tonami
2025-02-20 03:44:27
1887文字
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告白まであと六時間

徹夜続きで様子のおかしい🐯と添い寝する⚔️



「ゾロ屋の腹巻になりたい」
 いつになく真剣な顔で妙なことをのたまう男に、ゾロは無表情のまま酒を煽った。
「今日もまた元気にとち狂ってんなァ。何徹目だ?」
「ゾロ屋の可愛さは世界に通用する。なぜならゾロ屋が可愛いことは真理だからだ」
「ペンギン」
「本日四日目です」
「おいこの馬鹿、さっさと寝やがれ」
「いやだ!」
 威勢よくグラスをテーブルに叩きつけ、ローは正面のゾロをじっと見る。一重の下、ここ最近は解消されていたと思っていたが、また濃い隈が居座るようになったらしい。人に無茶するなだの健康的な生活をだの口うるさいくせに、自分が不摂生しているのはいったいどういうことなのか。しかも徹夜二日目を超えるとどうも思考回路に支障をきたすようで、やたら腹巻に固執したりピアスが欲しいと駄々をこねてみたりビブルカードを差し出してきたかと思えばお前のはないのかと肩を落としてみたり、とにかく様子がおかしい。それも、ゾロに対してだけ。
「ゾロ屋はおれが嫌いなのか」
「普通」
「ふつう……? それは嫌いじゃねェってことか?」
「まあ、そうとも言うな」
「そうか。じゃあ好きってことだな」
「お前今日は一段とやべェな」
 いつになく回路がぶっ飛んでしまっているローに少し引きながらも、ゾロはジョッキの中身を喉にすべて流し込んだ。空になった木製のそれをテーブルに置く。
「んで、いいのかよ」
「なにが」
「いい加減、寝たほうがいいんじゃねェか」
「まだ寝たくない」
「へェ。じゃあ、特別サービスはなしだな」
 瞬間、ローの動きが止まった。とくべつさーびす、と反芻する言葉は拙い。動きの鈍い脳にゆっくり意味を染み込ませている姿は、到底二つ名である死の外科医には見えなかった。それを見せるのがゾロ相手にだけだと言うことが妙に心の柔いところをくすぐる。
「いま寝るんだったら、おれが添い寝してやるよ」
「よし寝よう」
 決心したローの行動は早かった。あっという間に能力を展開して自室に自分とゾロを飛ばすと、そのままベッドに引きずり込んだ。あまりに早業すぎてされるがままだったゾロが辛うじて発せたのは「靴!」という一言だけだ。短く舌打ちをしたローはぽいぽいと二人の靴をベッドの下に投げると、ゾロの胸元に顔を埋めた。豊かな胸筋の谷間に鼻先を突っ込み、深呼吸する。腰に回された腕はがっちりとゾロの体を捕らえていて寝返りも打てない。ローに力負けするとは思わないが、大太刀を片手で扱う胆力は確かなもので、抜け出すには苦労しそうだ。今回はローを寝かせることが目的なのでその必要は特にないのだけれど。
「お前、あんまりクルーに心配かけんなよ。シロクマなんか一緒に昼寝もしてくれねェって泣いてたぞ」
「ベポだ。……だって、仕方ないだろ」
「なにが」
「ゾロ屋と一緒にいられる時間は限られてんだ。……もう少し、したら、ちゃんとするから。いまだけは見逃してくれ」
 ぐりぐりと額を胸に押しつけ、ローはいっそうゾロを抱き締める。硬いばかりでたいして抱き心地は好くないだろうに、眠る時でも構わずゾロを腕の中におさめたがった。
「まったく、仕方ねェな」
 あちこち跳ねた硬めの髪に指を差しいれる。明るいところだと青みがかって見えるそれはほどよく指に絡み、後を追うことなくするりと解けていく。まるで人を抱き枕がわりにする歳上の駄々っ子のようで、ひそかに気に入っていた。
「どうせ誰も見てねェんだ。いまだけは見逃してるよ」
 しばらく会えていない小さなトナカイにするように撫でてやれば、大きな駄々っ子が胸元で深く息を吐く。それからとろとろとした声で、ゾロ屋、と呼んだ。
「ゾロ屋は、おれのことが好きか」
「普通」
「普通ってなんだ。嫌いじゃねェってことか」
 つい数十分前同じ会話を繰り広げたことにローは気づいているのだろうか。いつになく様子がおかしかったから、覚えていないのかもしれない。もしかしたら今日の記憶自体飛んでるかもな、と思いながらゾロは一言一句、同じ言葉を返してやる。
「まあ、そうとも言うな」
 一味の誰かが聞けば、むしろそうとしか言わないと突っ込んだのだろう。しかし、ここにいるのはゾロとローの二人だけだ。他船のクルーだというのに遠慮なく抱き枕にしている男は、徹夜でもして思考回路を飛ばさないと好きだとすら言わない。だから、ゾロも素直に応じてはやらないことにしている。ベポ達に泣きつかれたからといって、むりやり意識を落とすのではなく添い寝を選んだ時点で、説得力はあまりないのだけれど。