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のたり
2024-10-23 19:14:04
2379文字
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hrsz
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はるしず 幼少期if
リュックにつけていたぺんぴょんのキーホルダーを落としたのに気がついたのは、家の玄関でリュックを下ろしたときだった。
ーーどこで落としたんだろう。わからない。
お店でお財布をしまったときにはまだあった。とりあえずお店まで戻ってみようと思って、買ってきた色えんぴつを家に置いて今まで歩いてきた道を戻った。
落ちていないか足元を見て歩いていく。青いものを見つけるたび駆け寄ってみたけれど全部違った。割れたプラスチック、ペットボトルのラベル。道って意外といろんなものが落ちてる。
もうすぐ店に着いちゃう。
焦り始めた時、声をかけられた。
「どうしたの?」
ーーえ?
顔をあげる。知らない人と話してはいけません、と、幼稚園で習ったけれど、知らない人じゃなかった。
「もしかして迷子?」
首を振る。
「そうなのね、よかった。なにか探しているみたいに見えたから、道を探してるのかなって思ったの」
「
……
うん」
志歩ちゃんのおねえさんだ。
志歩ちゃんは私と同じうさぎ組のおともだちで、おねえさんはひとつ上のきりん組。
志歩ちゃんにはあんなおねえさんがいていいなといつも思っていた。やさしくて、にこにこしていて、なによりうまく話せなくてもうまく笑えなくても、まるで志歩ちゃんの気持ちをわかってくれているようなところが羨ましかった。
「なにしているの?」
「え?」
志歩ちゃんのおねえさんが、笑顔で私の答えを待つ。
「
……
ぺんぴょんのキーホルダー
……
」
「ぺんぴょん?」
「うん
……
。落としちゃったから、探してる」
「もしかして、いつもリュックにつけてるキーホルダーのこと?」
「えっ」
「しぃちゃんが言っていたの、おともだちの付けてるキーホルダーがとっても可愛いんだ、って。ぺんぴょんっていうのね!」
「
……
あ、うん
……
」
「じゃあ一緒に探しましょう?」
「え
……
」
嬉しいけど、いいのかな。
志歩ちゃんのおねえさんがきょとんとした。
ーーあ。今、嫌がっているように見えちゃったかな、と心配になったけれど、志歩ちゃんのおねえさんはすぐにふわりと笑った。
「ふたりで探したらきっとすぐ見つかると思うの。ね? はやく見つけてあげましょう」
「
……
うん」
私が頷くとまた笑った。優しくてキラキラしてまるでこもれびみたい。その笑顔に胸の真ん中があったかくなる。
「こっちかしら?」
歩き始めた志歩ちゃんのおねえさんを慌てて止めた。
「そっちじゃなくて
……
」
「どっちかしら」
「私、文房具やさんに行ったんだけど、お金を払ったときにはまだあったから、そこからお家までの道で落としたと思うんだ。だから
……
」
「じゃあその文房具やさんに向かえばいいのね!」
「うん、でも
……
」
文房具やさんはもう見えていて、その間の道にはここからはなにも落ちていないように見えた。
「もしかして、お店のなかじゃない?」
「
……
お店のなか
……
」
「お店の人に聞いてみましょう!」
「えっ」
ぱっと表情を明るくして、志歩ちゃんのおねえさんは走り出す。
「え、え?」
私が後を追いかけてお店に入ると、もうお店の人と話していた。
「はるかちゃん、届いてるって!」
「え」
「お店の前に落ちていたのをほかのお客さんが拾ってくれたみたい」
「
……
」
手招きされて志歩ちゃんのおねえさんの横に立ったら、お店の人が「これ?」とキーホルダーを見せてくれた。
「あ
……
、はい。それです。裏側に、はるか、って書いてあって」
お店の人が確認してくれて、笑顔で渡してくれた。
「よかったわね、遥ちゃん!」
「あ、うん、ありがとう
……
」
「お店のひともありがとう!」
志歩ちゃんのおねえさんの笑顔にお店の人も笑顔になる。
よかった、見つかって。ぺんぴょんをぎゅっと握りしめた。留め具が壊れているみたいだけど、お母さんに言ったらきっと直してくれる。
お店の人にお礼を言ってお店を出る。志歩ちゃんのおねえさんにももう一度ちゃんとお礼を言わなきゃ。
「あの、
……
志歩ちゃんのおねえさん」
「ーーあのね、私、雫っていうの」
「え?」
「志歩ちゃんのおねえさん、だと言いにくいでしょう? 雫でいいわ」
「
……
じゃあ、雫、おねえさん?」
「みんなは雫ちゃんって呼ぶけど
……
、おねえさん、だとすごく年上に思えちゃうし
……
」
「
……
じゃあ、雫、おねえちゃん?」
「ええ! 私もはるかちゃんって呼んでいい?」
「うん」
ーー雫おねえちゃん。頭の中だけでもう一度呼んでみる。胸がくすぐったい。少し照れくさくて、すごく嬉しい。
「
……
あの、ありがとう、雫おねえちゃん」
お店の人に聞けばいいなんて、ぜんぜん思いつかなかった。きっと志歩ちゃんのおねえさんがいなかったら、見つけられなかった。
もっとちゃんと言いたいのに、うまく言えない。けれど雫おねえちゃんはやっぱりとびきりの笑顔を見せてくれた。
「遥ちゃんは本当にそのキーホルダー、大事にしているのね」
「
……
うん」
これはぺんぴょんのお店でおばあちゃんに買ってもらったもので、とてもとても可愛くて、ずっとずっと大事にしていたから。
「ねぇ、もしよかったら一緒に遊ばない?」
「
……
遊ぶ?」
「ええ! 公園にしぃちゃんもいるし、一緒にどう?」
「
……
あ、うん
……
」
「えっと、公園は
……
あっちね!」
「あ
……
」
雫おねえちゃんが指さしたのは違う方向だった。
もしかして、雫おねえちゃんのほうが迷子だったんじゃ。
「行きましょう、遥ちゃん!」
まぁいいや。このへんならよくわかってる道ばかりだし、いつか公園にもつくだろうし。つかなくても一緒に歩いているだけできっと楽しいから。
「うん」
頷いて、伸ばされた手を掴む。楽しそうな顔はやっぱりできていない気がするけど、なんだかちゃんと伝わっている気がした。
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