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いちよん
2024-02-04 12:03:25
3912文字
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混沌の戦士とて
DFFカオス運営所属wolifです
準備号です!謝意
はじまり
「ああーっもーっ!クッソォ!!今回は俺の負け、って事にしといてやるぞおっさん!!」
青藤色の髪を舞いながら少女は後方へと下がる。それを見て銀の鎧の大男も剣を下ろす。
「んじゃあな!」
先程まで敵対していたとは思えない様子で少女は悔し気に去っていった。
残されたのは、私と鎧の男。
金色の瞳を真っ直ぐと捉える。
私は彼女のように拳で戦える技も、術も無い。あっけなく倒されるのだろうか。と考えていると。
「終わりなき闘争に身を投じたくば、ついて来るがいい。さもなくば、その場で終わりを迎えよ」
彼は背を向けて歩み出した。
私はその言葉に疑問を抱く事なく後をゆっくりと追う。
これが、はじまりだった。
・おしえ
混沌の戦士として迎え入れられてまたあの神殿に戻ってきた。
「武器を構えよ。力量を見る」
「武器
……
」
「貴様が思ったものをそのまま見せてみよ」
思った、もの。
武器。剣、と。盾?
そう考えた途端、剣と盾が手の内に現れた。
それらを握りしめてガーランドへと目線を向ける。
「それがお前の思うもの、か。ともあれ、どれ程の腕前か
…
見せてみろ!!」
ガーランドは大剣、いいや、大斧へと変わっていった武器を天高く構え──
「ッ!!」
私目掛けて振り落とした。
咄嗟に横へと回避出来たからよかったものの、アレをまともに受け止めていたらどうなっていたことか。
「その程度か!」
今度は大斧から双剣へと変え、容赦なく襲いかかってくる。すかさず姿勢を整え、盾でそれを受け止めたが勢いがあり過ぎて受け止めきれず剣盾共に、宙を舞った。
乱れる呼吸。自分の背後から聞こえた二つの金属音。首へと向けられた剣。
ほんの一瞬であった。
誰がどう見ても己の負けは明確。
「不意打ちをするような形であったが、それに瞬時に応えられたのは悪くはない。」
剣を下げられ、もう力量計りは終わったのだと思いゆっくりと立ち上がる。
「しかし、ただ己の身を守るだけであったとはな。次は剣を取れ」
剣を下げられ、叱咤にも近い指導。
その通りであった、と静かに頷いて一つの考えが思い浮かぶ。
「ガーランド。これからの戦いに備えて、私を鍛えてほしい」
「己で励め。時折ならば相手はしてやろう」
「私を混沌の戦士として迎えたのはお前だ。ならば、一人の戦士として戦場に立てるまで見るのもお前の役目ではないのか?」
断られるだろうか。
彼はじっと考え、ようやく口を開いた。
「
……
よかろう。戦場に立つ者として力を、技を、一人の戦士なりに応えてゆこう。弱音は聞かぬぞ」
その言葉に頷く。その時から混沌の一人の戦士として戦場に立てるように。彼との鍛錬が始まった。
・いへん
それは、突然だった。
ガーランドの攻撃をいつも通り盾で受け止めた時のこと。
左腕に痛みが走る。
びきり。
「ッ
……
!?」
ぱき、ぱき、と音を立てて腕が。ひび割れていくような。
その痛みに耐えきれなくてその場に蹲る。
「どうした、もう終いか?」
「っ、ち
…
がう、こ、れは」
否定しようにも痛みが勝り、顔すら上げられない。ひたすら唸ることしか出来ない。脂汗が止まらない。
「見せてみよ」
異常だと判断したのかガーランドは剣を下ろして同じくしゃがみ込んで私へと手を差し出す。なるべく刺激しないように慎重に左腕を差し出した瞬間。
ばきん。
「─は、?」
音を立てながら割れて。二の腕から先が、床へと転げ落ちた。
「
…
やはり、そういうことだったのか」
ガーランドは一人納得したように床に転がった腕を取り、私の残っている左側の断面を撫でてくる。
全身に走るであろう痛みに耐えるが。その痛みは一切来ない。代わりに来るのは「触れられている」という事実だけ。
「一体、どういうことが」
「動くな。黙っておれ」
左腕を断面につけられ、白き輝き。癒しの魔法をかけられる。すると左腕は何事も無かったかのようにくっついていた。
「指から動かせ。次は手首を、最後に腕」
言われた通り、恐る恐る手を開いたり閉じたり。慎重に腕を動かす。
「問題は無いようだな」
「
……
ああ、感謝する」
痛みはなくなっていた。腕も問題なく動く。それに一安心したが同時に沢山の疑問が湧いてくる。
そんな中一番に口に出ていたのは。
「ガーランド。私は一体、何者だ?」
ガーランドは床に落ちた左腕があった場所に散らばり落ちていた青い鉱石を拾う。
「これは対象を写しだす物体」
「では、私は誰かを写しだされた存在となるのか」
しばらくしてから、ようやく答えが返ってきた。
「
……
否定はせぬ」
反応を見る限り、どうやらこれは扱いが難しい問いだったようだ。
話題を切り替えた方がいい、と判断して一つの案を出す。
「ガーランド。今日はもう、やめにしておきたい」
「ああ、そうするが良い。もし再び身体に支障があればすぐに伝えよ。それ相応の処置はしよう」
すんなりと案は受け入れられ、今日の鍛錬は終いとなった。
身体を休ませろとほぼ強引に横たわることになった。
秩序の戦士が仮に来たらどうする、という問いさえも許されない雰囲気で。大人しく従うことにした。
彼が武器の手入れをする音。焚き火に木が焚べられる音。火の灯りによって映し出された大きな影。
ガーランドが、後ろにいる。
その安心感はとても大きい。
もしまた、今日のようなことが起きてもガーランドがいたらきっと大丈夫。
大丈夫だ。
己が想像していたよりも遥かに。ガーランドに頼っていたのかと。
そうだったのだと気付きながらも、疲れ切った身体は眠りの世界へと落ちていった。
・うまれしる
「ガーランド。私はどう生まれたのかを知りたい」
左腕が癒えてから数日。純粋にガーランドに聞いた。何処か悩ましげな顔をしながらも。
「付いて来るがいい」
彼は私をある場所へと案内をしてくれた。
そこは、巨大な赤いクリスタルが宙に浮いており、まるで世界の終わりのような場所にて、ガーランドは小さな歪みを作り上げる。ちょうど、中を覗き込めるくらいのものだった。
「見るがよい」
言われた通り歪みの中を覗き込む。
そこには。
「なんだ、これは」
異様な光景に一歩下がり。煌めいては蠢く、生き物達がこちらを覗いていた。いや、正確には生き物と呼んでもいいのかわからない、者達。その鉱石のような輝きには既視感を覚える。いつぞやの砕けた左腕と同じ。
「それらは全て戦士達を模倣したもの、イミテーションだ。失敗作として見なされ。この闘争にて不要と判断されて『破棄』されたもの達よ」
中には、見慣れた姿であるガーランドもいた。
「
…………
」
黙っていると、指先一つで小さな歪みは閉じていく。完全に閉じゆく最後のその時まで「失敗作」と呼ばれたものたちはこちらをずっと見つめていた。
「気は済んだか」
彼は歩み出す。その後を足早に追う。
私は成功作なのか?
問う気がとてもでは無いが、起きなかった。
・さだめ
秩序の戦士達は皆、混沌の戦士達の手によって滅んだ。
「終わったのか」
少年が、秩序の女神を攻撃から庇うのを最期に。女神は目を伏せ、ガーランドの剣を甘んじて受け入れて。
白き衣が赤く染まって静寂が訪れた。
「此度もな」
此度?
「どういう意味だ」
「すぐに分かる」
ガーランドは天を見上げる。つられて見上げれば。
金色の竜が、天を舞っていた。
思わず武器を構えるが、制される。
「止めよ。あれはこの世界の『仕組み』だ。それに、我らが叶う相手ではない」
「仕組み?」
「見るのは初めてだったか」
ぐるりぐるり、と煌めきながら同じ場所を周り続ける金色の竜の側に集まっていく秩序の女神を初めとした倒れていた秩序の戦士達。
「浄化の始まりだ。倒れた女神と戦士達はあのように次の闘争への備え
…
ひとときの休息を与えられる」
金色に包まれていく様子を見て、ふと思う。
「戦士達は生きているのか?」
「否。あの浄化によって生かされている、と言うべきか。中にはそれに耐えきれず消滅する者もいる」
言われた通り、耐えきれなかったのか。さらさらと砂のように消えていく、戦士が数人。名も知らぬ者達。
「では、消滅せずに残った戦士達は」
「いずれ、相見えるだろう」
行くぞ、と言われ慣れきっている様子からして恐らく。何度も何度も。この光景を。消えゆく戦士達を見てきたのだろうか?
そう思いながら、竜の咆哮を背に、後を追った。
・おもいで
それは「次」の戦の合間のひとときであった。
ガーランドと共に武器の手入れをしていると、ふと彼は手を止める。それにつられて同じく手を止め、目線を剣から彼へと見上げると。どこか違う雰囲気を漂わせる彼がいた。
「そこには、煌めく白亜の城があった」
いきなり何を言い出したのか、よくわからなかった。
「民達が、笑い合い、詩人が唄を歌う。美しき街であり、国があった」
「なにもかもが。素晴らしかったのだ」
誇らし気に語り続ける別人のようなその姿は珍しい。
邪魔をしてはいけない。
彼にとっての大切な記憶。
踏み込んではいけないものなのだと直感的に理解をする。
だが、どうしても気になって仕方なくて。
「その、国の名は?」
私は口にしてしまった。
「コーネリア」
その言葉を発したガーランドは、暫し沈黙してしまい。我に帰ったようにため息を吐き、普段の「猛者」へと雰囲気が戻ってゆく。
「
……
戯言が過ぎたようだ」
戯言などではない。
否定するべきだったが今の兜の下にある貌のことを考えるとどうも、口に出来なかった。
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