のたり
2025-02-11 06:57:00
1719文字
Public hrsz
 

マロリクありがとうございました!

久しぶりのオフの日で読むのを楽しみにしてた本に集中してしまう💧ちゃんと、💧ちゃんがその本をずっと読みたがってたことは理解してるけど、気持ちは複雑で我慢できるかわからない🐧ちゃんのお話

「本屋さんに寄ってもいいかしら」
配信用の買い物の途中で、雫がそう言ったのは先週の水曜日だった。
好きな作家さんの新作の発売日なの、と嬉しそうな顔をする雫を見ていると私までつられて嬉しくなった。もしかしてこの間、新しいペンギンの写真集が届いた日の私もあんな顔していたのかな。
今日、ローテーブルに置いた本の前に座る雫はもっともっと嬉しそうな顔をしている。
ステージ上やカメラの前のアイドルオーラとは違う、もっと柔らかなキラキラしている雫のオーラは、いわゆる癒し、っていうやつなんだろうな。
雫がページを捲る。ペラ、と小さく紙が擦れる音がする。
入れたお茶は一口飲まれたきり、もう冷めてしまっていてちょっと可哀想だなと思う。もう一杯淹れてこようかな。
髪が落ちないようハーフアップにしてる雫の耳やうなじが見えて、正直触りたくなる。邪魔しちゃ悪いな、と、頭では思うけれど、同時にせっかくのデートなのに、とも思う。雫が新刊を買ってから初めてのオフ。ここ最近CMの影響で雫は忙しくしていたから、ずっと楽しみにしていた本を読むのもおあずけになっていたのを誰よりも知ってる。だから久しぶりのデートを家に来ない? と提案したのは私だし、読みたかった本を持ってきたらいいよ、と言ったのも私。なのに、本に夢中で全然構ってくれない雫に寂しいような拗ねたような心境になっているのは、如何なものか。
やっぱり何か淹れてこよう。邪魔しないよう、音を立てずにそっと立ち上がった。


キッチンでお湯を沸かしながら、この間買ったペンギンのマグカップにドリップバックのコーヒーをセットする。ちょこんと取っ手に乗ってるエンペラーペンギンの赤ちゃんがやっぱり可愛い。今度見かけたらもう一個買って来ちゃおうかな。お揃いのコースターも一緒に。
買った時、「ほんっとにペンギン好きよね」とため息混じりに笑う愛莉の横で、雫はふふっといつものように笑っていた。それから帰り際、小さなショッパーをくれた。その中に入っていたのはマグカップとお揃いのコースター。「よかったらマグカップと一緒に使って」と雫は笑った。私と入れ違いで雫が会計に行ったのは見ていたけれど、何を買ったのかまでは知らなかったから驚いたし、とても嬉しかった。
そんなことを思い出しているうちにお湯が沸いた。
コーヒーとコースターを持って部屋に戻ると、雫は私が部屋を出た時と変わらず本を読んでいた。顔を上げると「いい香りね」とふわりと笑った。
「飲む?」
「いいの?」
「もちろん」
「でも、遥ちゃんの分でしょう?」
「そうだけど……、じゃあ半分こしよう」
雫の前にコースターを置いて、その上にマグカップを置いた。
「使ってくれているのね」
「うん。あまり汚したくないから、ゆっくりできるときにしか使ってないけど」
「あら。私も汚さないよう気をつけるわね」
ふふっと雫が笑って、私も笑い返す。
本を読んでいる雫も好きだけど、私を向いてくれている雫はもっと好きだな。
ずっと触りたかった耳に手を伸ばす。耳朶を軽く摘んだら、雫は きょとんとした後、少し照れくさそうに微笑んだ。その笑顔に気を良くして、耳の縁を指で撫でる。
「くすぐったいわ、遥ちゃん」
「うん」
雫が本を読むの、ずっと楽しみにしていたことは知っているんだ。でも。
……もう少し、触ってもいい?」
「え?」
ローテーブルの上に手を置いて身を乗り出す。うなじにキスをしたら、雫は少し肩をすくめた。ゾクゾクして身体が熱くなる。止められないかも、そう思ったとき、雫が私の肩に手を置いた。
「遥ちゃん、待って」
……
私が身体を起こすと、雫は本に向き合った。そして栞を挟んでパタンと本を閉じる。
「おまたせ、遥ちゃん」
そう言って私の方を向くと、両手を広げた。
「ーーいいの?」
ふふっと雫は笑って、抱きついてきた。
「今日はまだ長いし、デートも久しぶりでしょう?」
ハーフアップにした雫の毛先がいつもよりくすぐったくて、頬と一緒に胸の奥もくすぐられた気がした。
……
コーヒーは一口も飲まずに冷めちゃいそうだな、なんて思いながら、雫の首筋にキスをした。