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もりやま
2025-02-23 07:54:41
1227文字
Public
キィ蛍
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恋なんて聞いてない(仮題)1
現パロキィ蛍。
モブ蛍要素がちょっとあります。
第一印象は「兄に似てるな」である。一卵性の双子だから当たり前なのだろうが。
「世界一可愛い妹」と耳にタコができるほど聞かされたキィニチが蛍に抱いた感想はそんなものであった。
ふわんとした金髪も、蜂蜜のような瞳も兄の空そっくりだ。
(今日も来るのだろうか)
いつものように鮮魚コーナーで魚介類が詰められたパックを並べながらキィニチは友人の妹を想う。火曜日や水曜日、そして土曜日は蛍がこの鮮魚コーナーによく来るのだ。よく来るとは言ってもあくまでキィニチの体感である。蛍は来ず、代わりに兄の空が来る週もままあることだ。空と仲が良いとはいえ、二人の買い物当番までは把握していない。キィニチが黙々と品出しをしていれば、少女がキィニチの側へ寄る。
「お兄さん、今日のおすすめは?」
キィニチがちらりと首を動かせば蛍がひらひらを手を振る。彼女はここずっと、キィニチにこう尋ねてくる。
「秋刀魚が美味くて安い。まだ人が少ないから、捌いてやれる。それと、今年初めて筋子が入ってきた。少し値は張るが、イクラが好きなら手間はかかる分、醤油漬けを買うより安くておすすめだ」
「ありがとう。じゃあ秋刀魚を捌いてもらおうかな。うーん、イクラか
……
イクラはどうしようかな」
「去年は買ってたから好きかと思ったが」
「去年、キィニチの言うとおり冷凍して食べてたんだけど
……
まだ良いかなって感じ」
「なるほどな」
要するに、二人で食べるには多く、少し飽きたのだろう。キィニチは口元を緩め、秋刀魚の入った発泡スチロールへと向かう。ギラギラと鱗が輝き、まるまるとした秋刀魚は昨日キィニチも食べたものだ。脂が乗っており大層美味しかったので、今日も買うか悩み中である。袋に二本入れて、バックヤードへと向かう。
「内臓取るだけで良いか?」
「うん。キィニチはどう食べた?」
「丸焼きに大根おろしと醤油をかけて食べた」
「私も今日はそれかな」
蛍が笑顔でよろしくと手を振る。キィニチは頷き、バックヤードの扉を閉めた。
客が少ないうちに、さくさくと秋刀魚の下処理を済ませる。あとで片付けを行うことを周りの人間に伝え、袋に秋刀魚を戻して蛍へと手渡した。
「ありがとう!」
キィニチが高校生として過ごした三年間のうち、色濃く、色鮮やかに残っているのは意外にもスーパーの鮮魚コーナーでアルバイトをしているこの時間だった。
ごくたまに兄妹の家に遊びに行ったりすることもあったキィニチに、空の言葉がふとよぎる。
『世界一可愛い妹なんだ』
(ああ。そうだな)
冗談を言ったり、真剣に悩んだり、頼ってくれるところも【可愛い】と思うようになってしまった。
彼女が頼る人の中に、自分がいることは嬉しいことだと思うようになったのがもういつからなのかは覚えていない。
だからこそ、キィニチはどこか安心していたし満足していたのだ。
「友達だったんだけど、付き合うことになったんだ」
蛍がこんなことを言い出すまでは。
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