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望月 鏡翠
2025-02-12 22:48:54
879文字
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日課
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#1625 「無人島」「隠れる」「鐘」
#毎日最低800文字のSSを書く/三題噺
最初はさしたる罪ではなかった。しかし、それを受け止めて償うほどに男は強くなかった。罪を否定して追っ手を排除して、どこまでも遠くに逃げた。悪いのは男ではなく、周りであると思い込んだ。
それを否定してくれる人間は、逃亡中の男の周りにはいなかったため、思考の隘路に迷い込んでもう戻る道も残っていなかった。
逃亡生活の最中で、罪は雪だるま式に増えていった。それに相応しい罰はもうこの世には存在しない。一生をかけても償うことはできず、斬首しか残されていない程度には、男の両手は汚れていた。
この程度のことから逃れるために、人を切ったのか。世俗の人はそう思っただろう。それよりは数年で罪を償ってできてきた方がマシであるはずだ、と。
しかし罪の大小は問題ではない。自らが罪人であることを認めることが、男にとっては恐ろしかったのだ。姿の見えない巨大な何かから逃げ出すように、自分の犯した過ちから逃げ続けた。
山を越え、海を越え、人が来ないところへ。
そうして男がたどり着いたのは、海を越えた先にある辺鄙な島であった。そこであれば追っ手は来なかった。周りは登ろうとすれば崩れるような急峻な崖で、上り切っても草と山羊しかないような、辺鄙な土地だった。
そこに隠れ潜むことで、男はようやく平穏を手に入れた。
隣の島から聞こえてくる時鐘を頼りに、過ぎた時間を記録した。
男は知らなかったが、追ってくるものがいないのも道理である。そこは流刑地で、男が隠れるのは、その中でも上陸できないと価値もなく見捨てられた無人島だったのだ。
罪人は、罪から逃げ続けた結果、自らを罪人がいるべき場所に追い込んでしまったのだ。しかし、全てから逃げ続けた男は、そんなことは知る由もない。
山羊と草しかなかったが、山羊と草があったので乳を飲み肉を食い命を繋いでいた。しかしそれだけでは生きながらえることはできず、数年ののち人しれず命を落とした。
なにぶん人が入らない島でひっそりと死んでしまったが故に、男は行方しれずのまま、今でも記録の中でだけ罪人として名前が残っている。
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