で夢の要塞都市の基盤を完成させたのは素直に凄いと思う。「ブルートブルスト」というネーミングセンスは流石にどうかと思うが。名前の由来が都市が完成した時にブルスト食いたかっただけって馬鹿だろ。

「そうだな、ギルベルトは上手くやってるし、最近はアントーニョがドームで野菜や果物の栽培も始めたんだ。」
「えっ、野菜や果物って……ちゃんと育つの?」
フェリシアーノの驚きは最もだ。野菜も果物も、千年前の事故で一度滅んだとされるからだ。
そもそも陽の光が無ければ普通の植物は育たない。だが。

「ふふん、聞いて驚け!この間帰ってきたアルフレッドとマシューの持ってきた鉱石がな、すげーパワーを秘めてた事が分かったんだよ。」
「なになに、どういうこと?」
「フランシスが言うにはな、なんとあの石は電気を与えると太陽光に良く似た光を放つ性質があるんだとよ。」

現在ひかりいし、などとそのままな呼ばれ方をしているそれのおかげで、ドームではどうにか野菜や果物が育つほどになった。中でも、アントーニョが育てているトマトという野菜がとんでもなく美味しい、とロヴィーノは大袈裟に説明する。
「むむ……、そんなの変だよ!きのこブリュレやきのこジェラートだってすごく美味しいもん!」
「いーや、きのことトマトじゃ勝負にすらならないな!お前も一口食べたら絶対分かる!……だから。」

『ドーム』で一緒に暮らさないか?

ロヴィーノが告げた言葉に、フェリシアーノの両眼がわずかに揺れた。

……此処は人が住む環境じゃない。いくらこの部屋がスモッグや何やらから守られてても、限度があるだろ。現にお前はもう身体の半分以上を機械に変えてるじゃねーか。そんな苦労してまで此処に住む必要は……
「いかないよ。……俺は、何処へも行かない。」
それは、はっきりとした拒絶だった。
一瞬、言葉を失うがロヴィーノは諦めずに続ける。
……お前、その眼だって片方は義眼じゃねーか。左腕も、両足も。俺がオイルや食料をこうして運んでやらねーと生きる事すらままならない癖して何言ってやがる。」
「兄ちゃんには感謝してる。でもそれとこれとは話が別だよ。……あの子と、待ってるって約束したんだ。」
だからずっとここにいる、とフェリシアーノは迷いのない眼でロヴィーノを見つめた。
「待ってるって……もう四百年も経ったんだ。それに、あと二百年もすれば『ドーム』は新天地を求めて永遠に旅立つ。……お前はいつまで待つつもりだよ」
「いつまででも。何百年、何千年でも。この星が滅んだあとまででも。……いつかあの子が来るその日まで。」

しん、と静まり返った部屋で、二人はただただ睨み合っていた。
やがて、いつまでそうしていただろうか。ロヴィーノは小さく嘆息すると、短く「帰る」とだけ呟いた。

……俺の家は、『ドーム』だ。待ってるお節介な奴もいるし、『ドーム』が旅立つ日は俺も一緒に旅立つ。……馬鹿な弟の為に残る義理もないからな。」
厳しいロヴィーノの物言いに肩を落とすフェリシアーノに、ロヴィーノは「だけどな」と付け加えた。
……期限はまだ二百年もあるんだ。それまでにお前を絶対説得して連れ出すからな。覚悟しとけよコノヤロー!」

にいちゃ、と言いかけたフェリシアーノの言葉は、扉が閉まる音に遮られた。
照れくさかったのか、空になった自立歩行型スーツケースを連れて走り去っていったロヴィーノを、フェリシアーノは追いかけていけない。
……だって、約束があるから。

ふと、ロヴィーノの置いていった荷物の中に見慣れないものを発見し、フェリシアーノは眼を瞬かせた。
赤々と丸い。毒でもありそうな赤色だ。
これが、先ほどの話に出てきた「トマト」なのだろうか。

慣れ親しんだきのこと違い、初めて見る食材だ。もちろん気の利いた料理法など知るはずもない。
うん、と悩んだフェリシアーノは迷った末にそのまま噛り付いた。
そのままでも食べられる、と先ほどロヴィーノが言っていたのを思い出したのだ。
甘酸っぱい味が口いっぱいに広がって、フェリシアーノは視界の右側が滲むのを感じた。
今まで食べたどんな料理よりも美味しい。とても美味しい。
なにより、これを自分に食べさせたいと思って運んでくれた兄の想いが痛いほどに伝わってきた。

……もしかしたら、ロヴィーノについていくのが正解なのかもしれない。ギルベルトやフランシス、アントーニョはみんな自分が来るのを待っている。まだあったことのないアルフレッドやマシューも、話を聞く限りきっといい人だ。
だけど。

不毛だとわかってても、破られた約束だと知ってても、叶わない願いだと理解していても、それでも。

……それでも俺は、あの子のこと、諦めたく無いんだよ……。」

とても美味しいはずのトマトが、なぜかとても苦く感じて、フェリシアーノの右眼からまた涙が一粒零れ落ちた。







おわり。