のたり
2024-05-21 09:01:35
842文字
Public hrsz
 

いつもと同じことと違うこと


屋上へと続く階段を登る。
去年の秋、怒った愛莉ちゃんに引っ張られるようにここに来て、遥ちゃんと再会して、みのりちゃんと出会って。それから何度も何度も、数えきれないほど登った階段。
今朝は足が軽いのか重いのかよくわからない。
最後の一段を登って、ドアの前に立つ。
少し緊張してる気がして、一度深呼吸した。
……よし」
心の準備をして、ドアに手を伸ばした。ドアノブを回して、ドアを開く。視界が開けるように明るくなって、心地良い風が吹き込んでくる。
私が一番乗りだった。
いつもと同じ時間にきているのだから、いつも通り私が最初に着いても全然不思議じゃないのだけれど、まだ誰もいない屋上に少し寂しくなって、それからほんの少しだけほっとした。
ーー今日、最初になんて声をかけようかしら。
「おはよう、雫ちゃん!」
ああ、そうね、やっぱりいつものように、おはよう、って。
……あら」
ワンテンポ遅れて、本当に話しかけられたのだと気付いて、振り返る。
いつも通り元気いっぱいの笑顔で屋上にやってきたみのりちゃんがいて、つられるように笑った。
「おはよう、みのりちゃん」
「うん! 今日も早いね、雫ちゃん」
駆け出すように水筒とタオルを置きにベンチに向かったみのりちゃんのすぐ後ろに、遥ちゃんがいた。
「おはよう、雫」
「ええ、おはよう、遥ちゃん」
いつもと同じように返したつもりだったけれど、少し声が上擦ってしまった気がする。
「みのりちゃんと一緒だったのね」
「ああ、うん。教室で練習着に着替えてたらみのりが来たから」
「そうなのね」
ストレッチを始めたみのりちゃんに視線を向けて、戻したら遥ちゃんと目が合った。遥ちゃんはほんの少し驚いたように目を大きくして、それから少し照れくさそうに笑った。
私も多分、遥ちゃんと同じような顔をしている。
「私達もストレッチしようか」
「ええ」
いつもと同じなのに、いつもより胸がくすぐったい。
ーー昨日、私は遥ちゃんの、遥ちゃんは私の恋人になった。