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望月 鏡翠
2025-02-19 22:10:16
1032文字
Public
日課
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#1637 「つる草」「一日」「白墨」
#毎日最低800文字のSSを書く/三題噺
つる草に覆われたままになっている家は、一見すると廃墟のようだ。いつか建物ごと取り壊されるからせめて表札くらいは見えるようにしておけと言っているのに。
夏場は少し目を離した隙に、あっという間に雑草が蔓延る。今まで先延ばしにしていたが、今日こそは掃除していかないと次に来たときが大変だろう。
ため息をついて、門扉を覆う草を引き剥がす。この家にくるときは、作業着と軍手必須だ。中に入るだけで時間がかかってしまう。
郵便受けがたびたび塞がれるので、代わりに用意した箱に投げ込みチラシや数は少ないが郵便物が入っている。ちぎった草は庭の角に積み上げておき、チラシは家の中のゴミ箱に持っていく。
郵便物は本人に渡す。次に行ったらなくなっているから、一応目は通しているのだろう。玄関の鍵はかける習慣がないようなので、私が勝手にかけている。
物取りが入りたくなるような家ではないが、浮浪者が入り込んでくる可能性はある。中に人がいるのに、戸締りをきっちりして出かけなければいけないなんて、おかしな感じだ。
家の外観を人の住居らしく整えてから、ようやく家の中に入ることができた。一戸建てで部屋数は多いが、どこにいるのかはわかっている。家の外部の荒れ具合からは想像がつかないが、中は意外と片付いている。
奥からカツカツと黒板を規則的なリズムで引っ掻く音が聞こえてくる。
書斎で、家主が文字を書いていた。白墨で黒板を理解ができない文字や数式で埋め尽くしている。
「お〜い。生きてる?」
「もちろん、生きている」
この世を離れて生きている天才科学者みたいな行動をしている男は、実は全くすごい人ではない。土地があって、そこの家賃収入で生きている引きこもりだ。意味のわからない数式や文字は、彼が今ハマっているゲームの攻略手順や、能力値の計算だ。
私は彼の面倒をみるために雇われているハウスキーパーだ。
家を掃除して、風呂に入らせて、公共料金の引き落としが滞りなく行われているかチェックし、食事を用意してカップ麺やレトルトを買い足し、冷凍した米を量産して帰る。
一日がかりだ。
間違いがあってはいけないと理由で、同性が雇われている。誰も彼も長続きしなかったらしいが、私はそれなりにゲームに興味があって彼と話が合うので、今の職を失わずに済んでいる。
仕事を終えると、次にくるときまで死なないでくれと言って家を後にする。
あとでオンラインで会うから、短い別れだ。
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