還るべきところへ還りたいのに力は止まらない。
とうの昔に止まったはずの心臓がミシリと軋む。
最善を選びたいのにその方法がひとつも浮かばない。
痛々しいほどの絶叫も泡となるばかりで声にはならなかった。
鎖の音が止まない。
私が錨なんだ。
クルーも、宝も、私自身をもここに縛り付けている。
....全て、ここに閉じ込めて時を止めてしまった。
全て。
全て?
錨があるのなら船はどこだ。
私の船はどこにある。
暗い海の底から遠い夜空を見上げる。
届くはずだ。だって私はあの船のキャプテンなのだから。
「錨をあげろ!!!!!!ロイヤルフォーチュン!!!!!!」
声は泡にならずに確かに海に響いた。
鎖の擦れる音が止んだ。
はっと息を飲んだ。
錨が上がる。
ガラガラガラと大きな音が響く。体が引き上げられていくのが分かる。
....自分の体が軽くなっていくのに気づく。体からこぼれ落ちていく略奪した宝たち。指先から全身へどんどん力が抜けていく。
首に妙な痛みが走るのが分かった。
「...ああ、やっとだ。...やっと!!」
海面に引き上げられる。そこには眩いばかりの夜空を背負った愛しい自分の船があった。
「待たせてしまってすまない!さあ、出航しようか!」
遠くでクルーたちがはしゃぐ声がした。
すっかり身軽になった姿で船へと乗り込み、ふらふらと力の入らない体を気合いで立たせた。
首からは空気の漏れる音がする。
震える手で舵を取る。
これは悲しいことではない。
別れの旅ではない。
私はきっと天国へはいけないだろう。
ならばこの愛する船とここまで着いてきてしまったクルーたちごと地獄へ乗り込む。
そこでまた暴れてやろうじゃないか。
それが私達らしい物語だろうから。
完
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