まきわ
2025-02-19 23:14:52
1924文字
Public クロリン
 

無自覚のやきもち

学院時代クロリンでリィンくん視点
夜遊びをする先輩にもやもやしてしまうリィン君の話
別にあげている『自覚的な恋慕』が先輩視点で対になる話になっています。

放課後、リィンがいつも通り学院内をあちこちの手伝いをしながら歩いているとふと耳に入ってきた会話があった。
「でかいあくびしてんなぁクロウ。相変わらず夜は遊び歩いてんのか?相手はどんなカワイコちゃんなんだよ」
思わず足を止めて会話を聞いてしまう。
肩を組まれてからかうように聞かれたクロウは得意げな笑みを浮かべてウインクしてみせる。
「ふふん、そりゃヒミツに決まってんだろ」
その答えに、リィンは思いきり顔をしかめた。

ものすごくもやもやしている。
腹が立っていると言ってもいい。
今回に限った話ではないのだ。
クロウが夜中に遊びに出ているのはⅦ組に入るよりも前からのことで、編入前にもトワから愚痴を聞かされたことがある。
どこに行っているのか詳しくは知らないが、ナンパしているところを見かけたことがあるとアンゼリカから聞いたことがあった。
ナンパだけじゃない、帝都に行けば風俗店だってある。
女性と遊ぼうと思えばいくらだって方法はあるのだ、特にクロウのような美男子ならば。
だがリィンはそんな話を聞くといつもなんだかイライラして仕方なくなるのだ。
理由はわからない。自分でもそんな時に生まれる感情を持て余しているのだ。
(不真面目なのが許せないんだろうか)
そう思ったがこれまで不真面目な人間を見たところで苛立ったようなことはない。
良いことだとは思わないが、そんなものは人それぞれの生き方だし、そうした結果自身に起こることは自分が受け止めることになるのだからリィンがどうこう思う筋合いではない。
クロウにだって、授業をちゃんと受けるよう小言はいうものの無理矢理どうこうしようと思ったことはない。
(だったらどうしてこんな気持ちになるんだろう?そういえば、ギャンブルをしているのを見かけた時はこんな風にイライラしないのに)
仕方ないやつだな、とは思うしため息もつく。
だけれどクロウらしくて少し笑ってもしまうのだ。
(さっきのだってそんなのじゃない、カジノに行ってたんだって否定してくれたら)
そう考えて、リィンは自分がその否定を聞きたくて足を止めたのだと気付く。
(聞かないで、立ち去ってしまえばよかった)
どんな人と逢っていたんだろう。
その人と、何をしたんだろう。
どんな顔を、見せたんだろう

あぁ、いやだ

リィンは頭を振ってその思考を振り払った。
(なんで、こんなことが気になるんだろうどうしてクロウは、どこにも行かないでいてくれないんだろう)
苦しくなって胸を押さえる。
ふう、と大きく息を吐いていやな気持ちを吐き出そうとしてみる。
あまり変わらなかったという事実から目を逸らしてリィンは足を速めて歩き出した。

夜の第三学生寮。
向かいの部屋から住人が出ていく気配を感じてリィンは部屋着のまま自分の部屋を出た。
「また、遊びに行くのか?」
階段へ向かう背中に声をかけると、バツの悪そうな顔でクロウが振り返る。
「いやー見逃してくんねぇかなー、なんて
頭を掻きながら笑ったクロウが、リィンの顔を見るなり目を瞠ったのが見えた。
自分はどんな顔をしているんだろうと頭の片隅で思いながら一歩前に出る。
「風俗店とかに、行くのか?それとも誘った女性と遊ぶのか?」
自分にそれを責める筋合いはないはずなのに、声音に批難が滲むのを止められない。
どうしても、行くのか?」
リィン」
諫めてるというより、これはわがままだ。
子供が駄々をこねるようなものだ。
呆れられてしまうかもしれないと思うと、苛立ちを焦りと不安が凌駕した。
撤回しよう、と口を開きかけた瞬間。
「やーめた」
「え?」
クロウはすたすたとリィンに歩み寄ってくると昼間彼がそうされていたように肩を組んできた。
「部屋でブレードでもして遊ぼうぜ。それとも真面目なリィン君は夜更かしとかできねぇか?」
煽るように言われて今度はリィンが目を瞠った。
「え、と」
展開がわからなくて戸惑っているとぽん、と背中を叩かれて優しく微笑んでくれる。
それを見てようやく、行かないでいてくれるのかと心にすとんと落ちた。
どうしてやめる気になったのかはわからないけれど、それでようやくリィンは力を抜いて微笑んだ。
いや。たまになら夜更かししてみるのもいいかな。でも途中で逃さないからな?」
「望むところだぜ。寝落ちたら寝顔写真に撮ってやっからな」
「それはこっちの台詞だ」
リィンは驚くほど心が軽くなっているのを不思議に思いながらクロウを部屋に招いた。

軽くなりすぎて、結局2時間ほどで寝落ちてしまったのだが、本当に寝顔を撮られたのかはクロウしか知らない。