もちこ
2025-02-12 11:32:34
768文字
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終わらない夢を、まだ。 後編

海の怪異になったバソパロ。自分が怪異になっていることを自覚したものの解放される方法が分からないバソ。死後のネタになります。注意。一応明るいエンドです。

還るべきところへ還りたいのに力は止まらない。

とうの昔に止まったはずの心臓がミシリと軋む。

最善を選びたいのにその方法がひとつも浮かばない。

痛々しいほどの絶叫も泡となるばかりで声にはならなかった。



鎖の音が止まない。
私が錨なんだ。
クルーも、宝も、私自身をもここに縛り付けている。

....全て、ここに閉じ込めて時を止めてしまった。

全て。

全て?

錨があるのなら船はどこだ。

私の船はどこにある。

暗い海の底から遠い夜空を見上げる。

届くはずだ。だって私はあの船のキャプテンなのだから。

「錨をあげろ!!!!!!ロイヤルフォーチュン!!!!!!」

声は泡にならずに確かに海に響いた。
鎖の擦れる音が止んだ。

はっと息を飲んだ。

錨が上がる。

ガラガラガラと大きな音が響く。体が引き上げられていくのが分かる。

....自分の体が軽くなっていくのに気づく。体からこぼれ落ちていく略奪した宝たち。指先から全身へどんどん力が抜けていく。

首に妙な痛みが走るのが分かった。

「...ああ、やっとだ。...やっと!!」

海面に引き上げられる。そこには眩いばかりの夜空を背負った愛しい自分の船があった。

「待たせてしまってすまない!さあ、出航しようか!」

遠くでクルーたちがはしゃぐ声がした。

すっかり身軽になった姿で船へと乗り込み、ふらふらと力の入らない体を気合いで立たせた。

首からは空気の漏れる音がする。

震える手で舵を取る。

これは悲しいことではない。

別れの旅ではない。
私はきっと天国へはいけないだろう。
ならばこの愛する船とここまで着いてきてしまったクルーたちごと地獄へ乗り込む。
そこでまた暴れてやろうじゃないか。

それが私達らしい物語だろうから。