もろ餅
2025-02-13 00:06:38
1816文字
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絵の続き小説

姫川さんがもうずっと頭悪い(ごめんなさい)


「も゙ー!いつまでそうしてんすかぁー!」
「やだ落とさない。絶対にやだ」

 姫川さんの頬にデカデカと存在を主張する「メルト」の3文字。この3文字を巡って、痴話喧嘩というより菓子コーナーで駄々をこねる子供と母親のような光景が目の前で繰り広げられる。20の大人が16の相手に嫌々とぐずる光景がだいぶ、いやかなり見苦しい。何を見せられているんだという気持ちと、アレが血縁関係上異母兄弟にあたる事実を受け入れたくない気持ちで居た堪れない。

「このまま刺青するから。消すのはその後」
「月9俳優が何言ってんだこのバカ!」

 メルトの敬語が外れた。照れと怒りが同時に来て訳分からなくなっているんだろう。顔を赤くさせ、後ろで困り果てているメイクさんと目が合う度にごめんなさいと頭を下げている。

「なんでそこまで執着すんだよ!」
「メルトのって印、嬉しくて」
「んぐぅ……ッ」

 おい負けるなよ。

「あ、マスクして帰ればいいじゃん」
もうそれでいいか風呂で落とすんだよな?」
「えっ落とさねぇけど」
「なんっなんでだよ!!!」

 今日一の声でメルトが叫ぶ。
 わなわなと震える背中を憐れみつつ、巻き込まれたくないので部屋の隅に身を潜めた。

………る、から」
「え?」
…………一緒に風呂入るから
「なっ!」

 本当に何を見せられているんだ。
 友人と兄が一緒に湯船に浸かる光景が脳裏に映し出され頭を抱えた。とばっちりがすぎる。一番の被害者だろこれ。

「ふ、風呂は一緒に入る
「じゃあ、」
「でも顔は洗わない」

 折れねぇのかよ。いや半分は折れたのか?

……もういいです」
「!やっと分かって、」
「言うこと聞かない大輝さんなんて、もう知りません」

 メルトにとっては最終手段なのかもしれないが、傍から見れば子供を叱る母親の常套句すぎてなにも響かない。が、ただ一人、姫川さんだけは焦り散らかしている。「メルトぉ」と呼ぶ声がそれはもう情けない。冷や汗だらだらの表情もみっともない。メルト関係のことになると本当に色んな表情する。こんな姫川大輝がいるなんて世界に知れたら大騒ぎだ。俺だって知りたくなかった。

「メルト、メルトごめん俺、」
「誰ですか。ほっぺにデカい文字書かれた人なんて俺知りません」

 宥めようと伸ばされた姫川さんの手を、メルトが音を立てて叩き落とした。酷く傷付いた顔の姫川さんを他所に、メルトはそのままドアに向かって大股で歩き、ドアを開けてはバタンと激しく閉めて出ていった。

「っ、メルト!」

 その後ろを姫川さんが切羽詰まったように追いかける。なんだこれ。帰っていいか?







 荷物をまとめて廊下を歩いていると、何やら人影が見えた。嫌な予感がする。この建物そっちからしか出られないんだよ。頼むからカメラマンとかスタッフとか、

「離して
「ごめん、できない」

 願いは届かず、嫌な予想的中。
 両腕を壁に押さえつけられたメルトと、股の間にも足を入れ完全に逃げ道を塞いでいる姫川さん。もう親子喧嘩の域ではないな、なんて、どうでもいいことに頭を使い深く考えないようにする。

俺らは俳優でさ、交際宣言も出来なきゃ、結婚式も叶わない」
……
「だからどんな形であれ、メルトのって実感できるこの印が、どうしようもなく嬉しかったんだ」
「大輝さん……

 良い感じな雰囲気を醸し出しているが、左頬のバカデカメルトの文字が全てをぶち壊している。

おれも、」
「うん」
「お揃いの物とか、欲しいです。いつもそれ見て、俺は大輝さんのだって、思いたい」
うん」
「印もさ、見えない所なら胸元とか、太ももとかさ。そこに、そのキスマでも付けりゃいいじゃん
「そう、だな」
「俺も本当は俺も、付けたかった」
……
「ダメ?」
「待って可愛い好きエロい好き無理だ耐えられない」

 台無しだな。途中までの甘酸っぱい雰囲気が全部台無しになったな。

「最初のお揃いは指輪にしよう」

 初っ端から重すぎるだろ。

「キスマは今付けてほしいくらいだ」

 メルトの言った部位ちゃんと聞いてたのか?聞いてその発言ならアンタ今この場で脱ぐってことになるが。

「んっ、
「俺もメルトのここに歯型を、」


「もう通してくれませんか」