三毛田
2025-02-12 22:21:44
1085文字
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01 01. 手に触れたい欲望

1日目
実はどうやらお互い様

 暗く冷たく、寒いあの場所。羅浮の外に出てからは、あまり思い出すことはなく。
 外界は、様々なものが知的好奇心を刺激して。
 それなりに楽しいと。だが、それを壊すように執拗に俺を追いかけてくる男が一人。
 彼から逃げながら出会ったのが、星穹列車。そこに乗るナナシビトたち。
 優しくも厳しいナビゲーター。
 大人の余裕を見せつつ、好奇心を隠さない人。
 記憶を失いつつも、毎日楽しく生きる少女。
 頼れる我らが車掌。
 そして。
「丹恒。その……手に、触れたい。いいかな?」
 俺と三月が宇宙ステーションで目覚めさせ――この表現が正しいのか、今でもよくわからない――、行動を共にするようになった星核をその体に宿した青年。
 彼は好奇心旺盛なところもありつつ、何処か妖しさもあり。
 今だって、おねだりしてくるのに絶妙な体勢で。
「なぜ?」
 だけど、それで簡単に絆されるほど、関係性は深くないためか、俺の口から出たのはそんな言葉。
「み、みんなと握手してきて、た、丹恒とだけしてないからっ」
 もっと、上手い言い訳はなったのだろうか。
 それを口にするのは無粋だろうと、納得したように見せかけて差し出された手に自分の手を重ねる。
「ありがとう!」
「どういたしまして」
 今はまだ、これでいい。うん。
 という声は、聞いていないフリをしておく。
……
 あの言葉は、しばらくしてから理解できるようになった。
 彼を好きになってしまったから。
 相手に触れたいという欲が、日に日に膨れ上がって止められない。
 誰かが彼に触れると、俺だって。と、醜い欲が表に出そうになって。
「丹恒、大丈夫か?」
「酷い顔をしていたか」
「ううん。なんか思い詰めてるような気がしたから、大丈夫かなって」
 俺よりも温かな手が、背中を撫でる。
「穹」
「ん?」
「その手で、頬を撫でてくれ」
「ぇ。い、いいの?」
「頼む」
「じゃあ、失礼します」
 背中を撫でていた手で、そっと頬に触れてきて。
 ああ。
 彼の温もりが心地よい。
 そっとその手に自分の手を重ね。
 目の前の彼の肩が、大袈裟なくらい跳ねる。
「お前の手は、心地よいな」
 目を閉じて、その温もりを堪能し。
「穹?」
 触れていた手が細かく震えているような気がして、目を開いて穹を見ると。
 真っ赤な顔をして俯いていた。
「丹恒、ズルい」
「ズルいって……
「俺の気持なんか知らないくせに、そういう顔するのって、ズルいって」
「どういう顔だ」
 こちらは見えないからわからないのに、そんなことを言われたって困るが。