のたり
2024-10-31 18:57:58
1081文字
Public hrsz
 

cat


体調はいつも通り。喉も痛くない。強いて言うなら、舌が変な感じがする。口の中を舐めたら、いつもよりざらついているような感触。
「にゃにゃにゃ」
「あ、もしかして、雫、って呼んでくれた?」
頷くと、ふふっと雫が嬉しそうに笑った。
「本当ににゃーしか言えないのねぇ……
そう。学校ではちゃんと話せたのに、家に帰ったら話せなくなっていた。ひとりで帰っていたからわからなかっただけで、もしかしたら帰り道にはもう話せなくなっていたのかもしれない。
今日、お泊りデートの約束をしていた雫が家に来て、そこでやっと気付いたのだ。
不思議そうな顔をしながら、雫が私の両頬に手を添える。
「あーん、して?」
「にゃーん?」
「お口の中、いつもと変わってるところがあるのかと思って」
たしかにそれはあるかも、と思って、口を開けた。雫が顔を近付けてきて私の口の中を見る。なんだか恥ずかしいな。
「いつもと同じに見えるわね」
そう言いながら雫は下の前歯に触れた。
……っ」
「舌も普通?」
「にゃっ……
そのまま舌に触られて、反射的に噛みそうになってしまった。
……っ」
甘噛みで止められてほっとしたと同時に、雫の口角が上がった。口の中に入ったままの雫の人差し指が舌の裏を撫でる。
「ん、にゃ……
口を開いたけれど、雫は指を抜こうとはしなくて、むしろ中指も挿れてきた。
「いつもよりざらついているのね。猫さんみたい」
まるで雫は肌触りを愉しむように撫でてくる。開きっぱなしになった口の端から涎が垂れていく。
「苦しかったら言ってね、遥ちゃん」
言ってね、って言われても、にゃーしか言えないんだけど。
……にゃ
息がうまくできないけど、辛いわけじゃない。なんていうか、これは。
「もしかして、ここ撫でたら気持ちいい?」
そんなことを言いながら、雫が耳の後ろを撫でた。
…………
元々耳は弱いのに今日はなおさらで、身体がすくんで思わず目を細めた。手を伸ばして、雫の邪魔をしないように最小限の力で袖の肘あたりを掴む。崩れ落ちてしまわないように。
……遥ちゃん、可愛いわ」
どこかうっとりと雫が呟く。
……に、ぁ……
待って、って理性では思うのに、本能でこのまま身を委ねたくなる。ーー委ねちゃったら、どうなるんだろう。
雫が私の口の中から指を抜いた。垂れた涎を親指で拭う。
……
は、と息を吐く。そして雫の首に腕を回して引き寄せた。そのまま唇を重ねる。舌入れたら、雫、どんな感じがするんだろう。
唇を薄く開いて、雫の上唇を舐める。ざり、と音がした気がした。