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kokera14
2025-02-15 12:40:28
2062文字
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第2話・運命
命からがら逃げ出した少女と少年、森の中で一晩を明かす。
運命というのは、神によって定められるのだろうか、それとも世界が定めるのだろうか、あるいはこの星が定めたか
……
などと、途方も無いことに思考をめぐらせていた。
眠らずにいたため少し頭がぼんやりとしてきているのかもしれないが、どれにしろ、このような過酷な運命を大切な人に背負わせるなど、自分は許せない。目を赤く腫れさせ、近くに横たわり眠っている彼女が何をしたというんだ。
日が昇り始め、白樺の木々が生い茂った森を照らす。しかし霧が濃く、周囲を広く見渡すことはできない。まるで今の状況のようだとも思いつつ、昨夜の出来事を思い出す。
黒い竜、その吐く炎によって白亜の壁が黒く変わってしまう様、混乱に陥った街と人々、為す術もなく逃げた自分
……
。
自分がもっと強ければ、あの竜の軍勢へ飛び込んで行った他の騎士や兵士に遅れを取らなかった。騎士としての力を発揮させることが出来れば、王や王妃と戦うことだって
……
と、隣で動く気配を感じそちらへ目を向けた。
「ん
……
」
「姫様!お目覚めになりましたか
……
身体は痛むところはありませんか?」
無論、痛まないわけがないだろう。芝の上とはいえ、今まで上等なベッドで眠られてきた方だ、これでは硬すぎるというもの。案の定、身体のあちこちをさすっていたが笑って、大丈夫ですわ、と答えた。
「カイルス、わたくし達はこれからどうなるのかしら」
顔を俯かせ、ぽそりと小さくつぶやく姿はあまりに弱々しく、その不安さがひしひしと伝わってきた。帰る場所を無くし、家族とも別れ一人、否、一人ではない。
「姫様!自分がそばに居ます、きっと何とかなります!」
根拠の無い言葉。でも、このまま何も言わずにはいられなかったのだ、少しでも彼女を安心させることが出来るなら。
確かこの森を抜けたら小さな街があったはず、そこには冒険者ギルドがあり、保護を求めれば何かしら対応を
……
しかし、昨晩あったことをそのまま話したところで信じてくれるだろうか?子供の世迷言、イタズラだと片付けられてしまえば頼る術は無くなってしまう、どうしたら
……
。
「カイルス、カイルス!」
その呼び声にハッとし、周囲から唸り声が聞こえてくることに気づいた時にはもう既に遅かった。深く考え事をして周りが見えなくなるのは悪い癖だ、なんて言っている場合じゃない。剣を抜き唸り声の主、飢えた狼へと向ける。正面に2体、ヨダレを垂らし、今にも飛びかかろうと足踏みをしている。
この森の名は『空腹の森(ハンガー・ヴァルド)』辺りに食物となるような果実や木の実が少なく、動物や魔物が常に空腹でいることに由来する。
飢えた魔物が上等な生き餌を前に耐える理由も無く
……
「バウッ!」
こちらが剣を向けていようがお構い無しに飛びかかる。赤く濡れた口腔を脇へいなし、凶刃の如く切り裂かんとする爪を剣で受け止めた。魔物との戦闘も経験が無いわけでは無い、対応の仕方も団長や他の騎士達から教わった。あとはそれがどれだけ実践で生かせるかどうか、それで本当に守るべきものを守れるかが大事だとも散々言われた。
痩せこけた体躯を押し返し頭の中で何度も何度も、かつて言われた言葉の数々を反芻する。そうだ、大丈夫。自分にならやれる、姫様を守るんだ。
だが、自分は自分が思う以上に、分かっていなかった。神が、世界が、星が、生易しいものでは無いということを。
自分が相手しきれなかった1体が横をすり抜ける。それの目標は、佇む彼女。
「姫様!!」
叫んでも、もう間に合わない。その狂牙は姫様の喉元へ
……
「えっ
……
?」
届くことは無かった。気の抜けた小さな声に、間髪入れず狼のけたたましい悲鳴。その身体には銀に光る槍が深々と刺さり、間もなく絶命した。
何が起きたのか全く理解出来ずにいると、姫様より背後から足音が近づいてきた。霧の中より現れし、煤に汚れた外套を纏った人物は異様な雰囲気を放ち、言葉を発しない様子がさらにそれを増しているようだった。
と、不意にこちらへ指をさされハッとした。そうだ、まだ魔物が残って
……
「なっ
……
」
言葉が詰まるのも、無理が無いはずだ。つい先程まで死闘していた狼達が動きを止めていたのだ。否、止められていたという方が正しいだろうか。
朝日に反射してキラキラと光るものが巻きついているのが見えた。それは形状からして『糸』なのだろうが、何故魔物の動きを止められているのだろうか。
その答えを言うように、静かな声が響く。
「『水の糸(ガル・ラゼ)』」
其の瞬間、キリキリと糸がさらに張り、魔物を締め上げていく。聞こえた声はとても低く、男であることは明らかだ。男は、最初の1体から槍を引き抜きゆっくりと近づく。そして躊躇いもせず、切り裂いた。
「ギャンッ!」
森に再び狼の悲鳴が上がり、後に静寂が訪れた。
この時、自分はこの出会いが運命であるとは、知りえなかったのだ。
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