hatahata
2025-02-14 07:11:39
4113文字
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惚れた弱みとチョコレート

90年代にちゅ●るは多分無いので現パロかも知れない
九初期真九と言い張る

2/14は俗に言うバレンタイン・デー。
宗教的なことなんて日本人として一般的な季節行事以外は銃口や切っ先を突きつける時にお祈りは済んだか?それとも神さま仏さま助けてと神頼みするか?なんて煽る時くらいにしか意識しないので、つまり俺にとっては世の中が浮ついて恋心や愛情、義理人情が行き交う日である。
その中でも特に主張が激しいのがチョコレート。これでも日頃は職務を全うする一刑事なので、義理チョコやら行事に託けた交際要求などが起こる。誰ともそういう仲になるつもりはないので断るのだが、極稀にやたらしぶとい女がいるのは何故なのか。バッサリ断っても諦めない、徹底的に避けても人伝に存在を主張してくる、挙句には俺のことを無断で調べ上げようとしたので渋々黙らせる・・・・羽目になった。流石にあれはちっとも楽しくなかった。
閑話休題。
兎にも角にも、俺にはあまり関係のない話だった。まともで危機察知能力のある女はそもそも俺と必要以上に関わることはないし、俺とて甘いものを好んで食べるタチではないから、周囲に満遍なくばら撒かれる義理くらいで丁度だと思っていたので。
しかし悠長にしていた俺は、夜にとんでもない衝撃を受けることになる。



特に詰める仕事も予定も無かったので九条館に来たのだが。ついでに珈琲に合いそうなチョコレートも持参した。食べ物に細工をする趣味は無いので安心安全の既製品未開封。要らんと突っ返される可能性は高いがそれはそれで警戒しててかわいいし、万が一受け取られたら九条が俺から出されたものを食うんだな~♡と喜ばしいのでどちらに転んでも損は無い。
しかし、だ。いつも通り邪魔するぞ、と中へ入り九条の姿を探し彷徨いて、2階の自室ではなく1階の食堂で見つけた九条は、俺の姿を認めた途端ひょいと何かを差し出してきた。
……チョコペン?」
そう、何とケーキやクッキーのデコレーションに用いられる製菓材料の内一つ、チョコペンである。チューブ状のそれを、口を此方に向けて差し出したのだこのお坊ちゃんは。何でだよ。バレンタインチョコのつもりか?箱入りにしても限度があるぞ。しかも既に先が切られて中身が少し覗いているし。
いつにも増して読めない行動は面白いが、これはいったいどう対処したものか。解らないなりにとりあえず受け取ろうと手を出したらスッと避けられて、いよいよ脳内にはてなマークが満ちていく。……手ずから?そこに?口を付けろと?何故?何のご褒美……ではなく。
「ほら」
……九条、貴様俺のことを猫か何かだと思ってるのか?」
俺がそう訊いた途端、九条の眉が訝しげに寄せられる。「おまえが猫と同列な筈無いだろう何を言っている」と明確に顔に書いてあって、今この状況で貴様が俺を怪しんでいいと思ってんのか?とうっかり口角が引き攣った。
「あのな、チョコペンと練乳はそのまま吸うモンじゃねぇんだよ」
「練乳をそのまま吸う奴がいるのか」
「たまに」
吸うまではいかなくとも舐める奴とか。
というかそもそも、九条が俺にチョコレートの類を寄越そうとしている、という現状への動揺もある。そりゃあいつだって九条のハート心臓は欲しいが、俺は九条にとって好かれるような人間ではない……いや九条はありとあらゆる人間が嫌いだろうが。なのでこれも若干の嫌がらせの可能性もあるが、だからといって、某猫の液状おやつみたいにチョコペンを向けられて素直に舐められる訳がないだろうよ。
「なァ九条、もう一度言うがチョコペンはそのまま舐めるものじゃない。イイコだからそれをこっちに渡せ?」
欲しいか欲しくないかで言ったら正直欲しい。九条が俺に何かしらを寄越すのは大層貴重だ、しかもバレンタインデーにチョコレートに準ずるものなんて、事件が起こった際の殺人犯に凶器を下ろせと宥める時より慎重に声を掛けてしまうのも仕方ないと思う。
しかし当の九条は俺が珍しく真面目に対応しているのをちっとも意に介した風もなく、ふむ、と僅かに首を傾げる。
「気に入らないか」
「気に入る気に入らないの話じゃなくてな?」
「そうか……なら」
此方の話をハナから聞く気が無い九条がふとチューブ口の方向を逸らし、胴体部を摘んでいる指先に力を込めた。ぷちゅ、なんて気の抜けた音と共に押し出される柔らかいチョコレートの行先は、九条の、人差し指の爪。
「これでどうだ」
───すいと突き付けられる指先に、脳が何か言語を組み立てる前に噛み付いた。
塗られたのはほんの数センチ、ひと舐めで無くなるような量だったのに止まらなくて、すっかり九条の指を咥えこんで水掻きのところにまで舌を這わせる。
途端にずるり口内から指が抜け出て、擽ったさに正気を取り戻した。一瞬で理性吹っ飛んだ、大変マズイ。
「すまん、やり過ぎた。だがこれは貴様にも責任の一端があるよな突然あんな俺は猫ではないし貴様も行儀の悪いことをするんじゃないいい歳した大人だろうがしかし舐め回した件については悪かった早く手を洗えそしてそのチョコペンを大人しく寄越せと」
「五月蝿い」
「んぐっ」
動揺のままに口を滑らせていると、今度は九条の方から指を突っ込んでくる。黙らせるにしても物理的過ぎるだろ……
今度は何も付けていないようだが、舌にチョコレートが残っているせいかそれでも何だか甘くて頭がくらくらする。流石に止めさせようと手首を掴むが、さり、と極々軽く爪が舌を引っ掻く感触がして「ぉア゙ッ!?」と変な声が零れた。
しかも、うっかり歯を立てるのを避ける為に口を閉じられないのを良いことに、口腔内に侵入する指が増やされる。揃えられた人差し指と中指がぐっと舌を押し込んで、苦しさに蠢く様を楽しむようにそのままぐにぐに揉んだり左右から挟み込んでぎゅうと締め付け、舌が逃げれば仕置とばかりに2本が深くまで突き刺さり喉の手前を撫でるものだから、嘔吐きとスレスレの快楽が抵抗力を奪っていった。
ぼーっとし始めた頭にもいいようにされて癪な気持ちは浮かんでくる。ささやかな意趣返しに口をすぼめちゅう、とわざとらしく音を立てて吸い付いてやれば九条は一瞬眉根を寄せる、かと思えばツンとしたいつもの冷めた表情で俺の口を強引にこじ開けた。
「ンッ、ゥ゙」
此方から行動を起こすのは駄目らしい。察した俺はもう好きにすればいいさと半ば諦めの気持ちを込めて従順に口を開く。すると九条はぐるりと手首を返し、今度は舌ではなく上顎を擽ってくるものだから盛大に驚き肩が跳ねた。拍子に口にも力が入ってガリッ、と音がしたが、それに反応する隙もなく指先が何度もすりすりとそこを撫でいよいよ思考が霞みがかっていく。
「ぁ、あぇ、う」
キスしてもなかなか自分では動かない奴だから、普段は俺から九条と舌を絡め、歯列の境をなぞり、上顎を舌先でつついて、と好き勝手していたのだが、どうやらそれを再現しているらしい。舌と違って固いし、手荒れしているのか時折ざらつく感触がして少し痛いくらいなのだが、それすらも気持ちが良いと錯覚して背筋が震える。
「んむ、ぅ、ンン……ッ」
止めようと九条の手首を握っていた筈がもうちっとも力が入らず、いっそ支えに辛うじて立っているようなもの。何なら口もずっと馬鹿みたいに開きっぱなしで、口腔内の指が蠢く度飲み込めない唾液がぐちゅぐちゅと掻き回され、ぽたりぽたり顎から滴り落ちると同時に生理的な涙が頬を伝うのも混じって九条の手をしどとに濡らしている。キスどころかセックスまで何度もしてきたというのに、たったそれだけが妙に恥ずかしくて咄嗟に拭う為にコートのポケットからハンカチを出そうと手を離す。
ぐぢゅっ!
「ん゙うぅッ!?」
突如舌先を強く捻られて目の前にバチン!と閃光が走った。俺が意識を逸らしたのがいたく気に食わなかったらしい。
拍子に何とか耐えていた膝がついに折れて、へなへなと情けなく崩れ落ちてしまう。……やっべぇ、勃ったわこれ。
「おまえは」
漸く解放されたがずっと開けていた唇ははふはふと荒い息を零すばかりで閉じきれない。軽い酸欠で顔が熱い。涙と唾液でどろどろの顔面は気持ち悪いし、散々虐められた舌もじくじくと疼くようで、未だ思考が働かずただ見上げるしか出来ない俺の前に九条が膝をつき、ゆるりと目を撓ませる。
「猫というより、犬だからな。それもとびきりの駄犬だよ」
そう言って、わざとらしく、見せつけるようにふやけた指に舌を這わせて俺の唾液を丹念に舐め取りやがった。赤い舌、枷のような歯形がくっきり残っている、それと指先を繋ぐ銀糸は俺のものか九条のものか。えっろ……
「ッ……ぉ、れが、言うのも、ぁんだが……
性格わっっっる。
……どうやらこいつ、本当に珍しく機嫌が良い。何があったのかは知らんがわざわざ俺宛にチョコ(?)を用意した挙句こうして煽ってくるくらいには。してやられた感しかないのだが、役得というか大変眼福なのでそれはこの際いいとして。
「さて、おまえはこれからどうする?丁度食堂から行ってすぐのところに浴室があるんだが」
……貴様、珍しく部屋にいないと思ったら、最初からそのつもりだったのか……?」
「さてな」
じとりねめつける俺に対し小さく、ほんの僅かだけ口角を吊り上げて、九条がすっくり立ち上がる。ついでとばかりにぎち!と未だ痺れが残り仕舞えないままだった舌先を抓まれて治まりかけていた性欲にまた火が灯るのを感じた。
折角此方とて珍しく、世間の甘ったるい空気に辟易していた為バレンタインチョコを渡したらとっとと帰ってもいいかなという気分だったのに、とことん九条とは気が合わない。しかしその噛み合わなさが面白くて、だから俺は九条が大のお気に入りなのだ。
自分から煽ってきたクセにさっさと出口を超えて、方向的に自室へ戻っていく九条の背を見送りながら、俺は小さく「わん……♡」と呟いて、なかなか言うことを聞かず震える脚を叱咤しつつ何とか立ち上がる。ご主人サマに来いと言われたのだから、いつまでもお座りしていられないよな。



END.