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かのまる
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息白し、遭逢(再掲)
誤ってデータを消去してしまい、再掲します。
年末に書いたものになります。
デア無し、セイバーは何度も転生して伊織を探し続けてます。
性別は男性です。(オンリーの作品が男性のため)
吐く息が白く煙っては、淡雪のように虚空に溶けてしまう。
周りを見渡せば人、人、人。幸せそうな家族。仲睦まじい恋人。こんな
人熱
ひといき
れに一人きりで来ているのは私くらいだろう。
やはり来るんじゃなかったと、ひとりごつ。
人にぶつからぬように、身を躱しながら参拝の列の前に並ぶ。
浅草寺には遠く及ばないけれど、ここもなかなか立派な神社だ。地元の者に大切にされているんだろう。
私は何の因果か日ノ本で生まれ変わり、何度も生を受けていた。
生まれ変わる度に神性は薄れていき、もう身体的もほぼ完全な人間だ。
私はずっと彼を探し続けている。
令和の時代になり、ありとあらゆるツールを使い彼を探しているけれど、現在までついぞ出会うことは叶っていない。
いっそ一目で見るだけででも良い、でも叶うならあの時伝えられなかった言葉を彼に聞いて欲しかった。
物思いに耽ってると、やっと参拝の最前列まで辿り着いた。
神に強く誓う。今度こそ彼と会えるように全力を尽くすと。
昔は神に名を連ねてたのに、神に祈るとはすっかりヒトらしくなったものだと自嘲する。
全国に祀られた神としてのヤマトタケルと、ヒトとしてのヤマトタケルは完全に分離
……
分かれてしまったらしい。
参拝を終えると、おみくじ売り場にたどり着いた。
これは筒を振って出てきた番号のおみくじの紙と交換してくれるようだ。
おみくじなど初めてだが、戯れにでも引いてみるとしよう。そう言えば浅草寺は日本一凶が出やすいと有名なんだとか。あの夜から訪れていないが、今は観光名所となり、随分と様相を変えているらしい。
出てきた棒の番号を告げ、巫女から神を受け取る。
大吉だ。さすが私、やはり引きが良い。
上から順に結果を読んでいくと、待ち人という小さな項目があった。
待ち人は
……
『来る』とあった。
薄い紙に書いてある一言に、心に小さな灯が灯ったような温かい気持ちになる。
私はまだ頑張れる。まだ私は彼を諦めていない。
何度心折れようとも、絶対に諦めるつもりなどないのだ。
気分が良くなった私は、出店の並ぶ通りに浮き足立ちながら向かう。
当世の出店とやらはどんなものが売っているのだろう。
食べ過ぎた
……
。チョコバナナやらベビーカステラ、りんご飴、焼きそば、焼きもろこし
…
屋台の食べ物はいつの時代も随分うまそうに見えるな。
種明かしをすれば、照明や雰囲気がそう見せてるのだろうけど。
一人で食べる食事はいつも味気ない。江戸ではうまい、と私が笑えば彼はいつも穏やかな笑顔で頷いてくれた。すると不思議と食べ物がもっと美味しくなったものだ。
全て腹に収めて立ち上がり、少し高いところから辺りを見るが、相変わらずの人の波。
目的も果たしそろそろ帰ろうかとした所で、ふと見知った後ろ姿を見た気がした。
焦茶色の癖毛を後ろで束ねた男、いつも顔を上げなければ目が合わない、でも目が合えば必ず月をたたえた瞳で優しく微笑みかけてくれた。
私がその彼の優しさや温かさに惹かれていると気がついたのは、あの夜を超えてからだった。
優しくないときみは言ったけれど、私は決してそうは思わなかった。きみは間違いなく優しかった。
私はそんなきみを好きになったんだから。
追いかけなければ。他人の空似かもしれないが、そんな事はもう慣れっこだ。
何とか人混みかき分けて、その男の元にようやく近づく事ができた。
「っ
………
あの!!」
振り返ると、長い前髪に隠れた月夜色の瞳が大きく見開かれる。まるで一際輝く満月のように。
その瞬間手首をつかまれて、人波から大きく外れ、空いている所まで連れていかれた。
彼は大きく深呼吸すると、「久しぶりだな。セイバー」と晴々とした笑顔を見せてくれた。
私はその笑顔を見て身体の力が抜けて、その場にへたり込んでしまう。
泣きじゃくる私に驚きながらも、イオリは背中を遠慮がちに撫でてくれた。
目元が真っ赤になり、瞼も腫れた頃ようやく顔を上げる事ができた。
すぐに清潔なハンカチとティッシュが差し出される。
「ありがとう」
いい大人が取り乱してしまって、さらに好きな人に恥ずかしい顔を見られてしまった。
「そうだ。何か温かい飲み物でも買って
……
」
「待って!行かないで、ここにいて。置いていかないで」
この機会を逃したら二度と会えない気がして、思わずダウンジャケットの裾を掴むと、イオリは隣に腰掛けてくれた。
「
……
本当に久しいな。どれだけお前に会いたいと思っていたか」
「私もだぞ!かれこれ何百年もきみを探し回っていたのだから、見つけてやったことに感謝するんだな!」
照れ隠しでつい子供っぽい事を言ってしまい、すぐに後悔する。
「だが、きみを見つけるには相当骨が折れた。おまけに私は早死にばかりするものだから、何度も生まれ変わる羽目に
……
」
早死にという言葉にイオリの表情が一気に曇る。また失言してしまったようで、慌てて取り繕う。
「いや、でも悪いことばかりではなかったぞ!それにきみに必ず会えると信じてたからな」
「俺は、あの夜の因果のせいか
……
お前のいうところの生まれ変わりは多分今回が初めてだと思う」
「そうか。だけどこうしてまた会えた。だから私はそれで十分報われたんだ。本当に嬉しいよ、イオリ」
自然と笑みがこぼれ落ち、それにつられてやっとイオリも笑ってくれた。
「セイバーはあの時より随分大人びていて驚いたぞ。だが、その美しい立ち振る舞いは変わらないな」
「なっ!!今は歳をとるのだから当たり前だろう!きみもそういうところ変わってないなぁ」
寒さで赤くなった頬が熱くなってしまい、思わず手で顔を覆ってしまう。
全くこの男にはずっと振り回されっぱなしだ。
「さて」
イオリがすっと立ち上がり、私に手を伸ばす。
その手を取れば強い力で引っ張られる。
勢い余ってイオリの胸に飛び込んでしまい、肩を掴まれる。
「俺のアパート、近いんだ。積もる話は幾らでもある。
……
ここは人が多いし冷える。家に来ないか?」
横髪を掻き分けられ低い声で囁かれたら、腰のあたりに甘い何かがぞわりと広がる。
鈍感な私ですら、ただ思い出話に花が咲き終わるだろうか?と思うと胸が早鐘を打ち、火照りっぱなしの頬が更に熱をもつ。
肩を掴む力が少し痛い。もう私はサーヴァントではないんだぞ。
いっそのこと、新しい年を迎えたこの日に、言えず終いの想いを思い切って伝えてみようか。
「
……
それは、楽しみだ。イオリ」
わずかに声が上ずってしまった返事は、白色の吐息と一緒に賑やかな喧騒の中に溶けていった。
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