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のたり
2024-12-26 04:59:07
1889文字
Public
hrsz
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嫉妬もスパイスのうち
「これ、咲希から預かってきたよ」
そう言って4人で行った日帰り旅行のアルバムを持ってきたのは、遥ちゃんだった。
「日野森さんに渡そうとしたら、おねえちゃんの分は恥ずかしいからいいよ、って言われちゃったんだって」
「ええ〜
……
、もう、しぃちゃんったら
……
」
「でも日野森さんの気持ちもわかるよ。雫の分のアルバム、ほとんど日野森さんが写ってるんだもん」
「私が咲希ちゃんにリクエストしたの、しぃちゃんが写っている写真をたくさん入れてほしい、って」
「そっか。すごく楽しかったみたいでよかった」
「ええ。今度、また4人で一緒に行こうって
……
、あ、人気のスイーツも買いに行こうって話もしていたのよ」
「スイーツって
……
、あ、もしかして前、買いに行ったけど売り切れてたって言ってたお店?」
「ええ。でも最近しぃちゃんも咲希ちゃんもバンドで忙しそうで
……
、予定が合わないかもしれないから、それなら2人で買いに行ってしぃちゃんと咲希ちゃんにサプライズプレゼントするのもいいかもしれないわねってこのあいだ司くんと話をしていたの」
きっと遥ちゃんも好きだと思うからチートデーに合わせて買ってこれたらいいのだけど、と司くんに話したら、「いつでも協力するぞ! 桐谷には世話になったしな!」と快く言ってもらえたし。
「
……
雫は司さんと仲良いんだね」
「そうね、幼馴染だし」
「それだけ?」
「あとは、家が近所で、咲希ちゃんのお兄ちゃんだし
……
?」
「知ってるよ、それは」
淡々と言葉を返してくる遥ちゃんは、どこか冷めているように見えた。感情を抑えているような、そんな感じ。
「
……
もしかして、だめだったかしら」
more more jumpは恋愛禁止と謳っているわけではないし、実際、私と遥ちゃんはお付き合いをしている。でもそれもファンの子達には気付かれないように意識しているし、これは恋愛に限った話ではないけれど、事務所という後ろ盾のない私達はスキャンダルを起こさないようにしようと話していた。幼馴染とはいえ異性と2人で買い物に出かけるのはよくなかったかしら。
「
……
少し買い物に行くくらいなら大丈夫だと思うけど
……
」
「
……
そう?」
ほっとして胸を撫で下ろしたけれど、それと同時にじゃあどうして遥ちゃんは、と疑問が湧き上がる。
怒っているわけではないみたい。不機嫌? でもそれよりまるで拗ねているような
……
。
「
……
あ。もしかして遥ちゃん、ヤキモチ?」
遥ちゃんの顔色が変わった。図星だったみたい。つい、ふふっと笑ってしまった私に、遥ちゃんは赤い顔のまま視線をそらせて少し頬を膨らませる。
「買い物なんて、愛莉ちゃんや瑞希ちゃんともよくしているのに」
「今更愛莉達にヤキモチ妬いたりしないよ」
「あら」
まるで前は妬いてくれていたような口振りに、また笑みが漏れる。友達と遊びに行くことにヤキモチを妬かなくなったことも、ヤキモチを妬く素振りを見せてくれるようになったことも、私達の関係が近くなった証拠のようで。
「
……
別に雫のこと信じてないとかそういうわけじゃないけど、幼馴染ってことは、私の知らない雫を知ってるんだな、とか
……
」
遥ちゃんにしては珍しく歯切れの悪い言い方に、本当にヤキモチを妬いてくれているんだと嬉しくなる。
「
……
なんで笑うの、雫」
「だって遥ちゃんがそんなことでヤキモチ妬いてくれるなんて、嬉しいもの」
眉を八の字に下げて、遥ちゃんはどこか悲しそうな顔をした。その顔に胸がちくりと痛む。ヤキモチを妬いてくれるのは嬉しいけれど、遥ちゃんを傷つけたくはない。
ごめんなさい、と謝ろうとした時、遥ちゃんが私のすぐ横に手をついてぐっと近付いてきた。
「
……
妬くよ。だって雫のこと、好きだから」
真剣な視線と少し低くなった声にドキリとして身体がすくんだ。
「雫のこと独り占めしたいし」
「え?」
「ずっと腕の中に閉じ込めておきたいし」
「えっと、遥ちゃん
……
?」
じりじりと詰め寄るように近付いてくる遥ちゃんに思わず後ずさるけれど、その場からほとんど動けなくて、遥ちゃんの顔はすぐそこまで迫る。
「身体中に印をつけて、雫は私のだってわからせたい」
「
……
っ」
いつも優しい遥ちゃんが見せる冷たいほどの鋭い視線に、心臓が音を立てて、身体が熱くなる。
もうきっと逃げられない。でも、逃げられないと感じるくらい、求められていることが嬉しくて。
「
……
いいよね? 雫
……
」
少し目を細めて、口角を上げた遥ちゃんが自分の唇を舐めた。
電流が流れたみたいにぞくりとして、早く、と願う自分がいた。
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