望月 鏡翠
2025-02-19 23:32:02
852文字
Public 日課
 

#1638 「そら豆」「赤ん坊」「屑籠」

#毎日最低800文字のSSを書く/三題噺

 実家が農家だという同僚から、旬の野菜を受け取った。料理をしない人には、調理されていない大量の野菜というのは扱いにくいものらしい。他にもらう人がいないらしいから、喜んで全部もらってきてしまった。
 買うと高いのに勿体無い。
 家にある魚焼きグリルを使うときがやってきた。一年に数度しか使わないのは、当然洗うのが面倒くさいからだ。しかも魚を焼くものだから脂がベタベタするし、生臭い。解決法は、魚を普段の食事から排除するしかない。
 と言うことで、普段は魚焼きグリルを使わないで生活している。
 しかし、魚以外であれば喜んで使う。
 今日焼くのは、頂き物のそら豆だ。鞘を剥かずにそのままグリルにつっこみ、皮が焦げるくらいまで焼いて、ひっくり返して中が蒸し焼きになっている。
 熱々のまま皿に乗せてベランダに運ぶ。
 火傷しそうになりながら皮を剥いて、塩をふりかけて食べるのが最高にうまいのだ。もちろんふりかける塩は岩塩だ。お皿の上にがりがりと削っておいて、あとはつけながら食べる。
 ベランダに机と椅子を用意して、冷蔵庫ではもちろん瓶ビールを用意してある。栓を飛ばして雑に食べるのが最高なのだ。
 隣に屑籠を用意して、そら豆を食べた端から焦げた皮を薄皮を捨てていく。手を汚し、そのことを気にしない状態で食べるつまみが一番美味しい。
 少し塩味が強いそら豆はビールとよく合う。
 今日はこれ以外の料理をしない。そら豆とビールでお腹をいっぱいにする。背徳的な食生活だ。明日休みでなければ、決してできない。
 ベランダにいて風を感じていると、窓を閉め切っているときは聞こえない音が聞こえてくる。普段は閉め切っている生活の気配だ。
 近くの家には赤ん坊がいるらしい。鳴き声が聞こえてくる。
 今までは聞こえたことがなかったから、遠くの家にいるのだろうか。ベランダにいてもかろうじて声が聞こえるくらいだ。外にいてようやく聞こえるのだから、このマンションが防音がはっきりしているのが、よくわかる。
 いい夜だった。