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ゆうな
2025-02-23 04:01:08
2803文字
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【猫と雷】
それからの続きが一緒だといいな。
お題:猫と〇〇
#爆轟版深夜の真剣60分一本勝負
◆Pixiv:ログ2に格納済み
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=24418260
「爆豪〜ちょっとお前それは
……
」
「やりすぎだろ
……
ふ、ふふっ
……
」
「アァ?」
「「ヤンキーが雨の日に捨て猫拾うって!!」」
たとえ悪天候でも欠かさない日課の早朝ランニング。その道中に出会ってしまった小さな命。見過ごすことなんて出来るはずもなく、爆豪はダンボールを抱え相澤の元へと向かった。信頼のおける団体に引き渡せるのは明朝になるため、それまでは一旦寮で預かることになりそして冒頭。寄ってきたアホ面共に事のあらましを説明すればこのリアクションだ。笑ってんじゃねェぞ。右手の分まで爆破してやろうかと火花を散らすが、ガラス玉のような色違いの瞳に見上げられてしまえば大人しく手を下ろすしかなかった。
起きてきたクラスメイト達に囲まれても全く動じることのない子猫は随分と人に慣れているらしい。担任がなぜか常備している猫用のミルクとフードを与えるとすぐに飛びついてきて、その生気溢れる姿に爆豪はこっそり安堵する。しかしそんな穏やかな空気も野次馬のように群がってくる友人らにすぐにぶち壊された。「爆豪が猫の世話してる」「動物には優しいんだな」「漫画かよ」好き勝手に投げられる言葉に爆豪はわなわなと体を震わせながら、散れ! と目を吊り上げる。だがそんな姿ももう三年目、すっかりいつもの光景だ。
「爆豪、この可愛い猫ちゃんが轟と同じオッドアイだからって過保護になってんじゃねえの」
「わかる、轟っぽいよね」
「轟の独占禁止なー」
聞き捨てならない言葉の数々に更に苛立ちが募る。相変わらずアイツを甘やかしてんのはおまえらだけだし、オッドアイの猫なんて世界中にごまんといる。そもそも独占もしていない。クソみてえな事言ってんじゃねえ、と捲し立てればクラスメイトはわかったわかった、と揃って雑な返事をして去って行く。
溜息の混ざる往来の中に、朝食の列に並ぶ件の男を見つけた。寝癖頭を睨みつけてやるとすぐにそれに気付いたようで、首を傾げつつ手を上げてみせる。猫なんかよりよっぽど何も考えていないツラだ。しかしそんな適当に反応をしておきながら自分の順番が来ると直ぐに興味を失ったように白飯をよそい始めるのだ。あまりに自由なその態度に爆豪はぱちくりと目を瞬かせ、それからふ、と片頬を上げた。
まあ、うん、確かにこれはちょっと似てるかもしれない。
深夜になると昼間は落ち着いていた空が再び噴火したように騒ぎ出す。雷鳴が轟く闇の中、窓ガラスがガタガタと揺れる音で目が覚めた。時計を見れば丑三つ時も過ぎた時間だ。今日のランニングは流石に無理だろうか。再び微睡の中へ落ちそうな脳内で、ふと、一階で眠っているはずの猫の存在を思い出す。一度考えてしまうとどんなに布団に潜ろうともあの色違いの瞳が頭から離れない。数時間後にはもう居なくなるただの捨て猫である。それでも、目が覚めてしまったからには。
むくりと起き上がると小さく舌打ちをして、爆豪は静かに階段を下りていった。
「
……
何してんだ」
「お。爆豪」
共同スペースにぼんやりと浮かび上がる丸いシルエット。照明も点けずにソファに座る轟はみゃうみゃうと鳴く猫をあやすように抱いていた。年々デカくなる図体の片腕に埋もれながら、怯える様子もなく擦り寄り甘えているのを見て、爆豪はホッとした表情を浮かべる。
「雷とか凄くて起きちまったんだ、すげえ天気だよな。おまえもコイツが気になって見に来たのか?」
「一応拾っちまったのは俺だかんな」
「優しいな」
「コイツに何かあったらこっちが気分悪くなんだよ」
そうか、とまだ生暖かい眼差しで見つめてくる轟の横に腰を下ろす。ゴロゴロと喉を鳴らす子猫はよっぽど腕の中が気持ち良いらしい。額の間を指の背で撫でてやれば、更に蕩けたような顔をする。それには流石の爆豪の胸にも庇護欲だとか、愛しい、みたいな感情が湧いてきて、その表情が遠雷に照らされる前に軽く眉を寄せた。
「この天気がトラウマにならねえように、安心させてやりたいよな」
その言葉に猫がピクピクと耳を動かしたかと思うと、鳴き声を上げながらぺろぺろと轟の腕や指を舐める。もしや大丈夫だとでも言っているのだろうか。
「ん、おまえは本当に人懐っこいな。普通もっと警戒するもんだろ?」
「だな。最初はガンギマってたクセして今じゃ甘やかされてることに慣れきって腹丸出しになる奴もいるし」
「
……
猫の話か?」
「さァな?」
「俺は腹丸出しにしてねえ」
口を尖らせながらもどこか照れくさそうにする轟の表情。笑ってやろうと思ったのに、思わずTシャツをくしゃりと掴んだ。さっき、腕の中で甘える猫を見たときに近い、あの感覚だ。でも可愛いだとか愛らしいだとか、そういうのじゃなくて。もっと何か違う、砂糖をまぶしたような気恥ずかしさと、多分、ほんの少しの緊張感。
よじ登ってきた猫がちょん、と鼻を轟の鼻先に触れさせる。その仕草は。
「
……
挨拶」
「うん、挨拶と、あとは、」
オアシスであろう左腕に住んでいた猫がするんと爆豪の胸元に移動する。必死にTシャツにしがみつきながら、顔を近づけて目を細めると全く同じように爆豪にもキスをした。
「信頼の証
……
」
呟いた轟がふふ、と笑った。
「なんだよ」
未だぺろぺろと顔中を舐めてくる猫の鼻にキスを返し、見慣れないオッドアイと目を合わせる。夜空に煌めく星々のように静かに瞬く小さな瞳を見つめながら、爆豪は柔らかな輝きを放つアイスブルーとグレーの二色を思い出していた。
「いや、俺も猫だったら爆豪に鼻キスしてんだろうなと思って」
ドッッ
……
ッッじゃねえよ、ふざけんな。
……
ふざけんな!
轟が発した言葉に馬鹿みたいに心臓が跳ねて、思考が乱される。信頼? 違う。それだけじゃない。認めてこなかった感情が一気に込み上げてきて、爆豪はぎりりと奥歯を噛み締めた。猫が鳴く声も、轟が、ぁ、と呟く声も届かない。言葉が喉に詰まりそうで、でも黙っていたら不自然で。ごくりと喉仏を動かしてなんとか掠れた声を夜に乗せた。
「アホか。てめェは人間だろ」
「爆豪が、俺を猫に例えて
……
」
音も無く闇を切り裂く落雷が光る。一閃が全てを白く染め、轟を照らした。そのたった一瞬、二色の瞳と真っ赤に染まった頬がまるでシャッターを切るみたいに爆豪の瞳に映った。それだけじゃない意味に気付いてしまった男の見開いた二色の瞳が脳裏に焼きつく。息を呑むように世界が黙って、再び部屋が闇に包まれた。
「なあ、俺」
轟が口元を手で覆う。じわりと汗が滲むくらい、男の左側が熱かった。
「
……
すげえ恥ずかしいこと言ったかもしれねえ」
閃光が走ったような感覚。稲妻に打たれたような衝撃。それを爆豪はこの時初めて知ったのだ。
挨拶、信頼、それから。
光に遅れて約数秒、雷が落ちた音がした。
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