はなおぼろ
2025-02-17 20:19:28
1820文字
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縁巌覆面作家企画5:Iグループ感想

作品の雰囲気に引っ張られてテンションが上下左右しております。予めご了承ください。

I-1:空行く雲

 転生なのかも? という描写があるので、時代的には昭和の第二次世界大戦前ほどなのでしょうか。地の文からも漂う時代の空気感が好きです。物語の随所で積もっていく秘密、また双子がそれぞれ秘密を抱えることで、近くにいるのにすれ違いが生まれているところに、生きている重みのようなものを感じます。そして読者が知っている『彼ら』のような絡繰り人形を予め提示しておくことで、後々の零式の登場へと繋がるのが上手いなぁ、と。
 縁壱がウブヤシキの家系の者と接触した時、また零式が修復された時に物語がまた動いていくのだろうという終わり方に、続きが気になって仕方がないです。



I-2:烏を殺す男

 鬼狩りに救われた第三者視点の物語。こういう話、大好き。
 煙を立てて消える血の感触や、五平とその弟について事前に触れておくことで、再会した壮年となった侍の身に起きていることが、縁壱という男を事前に知っている読者だけでなく、視点主からみても如何に悲痛なのかが明確になっているように思えます。特にのぼる煙に口を付けるシーンの、なんと苦しく美しくどこまでも悲しいものか。
 嘗て少年だった視点主が、己の弱さと着せた罪を抱えて大人になっていく様が丁寧に描かれています。それ故に最後の一文に説得力や言葉の重みが生まれるのだなと思いました。



I-3:影双の刃

 描写が何処をとっても丁寧です。吹雪のシーンは読んでいるこちらも冷たい強風に晒されているようですし、戦闘シーンも躍動感がありとてもカッコいい。実態が掴みきれない鬼や片曇村に対する不気味さや緊張感が続く話、時には人間の醜さすらも上手く書き綴る中、こねずとぽぬ治郎の可愛さに癒される。ここのバランスのとり方が凄いなぁと。そして■が影双に至るまでの過去は涙なしには読めませんでした。鼻ずびずび……
 こねず達が出ていった後であろう片曇村のその後から、こうして原作へと軸を繋げていくのかと感嘆しました。構成が上手過ぎる! 読後にその後の双子へと思いを馳せたくなる作品でした。



I-4:縁壱の城

 モデルが着衣から裸体になったのは、ありのままの兄上を描くという側面もありつつ、縁壱の記憶に存在する兄の装いをキャンバスの中で着せるためなのかなと思ったりしました。記憶にある全ての兄をキャンバスの中に縛り付けていく縁壱。兄への執着の深さを物語りつつも、現実ではしてはならないのだと吐露してしまうところに、弱さを感じます。「私」ではなく私を捕らえて欲しいと嫉妬するも口にはしない巌勝とは対称になっているのかな。
 フルートの音を初日で出せる人はマジで才能の塊。出すだけでなく音色を響かせることが出来るならなおのことだから、習い事の先生は当時滅茶苦茶引き留めてそうだよな~て思っちゃった←



I-5:終わらない国

 炭治郎がとても主人公。家族と共に必死に生き抜こうとする強い決意に痺れます。戦いながら思考を止めてはならない現実に、如何にこの世界が危険であるかがひしひしと伝わります。
 冒頭の『お前がただの異型の餌などと~』のからミチカツの、再会後の『お前を苦しめた記憶が~』からヨリイチが抱く感情と執着の重さが伝わってきます。
 約ネバ未履修(賢い子供たちが実は恐ろしい場所だった施設から脱出するってふんわりとし過ぎた内容しか知らない)でもとても楽しめましたが、パロ元知っていたら読んでいてもっと細かくネタが拾えたのかなぁと惜しい気持ちはあります。



I-6:身を食らう蛇

 縁壱の死後、彼が助けた大勢の人々からの話を経て、縁壱が生きた軌跡を辿る。縁壱のことを分からず見えていなかった兄が、鬼となってから弟のことを知ることで、縁壱からの愛と、自身の嫉妬と怨嗟の奥底に眠っていた愛を自覚する。切なさがありつつもそこにある確かな温もりを感じる物語でした。
 足跡が辿れるほどに多くの人々に縁壱が愛されていたこと、縁壱にまつわる多くの話を聞けたということは、彼がそれだけ多くを助けてきたということであり、兄を捜すために色々な地を巡ったということなのかな、と。この軌跡も、縁壱から兄への『あい』と呼べるのではないかなと思いました。





 ぐっと作品の中に引き込まれる物語の数々でした。
 作家の皆様、素晴らしい縁巌作品を生み出して下さり、本当にありがとうございました!