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たかせ
2025-02-15 01:36:53
2676文字
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ロウリン小話
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現パロ バレンタイン小説(ロウリン)
漫画が間に合わなかったので、去年くるっぷにあげていた小話を。
初めて書いた現パロ。ちょうど学園衣装描いてた頃に書いてました。
リンウェル中2。ロウ高1設定(年齢そのまま)。付き合ってません。
中二の冬。
底冷えのする自宅近くの公園で落ち合った彼は、制服姿のまま勝ち誇ったようにふんぞり返っていた。
「見ろよ!今年は3個ももらったんだぜ」
白い息を吐きながら得意げに笑った彼の手を覗き込むと、小さなチョコレートの包みが3つ転がっていた。
四角いもの、丸いもの、キャンディーのような包み紙にくるまれたもの。
どれもリンウェルにも見覚えのある大袋で売られているチョコレート菓子だ。
ぐるぐるに巻きつけたマフラーに鼻先までうずめて、リンウェルはふうんと気のない返事を返した。
「じゃあ、私のは要らないね」
「へ!?」
「だって3つももらったんでしょ?十分じゃん」
「ちょ、ちょっと待て!それとこれとは別っつーか
……
!」
チラリと上目づかいに見上げれば、焦ったようにロウが叫ぶ。
毎年2月14日には、こうして公園で落ち合うのがいつの間にか当たり前になっていた。
確か小学生にあがった年の冬が始まりだったように思う。
“仲のいい人にチョコレートをあげる”ということが、何だかとても特別なことのように思えて。よく遊びに誘ってくれるロウのことは純粋に好きだったから、ありがとうの気持ちで渡したのだ。
それが思いのほか喜んでもらえて、それが幼心にも強く記憶に残って
――
それから何となく、だらだらと、もう7年もこうして続いている。
「別って何が?」
マフラーに口を隠したまま尋ねると、ロウがう、とわかりやすく言葉に詰まった。我ながらかわいくない返しだと思う。
恐らくロウに他意はないのだろう。純粋に、ただもらえた事実が嬉しかっただけで。
(去年までは1つももらえないってしょげてたもんね)
「すごいじゃん」って一緒に喜んであげればよかったのかもしれない。
――
でも。でも。
心の中でむくれる自分を押さえつけるように、リンウェルはカバンを持つ手に力を込めた。中に忍ばせてきたチョコレートはもちろん、今年もロウに渡すつもりで用意してきたものだ。
今日ここで落ち合う意味は、ロウだってわかっているはずなのに。
――
開口一番それは、あんまりにもデリカシーがないじゃないか。
カバンを固く握りしめたままマフラーの中で口をへの字に曲げて、リンウェルは足元に視線を落とした。もうこのまま帰ってしまおうか。私からのチョコレートがなくたって、幸せそうですし。
「お、お前のは」
と、うなっていたロウが沈黙を破って口を開いた。
「特別っていうか
……
!」
「
……
特別?」
その言葉に思わず顔を上げれば、予想外に真剣な眼差しでこちらを見つめていたロウと視線がかち合った。
「だってお前、毎年手作りしてくれてんだろ?」
「
……
それは
……
そう、だけど」
改めて言われると何だかむずがゆい。それでも視線を逸らせなくて、リンウェルはぎこちなく頷いた。
「お菓子つくるの、嫌いじゃないし」
「最初にくれたやつ、俺あんなの見たことなかったからすっげー覚えてるんだよ。ほら、板チョコに星とかの飾りがのってたやつ」
「ああ
……
うん」
「そんで次は、何かカリカリしたのが入ってた」
「フレークね」
「その次がハート型だったな。びっくりしてちょっとテンション上がった」
「! あ、あれは、別に意味はなくて!あの時はただ形がかわいいって思ったの!」
「それからケーキみたいなのもあったし、何か粉かかったやつもあったよな」
あれ美味かったんだよな、と視線の先で懐かしそうに続けるロウに、リンウェルの頬にじわりと熱が集まり始める。
(まさか
――
全部覚えてるの?)
恐らくロウは名前も知らないだろうチョコレート菓子の遍歴を。
「
――
お前が作ってくれたって知ってすげえ嬉しくてさ。毎年楽しみにしてたんだ」
そこまで言って一息。ロウは吐き出された白い息の向こうでいつものようにがしがしと頭をかいた。
「あー
……
だから、その」
「今年も俺にくれませんか!」
恥ずかしさゆえか、寒さゆえか。頬を赤らめて真っ直ぐにそう言ってきたロウを、リンウェルはまじまじと見返した。さすがにこれは初めての経験だ。
まさかおねだりされるなんて。
「
……
何それ」
ぷ、と思わず吹き出して、リンウェルは眉尻を下げた。マフラーの中で吐き出した自分の息が熱い。
(
――
現金だな、私)
『特別』
ロウが口にしたその一言で、いつの間にかむくれていた自分は機嫌を直してしまったのだから。
「自分からそんなこと言う人いる?」
「しょ、しょうがねえだろ!お前くれねえとか言うし」
呆れたような顔をつくって言えば、ロウはさらに顔を赤くして口をへの字に曲げた。だがその顔が何を思ったか、次の瞬間はっとしたように青ざめる。
「ひょっとしてマジで今年はないとか
……
!?」
「それならわざわざここに来ないでしょ」
言いながらリンウェルはカバンのファスナーに手をかけて笑った。
「はい」
手にした箱はシンプルな黒い箱。
中には去年よりちょっと頑張ってチャレンジしたトリュフチョコレートが入っている。上手に丸められなくて形は少しいびつになってしまったけど、味は母にも太鼓判を押してもらった。悪くないはずだ。
「おお
……
サンキュ」
あんなに騒いだのに、チョコレートを受け取ったロウはまじまじとそれを眺めるだけでやけに静かだった。
「
――
毎年もらえる、なんて思ってちゃ駄目なんだよな」
「え?」
「あ、いや、こっちの話」
「?」
「なあ、開けていいか」
「
……
いいよ」
予想通りの言葉に、リンウェルもいつものように頷く。毎年ロウは渡したその場で必ず1つ食べるのだ。
かさりと軽い音を立てて薄紙の包みが開き、中から小さな丸いチョコレートが顔をのぞかせる。
悪くないはず、と自分では思っていても、毎年この瞬間は緊張した。
思わず伺うようにちらりとロウの顔を見る。
「すげえ」
視線の先で彼が思わず、というように呟いたその表情を目にした瞬間、リンウェルは自分の胸にこみあげる色々なものを飲み込んだ。
結局のところ、そうなのだ。
この顔が見たくて、毎年チョコレートを手に取ってしまうのは自分なのだから。
「何か店で売ってるやつみてえ」
言いすぎだよ、とそれでも嬉しそうに笑うリンウェルの目の前で、真ん中のひとつをつまんで目の前にかざした後、ロウはいっただきまーすと勢いよく口の中に放り込んだ。
「うま!」
寒空の下、鼻の頭を赤くして嬉しそうに笑うその顔は、最初の冬に見たあの笑顔と同じようにリンウェルをじんわりと温めてくれた。
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