画家は貧乏だった。お金がなさすぎて、パンを買うことすら難しかった。それでも絵を描かずにはいられないから、仕事で得たわずかな金ですら、絵の具に変えてしまう。
食べるものといえば、パセリしかない。
画家は普段、レストランで皿洗いの手伝いをして収入を得ていたのだが、そのときに余ったパンやパセリを分けてもらって飢えを凌いでいたのだ。
家にいる間、手は木炭で真っ黒で、紙は白いところがなくなるまでデッサンを続けていた。
天井を見つめながら、貴重な絵の具を使って、どんな絵を描くべきか、じっと考えていた。
しかし考えていても、作品は完成しない。作品を完成させねば、ずっと皿洗いを続ける生活である。
しかし売れる絵を書くことができず、貴重なお金を無くしてしまったらどうなるだろう。考えても答えは出なかった。
結局のところ、画家にできるのは目の前のキャンバスにしゃにむに齧りついて、作品を完成させることだけだった。画家は絵を書き始めた。
下書きをして、よくできたような気がして、ひとまず仕事に行って皿を洗う。
帰ってきて、絵の具をおいてみて、納得がいかずひとまず仕事に行って皿を洗う。一度描いた絵を決して、最初から描き直し、仕事にいって皿を洗う。
そうやって一週間経ち、一月が経つ。
公募に出すことが目標だったが、締め切りはとうに過ぎていた。しかし、これが最後になるかもしれないと思うと、納得のいかないものを出すわけにはいかなかった。
画家は、途中で仕事に行くのが億劫になった。仕事のために毎日、制作を途中で中断させられる。それがインスピレーションを阻害しているような気がして仕方がなかった。
だから、次の日仕事に行かなかった。
雇い主は不機嫌になったが、所詮皿洗いの下働きである。いなくなったところで、誰も困らない程度のものだった。キャンバスに向かって筆を走らせ続けた。
ようやく完成したとき、画家は自分がとても空腹だったことに気がついた。パセリですらからからに乾いて残っていなかった。
絵を持っていく体力すらなく、画家は天井を見上げたまま途方に暮れた。
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