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溶けかけ。
2025-02-11 21:32:11
1252文字
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ほぼ日刊
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呪いと祝福は紙一重
猫になったフリーナのお話。
大昔の話(未完)の日刊版みたいなものです。
「にゃあ
……
」
白い巻き毛の子猫が鳴く。
猫の鳴き声を聞いたヌヴィレットが書類から顔を上げれば、色違いの海色と目が合った。
「どうした、フリーナ殿
……
?」
白い子猫は話題にのぼった彼女と同様に青混じりの白い毛並みをしていた。
「みぃ
……
」
「まだ、仕事は終わっていない。
……
なに? 『もう日付が変わるから休め』と
……
? ふむ。確かに、人ならば睡眠を摂る時刻だが、この身の本質は龍。睡眠など必要では
……
」
「ふーっ
……
!」
フリーナがヌヴィレットに毛を逆立てて呻る。どうやら相当、お冠のようだ。
とはいえ、ヌヴィレットにはまだ仕事が残っていた。彼はフリーナを無視して仕事を続ける。アーモンド型の目を大きく見開き、にゃう
……
と悲しそうに鳴いたフリーナの耳と尻尾はぺたりと萎れていた。
その様子に絆されそうになるも、何とか堪えて書類に意識を集中させる。書類の向こうではフリーナが闘志を燃やしていたことにヌヴィレットは気づいていなかった。
彼女は、二、三歩ほど後退すると小さな尻尾を揺らし助走をつけた──ヌヴィレットの鳩尾に向けて。
「みぃ
……
!」
「ぐっ
……
!」
ヌヴィレットの鳩尾に子猫の頭がヒットする。いくらフリーナが子猫で、ヌヴィレットが龍であろうと人の形をしている以上、急所は同じ。彼は痛む鳩尾を押さえて前かがみになった。
「フリーナ殿
……
執務の妨害は
……
」
ヌヴィレットがフリーナに異議申し立てを行おうと言葉を零し、その口を噤む。目線の先では子猫が目を回したかのように覚束ない足取りで体をゆらゆらと揺らしていた。
「フリーナ
……
!」
机に倒れ込んだフリーナを両手で捧げ持つ。人と違い猫の体は更に脆い。気にかけてやるべきだったのに。
「にゃ〜
……
」
「待っていたまえ。今、シグウィン殿のところへ
……
!」
手の中でくったりと四足を投げ出すフリーナを連れてヌヴィレットはメロピデ要塞へと飛んだ。
「軽い脳震盪ね。暫くは体調の変化に気をつけて見てあげて。容体が急変することもあり得るから」
診察を終えたフリーナがヌヴィレットの手のひらに乗せられる。小さな体は眠っているようで一定の速度で呼吸を繰り返していた。手のひらの上の暖かさにこれほどまでに安堵したことなどあっただろうか。ヌヴィレットは安堵の息を吐き出すとシグウィンに礼を言って医務室を後にした。
ヌヴィレットはパレ・メルモニアに用意された自室のベッドの上にフリーナを下ろすと寝間着に着替え、隣に寝転ぶ。小さな体は目覚める気配がなく、惰眠を貪っていた。
──まったく。こちらの気も知らないで。
ヌヴィレットは幸せそうに眠る子猫をつつく。子猫はもぞもぞと僅かに身動ぎをするだけで起きる気配はなかった。
「早く、戻る方法を見つけなければ」
子猫の鳴き声も嫌いではないが、あの声が聞けないのは少しばかり寂しいものがある。
ヌヴィレットは子猫を一撫ですると目を閉じる。
──明日こそ、彼女の呪いが解けますように、と。
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