Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
のたり
2024-08-18 07:58:53
1858文字
Public
hrsz
Clear cache
迎えに行くよ
放送局#10とエリア会話が元ネタのはるしず
何やってんのよ、と怒られるのはもう慣れっこ。
「ごめんなさい、愛莉ちゃん」
どうしてちゃんとその場所に着かないのか、自分ではよくわからない。迷子になるときは、いつも気が付いたら見知らぬ場所にいるのだから。
愛莉ちゃんに聞かれるままに周りに見えるものを答えていく。自動販売機と電柱は「それは目印って言わないのよ」と言われたけれど、どこにいるのかちゃんとわかってくれたみたい。
『これから迎えにいくから、そこから動くんじゃないわよ』
「大丈夫よ、愛莉ちゃん。動かないわ」
一度声が遠くなって、ざわざわした音が聞こえる。なにか話しているみたいだけれど聞き取れない。
『ーー雫』
電話口から聞こえてきたのは遥ちゃんの声だった。
「遥ちゃん?」
『うん。雫、Hビルってわかる?』
「え?」
『前にみんなでパンケーキ食べに行った店が入ってるビル』
「あ、ーーええ、わかるわ」
さっき前を通ってきたビルのことね、頭の中で確認する。
『外だと暑いでしょ? 今から道案内するから、そのビルの中で待ってて』
「ええ、わかったわ」
たしかあのビルはこっち、と思って歩き出す。
『雫、目の前に青い看板ある?』
「え?」
遥ちゃんの言葉に足を止めた。少なくとも今の視界には青い看板はない。
「
……
ないわ?」
『じゃあその場でぐるっと回って、青い看板が見えたらそっちに向かって歩いて』
「
……
ぐるっと
……
」
言われた通りにぐるっと回る。ちょうど歩き出した反対方向に青い看板が見えた。
「あ、あったわ」
『うん、よかった』
どうやら私は反対方向に進んでしまったみたい。遥ちゃんの言った通り、青い看板に向かって歩いていく。
『次は
……
』
みんなで行ったことのあるカラオケをそのまま通り過ぎてまっすぐ、しばらく歩いたらガラス張りのビルがあるからね、コーヒーショップの前までだと行き過ぎだよ、と遥ちゃんの声が優しく響く。
「着いたわ」
『じゃあ迎えにいくよ』
「ええ、ありがとう」
『愛莉に変わるからちょっと待ってて』
「ええ」
自動ドアが開くとビルの中から涼しい風が流れてきた。
『雫』
今度は愛莉ちゃんの声。
『右手に自動販売機ない?』
「右手?」
『その奥にベンチがあるはずだからそこで待ってて、って、遥が』
右を向いてみたらベンチは見えないけれど、自動販売機はあった。近くまで行くと、エスカレーターの影にベンチが見えた。
「あ、あったわ」
『いい? そこから動くんじゃないわよ』
「ええ。じゃあ電話切るわね」
『ほんっとーに動くんじゃないわよ!』
「大丈夫よ、愛莉ちゃん」
今日3回目の指示に頷きながら、ベンチに座った。
スマホを鞄にしまって一息つく。
エアコンが効きすぎてもいなくてちょうどいい涼しさ。ここはエスカレーターて日陰になっているけれど、少し向こうは眩しい光が入り込んでいた。
ウィンドウ越しに空を見上げる。真っ青な空に眩しい太陽。いい天気過ぎるくらいいい天気。さっきまで歩いていた外の暑さを思い出して、遥ちゃんは大丈夫かしら、と思う。この暑さで喉が渇いたりしないかしら。
「
……
」
少し向こうには自動販売機。
動くな、って言われたけれど、少しくらいなら、と、立ち上がって自動販売機に向かう。このくらいの距離ならきっと
……
「ーー雫!」
不意に後ろから腕を掴まれた。
「
……
きゃっ
……
」
驚いて振り返ると、遥ちゃんがそこにいた。
「捕まえた」
「
……
遥ちゃん!」
どこかほっとしたように遥ちゃんは笑った。
「おまたせ。どこ行こうとしてたの?」
そう言われて、はたと、動くなと言われていたのを思い出す。
「ご、ごめんなさい、私、お水でも買っておこうかと
……
」
「雫、喉乾いてる?」
「私は平気よ。ただ、遥ちゃんが乾いてるんじゃないかと思って」
「私?」
「ええ、お外、暑かったでしょう?」
「そっか。ありがとう。でも大丈夫だよ」
遥ちゃんは口元に手を当てて微笑んだ。そんな遥ちゃんの額にはうっすらと汗が滲んでいる。
「でも水分補給は大事だよね。半分こしようか」
手を掴んだまま、遥ちゃんが自動販売機に向かって歩き出す。私も同じように歩き出す。
小さいペットボトルのお水を買って、2人で飲んだ。遥ちゃんが飲んでいる間にハンカチを取り出して、遥ちゃんの額に滲んだ汗を押さえるようにして拭う。
「ありがとう、迎えに来てくれて」
遥ちゃんがきょとんとした後、目を細める。
「いつだって迎えに行くよ」
そう言って少し照れくさそうに笑った。
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内