三毛田
2025-02-17 16:53:25
1089文字
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06 06. 沈黙が怖くて一人芝居

6日目
それでも君は責めない

「それでさ、この間の依頼でさ」
「穹」
 名前を呼ばれ、口を閉じる。
「丹恒、どうした? 具合が悪くなった?」
「そうじゃない。無理して喋らなくていい。俺は、お前と一緒にいられるだけで、嬉しい」
 俺の手をそっと掴み、目線を合わせ。
 二人きりになって、何を話していいかわからなくなり。
 だからといって、ずっと沈黙が続くのも怖くて喋り続けていた。
 そのことに気づいたのだろう。
 こちらを見る目元は柔らかく、慈愛に満ちていて。
 ふと体から力が抜ける。
「一緒に、居るだけでいい?」
「ああ。俺が口下手だから、お前に無理をさせた。済まない」
「そんなこと、ない。俺も、あまり喋るの上手くないから。そう考えると、なのはすごいよな」
「そうだな。俺も、三月の話術には感心する」
 俺の言葉に同意するように頷く。
「なあ、丹恒」
「どうした」
「好き」
 思いを伝えると、大きく目を見開いて。それから
「俺も好きだ。穹」
 甘さの乗った声で、好きだと返してくれる。
「抱きしめていい?」
「好きにしろ」
 許可をもらえたので、恐る恐る丹恒の背中に腕を回す。
 ドッドッドッと、心臓の鼓動が速い。それがどちらのものなのか、判別がつかないけれど、多分俺。
「キス、しても?」
「それは……
 髪を優しく撫でながら問いかけると、戸惑いの声。
 付き合って、こうして抱きしめ合うのは何度もしている。
 けれど、キスはしたことがなくて。
 物語やゲーム、映画の中でしか知らない。
 丹恒としてみたらどうなるのだろう。そんな妄想ばかり。
……
……
 返答に困っているのか、沈黙が広がり。
 でも、慌てて言葉を紡ぐ程でもなさそうだと一人安堵。
……何故、お前は俺とキスがしたい」
 ようやく絞り出された言葉は、それ。
「好きだから。それ以外に、ない」
「好きだと、キスをしたくなるのか?」
「キスも愛情表現だからさ」
……誰かと、したことがあるのか」
「そんなわけない!」
 抱きしめていた腕を解き、肩を掴んで力強く告げる。
 それに驚いたのか、灰緑の瞳を数度瞬かせ。
「ご、ごめん」
「いや。俺も配慮が足りていなかった」
 お互いに謝り、それから伺うように見つめ。
「全部、丹恒が……初めてだ」
 記憶がないから、本当ならばそんなこと断言できない。
 でも、〝今〟の俺にとっては初めてであることは違いなく。
「なら、キスの仕方はわかるのか」
「なんとなく」
「そうか。それなら、俺は待とう」
 ゆっくり瞼を閉じて。
 ええい、ままよ!
 頬にそっと手を当て唇を近づける。