spicy2drop
2025-02-14 20:44:05
2658文字
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【遊戯王VRAINS二次創作】贈り物にはAiを込めて

・遊戯王VRAINS二次創作
・本編後ですがネタバレ要素は薄め
・女体化アバター登場。遊Ai風味?

人間ってのはイベントごとが好きだ。
とりわけバレンタインなんて菓子のひとつが貰える貰えないで大騒ぎして。
それで他人からの好意を測ろうだなんて、滑稽にも程があるよな。
……って。
今俺は遊作に渡すガトーショコラの材料を探してスーパーにいるわけだが。
(先月より製菓用品高くね? はーん、こりゃ値上げもだけど、売れる時期だからちょーっと上乗せしてんな?)
それくらいで揺らぐ俺の想いと懐ではないので渋々と買いはするが……ほんっと、人間ってのはバレンタインが好きすぎるだろ!

菓子作りなんて初めてだが、スーパーウルトラハイパー優秀なこのAi様の手にかかればそつなくこなせるってもんよ!
……ま、ちょっとばかしパティシエマシンのデータにアクセスしてコツとか伝授させてもらったけどな。
ともかく、俺の作ったガトーショコラははじめてなりにちゃーんと綺麗に完成した。見た目は。だって俺、試食なんてできないんだもん!
でも、レシピ通りに作ったし、遊作が腹壊したりしないように適度に焼き上げて、見た目はちゃんとしてるんだから、きっとうまい……はずだ!
などとやっている俺の姿が食器棚に映り込み、ふと考える。今の姿は男性を模したソルティス体……もしかして、やっぱり遊作も女の子にチョコもらっちゃったり、もらいたかったりするわけ?
遊作にチョコを贈りそうな女子……財前葵……は、ないな。あいつ学校で目立つことはしないだろ。んじゃクラスメイトの女子とか。遊作、黙ってりゃ顔はいいし……
てか、バレンタインに女から男にチョコを贈るなんてこの国のオリジナルイベントだしぃ? それに最近じゃ友愛の証だったり、自分へのご褒美だったりするしぃ?
でもでも、もし遊作自身が女の子からチョコ貰いたかったらどうよ?!
まさかこんな平和な日常を送ることになるなんて想定したこともなかったから、そういう限定的すぎる感情のデータは俺もさすがに持っていない。
かくなる上は……

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「ただいま」
遊作が帰宅すればいつもならAiが返事するなりすっ飛んでくるなりするのに、今日は妙に静かだ。
「Ai、いないのか?」
自身の部屋に入ると、過剰なほど装飾された置き手紙が目を引いた。
『遊作へ 帰ってきたらログインルームへGO!』
今度は何を思いついたのやら……呆れながら、遊作は置き手紙に従いログインルームへと向かう。
「イントゥザ……
と言いかけたところで意識が引っ張られるような感覚。
(強制ログイン、か……)
遊作は感覚に委ねて意識を手放した。
次の瞬間、ぱちり、と目を開くと白い空間に立っている。
アバターはプレイメーカーではなく、現実の遊作を模した姿だ。
そして目の前には……『Aiちゃんのおへや♡』というプレートのついた扉がひとつ。
遊作は黙ってノブを回した。

室内は赤、白、ピンクに紫のハートやドットやストライプで賑やかに彩られたファンシーな空間だった。
その中央にはこちらに背を向けた黒いマントの人影が……
「Ai、今回は一体……
と遊作が声をかけると人影はこちらを振り返る。
Aiによく似てはいるが、ふっくらとした丸みを帯びた輪郭、艶やかな唇、細い首……さらにはマントで見えなかった体は胸元が緩やかに膨らみ、ズボンではなくミニスカートから覗く足はガーターベルト付きのストッキングを纏っている。
Aiに似た女性は猫のような大きな金色の瞳にいたずらっぽく笑みを浮かべ、
「遊作くんっ! これ、受け取ってください!」
と、そう言って手に持っていた箱を差し出してくる。
「Ai、なんだよな?」
遊作の反応は淡々としていた。
……あーん! せっかく気合い入れてセッティングしたのにその反応! ノリが悪いなー!」
女性……の姿をとったAiは子供っぽく唇を尖らせる。
「それで、これはなんなんだ?」
「なにって……遊作、今日が何の日か知ってる?」
「2/14……いや、なんかあったか?」
人間ってのはイベントごとが好きだ。
だがそれは遊作にも適用されるものではないというのはAiの誤算だった。
「マジか……
がっくりと肩を落とすAi。
「よく、わからないが……
遊作はAiのそばに歩み寄り、その細い肩に手を伸ばし、差し出された箱を受け取りながら声をかける。
「お前が俺のためになにかしようとしてくれたのはわかった。その……ありがとう、Ai」
「あっ、やっ、その……これはっ! ダミーだから受け取らなくてもっていうか! ちゃんと実物用意してるからっ!」
鈍いくせに優しさだけは本物の遊作の言葉にAiは恥ずかしくなり、あわあわと照れ隠しするような反応をしてしまう。
「そうなのか? じゃあログアウトしたら改めてちゃんと受け取らせてもらう。それと……その姿も、わりと似合ってると思うぞ?」
そう言い残してログアウトする遊作。残されたAiは予想外の言葉にきょとんと目を丸くしていた。

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「で、これが俺から遊作へのプレゼント!」
ログアウトした俺は遊作の部屋で改めてガトーショコラを渡す。
「お前が作ったのか?」
もっちろん! と俺は胸を張ってみせる。趣旨は伝わってなくたってそこに込めた思いはホンモノだ。
「いただきます……ん、うまい」
遊作が喜んでくれるなら、なんでもいいか。
「バレンタインなんて俺には縁のないイベントだと思ってたが、俺を思ってくれる気持ちが詰まっているなら悪いものじゃないな」
んん? 今、なんて?!
「はっ、えっ、わかってんじゃんか? バレンタインってこと!」
「ああ、もしかして女の姿をしてたのはそのための演出だったのか? 別に気持ちの籠った贈り物なら女から男に渡さなきゃならないわけでもないだろ。お前がわざわざああいうことをする意図がわからなかっただけだ」
遊作ってば鈍いんだか、鋭いんだかわからねぇ! でもそんなとこも含めて、俺はこの相棒のことを愛している。
「で、遅くなったがこれは俺からお前への贈り物だ」
遊作に手渡された紙袋から出てきたのはシュシュやヘアゴムの詰め合わせだった。
「お前は食事はしないからなにを贈るべきか悩んだんだが……これでよかっただろうか?」
あーもう! 遊作ってさ、ほんっとずるいよ!

人間ってのはイベントごとが好きだ。
そんで俺も、バレンタインってやつはちょっと好きになったかもしれないって。
ガトーショコラを頬張る照れくさそうな相棒の横顔を見て俺はそう思った。