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しらかば
2025-02-12 12:11:55
3467文字
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その正義に甘味を添えて
水無月舜、鷺内和希。過去話。割とほのぼの日常パートからのオチがダークかも?
【参考程度に補足】
水無月舜と望月大和は過去に警察官として先輩後輩だった。
その時に大和が保護した子供が鷺内和希。
そんな、舜と和希の過去の話。
ーーー
「和希はさ、強くなるよ。その力で人を守れるよ」
あの言葉が俺にとっては救いだった。
あの言葉をまさか俺が破る事になるとはな?
泡沫夢幻
追想「水無月舜・鷺内和希」
【その正義に甘味を添えて】
「この辺で休憩しようか、和希」
先輩ーー望月大和に彼の義理の息子ーー鷺内和希の能力の手ほどきを頼まれた。
水無月舜は少年を見て小さく息を吐く。確か今年中学校に上がるとかだったか。
和希と呼ばれるこの少年は確かあの優しすぎる先輩が魔物に襲われ生き残った子供を保護したとかなんとかだったか。
普段は孤児を施設に送る処理を施すところを、どうしてこの少年のみ思わず引き取ったのか。聞いたところによると、彼の亡き肉親の親戚には少年のことで酷く罵声を浴びせられたとも聴く。能力者批判派だった彼の肉親は彼が能力者であると告げず、皮肉にも魔物に襲われた際に彼を救ったのは己すら知らないその能力だったとか。故に、親戚は能力者であり一人生き残った少年の存在を悪魔だなどと受け入れなかっただとか。
どうしてこんな危険な少年を保護したのか。それも彼の正義感故にだろうか。仮にそうだとすれば、なんともあの先輩らしい理由だ。
何度か警察署にも先輩は彼を連れてきていたので和希の事は知っていた。最初こそ誰とも話さず俯いていた少年は、年月を重ね次第に口数が増え、笑う回数が増えていく。きっとそれは義理の父親のおかげで、きっと彼の人生にとってはこれで良かったのだろうと安堵したのを覚えている。
「お前は本当に凄いな、覚えが早すぎるよ。このまま扱いだけじゃなく護身術まで教えた方がいい気がしてきたよ」
この少年は本当に才ある存在だ。
科学者だった親譲りの知識の昇華速度。
その小さな身に余る能力は、雷。
なるほどこれが暴発して生き残ったのかと理解したのは、その大きすぎる力を目にしたときだった。
「後はある程度、日常に支障のないくらいに制御出来るようになれば俺の役目はそこで終わりかな?
……
あ、そうだ」
舜はビニール袋からマシュマロを取り出し、串に刺した。今朝思いつき、コンビニで買ってきたものだ。
「和希、これ持ってろ」
そして隣に座るよう促し、それを手渡すと彼は両手でマシュマロを付き出すように持っていた。
そして舜は人差し指をマシュマロの近くへと持っていくと篝火はそれを焦がし、甘い匂いを漂わせる。
「す、すげぇ
……
!」
年相応の少年のようにきらきらとした瞳を向ける和希が可愛らしく、思わず笑ってしまう。
「熱いから火傷には気をつけろよ」
「食べていいの?」
「ああ、疲れた時には糖分が必要だろう?」
和希はいただきます、と小さく呟くとマシュマロを齧る。美味しいのだろうか、満面の笑みで食べる彼が愛おしい。親とはこういう気持ちなのだろう。
これなら焼きマシュマロをおやつに渡せる。能力の扱いの件としてもいい実践になるかもしれない。我ながらいいことを思いついたものだなと舜は誇らしくなった。
「これ、俺にも出来る?」
「どうかな?雷なら出力調整が出来れば可能だろうが
……
」
「じゃあ練習したら出来るよね!」
和希は跳ねるように立ち上がり、舜の方を向くとまた笑う。
「練習しよう、舜さん!俺もやりたい!」
本当に子供の体力と言うものは無尽蔵だ。
「
……
じゃあ、やってみるか?やはり実践してみなければなにも分からないからな。何事も実践だよ」
「うん!」
やれやれ、休憩はもう終わりかとため息を一つつくと舜は同じように串に刺したマシュマロを2つ持ち、その一つを和希に手渡すと自らの握る串の横で人差し指を付き出す。
「こう、指先に己の能力を集める感じのイメージで。強すぎると焦げて食えなくなるから、力加減は抑えて
……
っと」
小さな炎はライターのように溢れ、それをマシュマロに軽く当てる。すぐに甘い香りは漂う。
「こんな感じだな。まあ、雷と炎では出力の加減が違うかもしれないが
……
」
一口。確かに美味しい。
「えーっと
……
指先に俺の能力を集めて
……
」
見様見真似で和希は左手に串を持ち、右手の人差し指に集中するようにきつく目を閉じる。
バチバチ、と音をたてる稲光は人差し指から手のひら全てを覆う。
「強すぎるな、それだと黒焦げだぞ」
「えっ」
「もっと力を抜いて、それから深呼吸を」
「力を抜いて
……
深呼吸
……
」
小さな稲妻は少年の人差し指に乗るようパチパチと音を立てた。
「よし!これでーー」
和希はマシュマロにその指を滑らせるとそれは一瞬にして溶けた。
「あ、あれ?」
「力を一つに集めるのは上手かったな。ただその出力が強すぎるんだ」
「う、うーん
……
」
悔しいのだろう。彼は無言で何度も自らの指に雷を集める。こう見えて負けず嫌いな所は、義理の父親譲りかもしれない。
「ははは、まあそれが出来るようになれば能力の制御は今よりずっと簡単に出来るようになるよ。練習するといい」
なんだか宿題みたいだな、と思うと少しだけ笑いがこみ上げ、思わず笑った。
「はい!師匠!」
「
……
は?師匠?」
「うん、だって舜さんは俺に教えてくれるじゃん。だから師匠」
にっこりと笑い、嘘偽のないその純粋な瞳は舜を射抜く。
「舜さんって、父さんと一緒に人を守ってるんだよね?舜さんは強くて、弱い人を守ってるって父さんが言ってたんだ」
「
……
望月さんが?」
それは初耳である。
突然「和希に能力の扱いを教えて欲しい」と頼まれたくらいで、そんな自らを褒める言葉など聞いたことはない。あの不器用な人が面と向かい人を褒めるとも思えないが。
「いいな、俺も父さんや舜さんみたいに強くなりたいな」
その言葉は少年の言葉にしてはどこか重く聞こえ、思わず目を見開いた。
「
……
俺もこの力で父さんを守りたいな。もう、一人になるのは嫌だよ」
己の手のひらを見つめ、和希は呟いた。
少年の身体にはあまりに抱えるものが大きすぎて、父親がいなければ壊れていたのかもしれない。彼も一人の人間で、これは先輩が救った結果なのかもしれない。
ただ一人、慕う父親の為に強くなりたいという少年に、何を言えばいいのか。舜は思わず口を開く。
「
……
和希はさ、強くなるよ。その力で人を守れるよ」
だから、咄嗟に思った言葉を本心として伝えた。
きっと彼がいればこの世は安泰だろう。
「本当に?」
「ああ、その能力をもっと扱えるようになれば敵なんていないんじゃないか?それがいつになるのかは分からないが、お前ならきっと大丈夫だな」
お前みたいな人間は望月さんだけじゃない、沢山の人を守るんだろうな。
そんな言葉の代わりに、この少年にもっと何かを教えられないか。まともな体術を護身術しか知らない自分が、自分なりにもっとこの能力と向き合う方法を教えられないか。いや、いっそのこと護身術を教えてしまうべきか。しかし怪我をさせれば彼の父親に何を言われるか分からない。どうしたものか。
そんなことを考えている自分がとても暖かく感じた。
「
……
この国はきっと、平和になるな」
お前みたいな少年がいるならきっと、俺達が正義を果たした先にあるこの国は幸せなのだろう。もう、魔物なんていないのだから。平和はもう少しでやって来るだろうから。
自分ももっと頑張らねばならない、舜は少年の頭を撫でた。
「さあ、続きをやるぞ」
「うん!」
現実とは残酷で。
堕ちたものは戻らない。
壊れたものは戻らない。
一度腐りきってしまったこの国を
……
穢れてしまったこの国を正すには、誰かが一度壊す他無かろう。
壊して、新しく作り直す。それが正義の為で、堕ちた人間は裁かねばならない。
それが例え
……
かつての憧れであろうとも。
ああ、貴方には失望したよ。
貴方までこの穢れた国の歯車となろうとは。
「
……
久しぶりだな、和希」
業火の中、己が視線の先には雷を纏う青年。
己の腕の中にある傷だらけの父親に視線を映したのを確認し、妖しく笑う。
「どうした?俺を殺すんだろう?」
ああ、やっと
……
お前達を壊し、正義を果たせるよ。
俺は正義を全うする者。
ここから始まるのはーー粛清。
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