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しちろ
2025-02-22 22:15:23
1414文字
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乙女らよ、風の声を聞け
聖剣ワンドロワンライ。VoM、風の谷ロングレン。ヴァル、ヒナ、カリナ。
谷一番の、風の巫。
「風よ! 染めよ!」
カリナが舞わせた布は谷を渡る風に乗り、見事な色に染め上げられ、そして女神の使いを呼び寄せた。
「なあなあ
……
ヒナも、やってみたらどうや? 風染め」
フーラ山に旅立つ前、カリナがヒナにそんな誘いをした。
「わたし、も? いいの?」
一度目はヴァルが挑戦し、二度目は興味津々のヒナ
……
を押しのけてカリナが行った風染め。すったもんだはあったものの、カリナがフェアリーを呼び寄せることに成功した以上、風染めを行う理由はもうない。
ヒナが聞き返すと、カリナがすこし居心地悪そうな顔になって視線をそらした。
「その
……
あないなやりたそうな顔されてたら、一応、声かけたらなあかんかな、って
……
。せっかくの機会やし、ロングレンの名物やし
……
」
もじもじぐだぐだ言うカリナだが、風染めをした理由がヒナへの対抗意識だった手前、決まりが悪いのである。言い訳する横顔に照れが見え隠れする。
少しだけ距離は縮まったものの、相変わらずちょっぴり意地っ張りなカリナに、ヒナは屈託なく笑って返事をした。
「うん、やってみたい! でもカリナのあとじゃ、ちょっと恥ずかしいかなぁ?」
それを聞いたカリナはけらけら笑った。
「大丈夫やって~。さっきのヴァルの風染め(笑)なんか、まるきり穴から出てきたモグラとか溺れたミミズのダンスやったやんか。こんなけ風が吹いとって、あれより下手やったらある意味天才やで」
「ええっ! 僕、そんなにひどかった!?」
軽くショックを受けるヴァルに、ヒナが「そんなことないよ」とフォローを入れる。しかし、慰めながら彼の風染めを思い出してしまってふふっと笑ってしまい、それを見たヴァルが「二人ともひどいなぁ」とよけいに拗ねた。
風染めは、ロングレンでもっとも風に近い場所で行う。風に近く、精霊に近く、人の営みを眺めることができて地上をはるかに見渡せる、そんな場所。
風染めの高台に立ち、ヒナが布を手に取った。隣に、カリナ。
ヒナは、ヴァルと違ってすぐに布を風に舞わすことはせず、目を閉じてすうっと深呼吸した。風が吹いている。
「
……
いい風。この村に来た時と、違う感じがする」
カリナが、驚いた顔をした。
「ヒナ、分かるんか?」
瞼を閉じたまま、ヒナは頷く。握った布がはたはたと揺れ、受ける風圧がヒナの身体に伝わっていく。
「この村に来たときね、感じたの。風が悲しそうって。でも今は違うの。谷中の風が、わたしの心と体を吹き抜けていくような気がする」
ヒナを見ながら、カリナは自然と感じる。風と触れ合い、音を聞き、声を聞く。自分が風染めを行う時と、同じ作法。
「風が変わったのがわかったの。カリナが、風染めをした時から」
ヒナが目を開く。カリナの頬が紅潮した。
風が喜びの声を上げている。
ヒナが布を握る両手を高々持ち上げ、大きく上下に揺らした。真っ白い布は風に乗り、吹き流しのように強くはためく。ヴァルの歓声が上がる。
ヒナの足が躍り、その場で軽やかにターンする。
「その調子や! いっけぇえ!!」
思わずカリナは叫んだ。自分が風染めをしているときにするように、想いを、声を風に乗せ。
風よ! 染めよ!
風の声を聞く、火に愛された娘と、風に愛された娘。
無垢だった白い布はその瞬間、火と風を合わせたような、美しい色に染めあげられた。
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