のたり
2023-10-29 22:43:45
1580文字
Public hrsz
 

宅配便です

同棲してる成人はるしず。

家に帰ると宅配BOXに心当たりのない荷物が届いていた。
伝票を見たら雫宛だった。差出人はどこかの会社。品名には電化製品と書いてある。
雫が通販なんて珍しい。しかも電化製品。たしかに服にしては小さくて重い。ドライヤーでも買ったのかな、と思いながら、荷物を片手にエントランスの鍵を開けた。


「あっ、届いていたのね」
雫は渡した荷物にぱあっと顔を輝かせた。
「ありがとう、遥ちゃん」
「どういたしまして」
コートを脱ぎながら、嬉しそうに箱を開け始めた雫を見守る。
「何買ったの?」
「これはね、遥ちゃんへのプレゼントなの」
「え? 私に?」
「ええ」
そう言われても、誕生日も過ぎたし、ふたりの記念日ってわけでもないと思うんだけど。よくわからないけれど、私へのプレゼントなら見てもいいんだろうと思って、雫の隣に座った。
「私、どんなのがいいのかよくわからなかったから、愛莉ちゃん達に相談に乗ってもらったのよ」
がさがさと音を立てて雫が梱包材を取っていく。見えてきた品物のパッケージを見て、息が止まりそうになった。
……雫、これ……
それは所謂、大人のオモチャという類いのものだった。
「え?」
雫は素直にきょとんとした顔を見せる。
愛莉達に相談に乗ってもらったって? 「達」って誰?ううん、そのまえに、どうしてこれを私にプレゼントしようと思った?
普通に考えたら私がこれを雫に使うってことなんだろうけど。
……
切ないような寂しい気持ちと悔しい気持ちが入り混じる。
雫、こういうのに興味あったのかな。いつものじゃ物足りなかった?
……遥ちゃん?」
黙って俯いてしまった私に雫が心配そうに声をかけてきた。
どうしよう。あんなに嬉しそうに開封していたんだから、きっと雫は私も喜んでくれると思ってたに決まってる。でも私は嫌だ。こんなの使わなくったって雫に満足して欲しいし、エゴかもしれないけど、私以外で気持ちよくなって欲しくなんかない。
……こんなの、使わなくったって……
気が遠くなる。掠れた自分の声がまるで自分の声じゃないみたいだ。
「ごめんなさい、あの……、私、遥ちゃんが喜んでくれるかと思って……
そうだよね。わかってる、でも。
「遥ちゃん、新しいマッサージガン買おうかなって言ってたから……
「え? マッサージガン?」
「ええ、今使ってるやつ、最近調子悪いって言っていたでしょう?」
たしかにそう言った記憶はある。けれど。
……雫、これ、マッサージガンじゃないよ?」
「えっ」
「もしかして間違えた?」
……私、また間違えちゃった……?」
しょんぼりした雫が可愛くて、つい笑みが漏れた。なんだ、と思って気が軽くなる。こんな冗談だって口にできるくらいに。
「雫、使ってみたい?」
「え?」
「これ、大人のオモチャでしょ?」
……っ」
真っ赤になって慌てるかな、と思ったのに、むしろ雫は真面目な顔になって、それから困ったように眉を下げて考え込んだ。そしてぎゅっと胸元で拳を握ると意を決したように口を開く。
……遥ちゃんが使いたいなら……
そう言って雫は私の服の袖を摘んだ。
……
雫が胸元で握りしめた拳をそっと包むように手を握った。
「マッサージガンは今度一緒に買いに行こうよ」
「ええ」
「これは返品しようね」
……ええ」
少しほっとしたように雫は微笑んで、雫は私の肩にもたれかかるように額をつけた。
……遥ちゃん、私ね」
「なに?」
「試したことがないからよくわからないけれど、多分、……きっともう……
ーー遥ちゃんじゃなきゃダメなの。
たしかに聞こえた言葉に、心臓が跳ねてぞくりとした。
……雫」
身体の熱と口角があがる。
……じゃあ、たしかめさせて?」
握った手をそっと指で撫でたら、雫の身体が一瞬震えた。