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のたり
2023-10-04 16:35:25
1232文字
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hrsz
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そのに。
ひとりの部屋
帰ってきて部屋の電気を付ける。
いつもと同じはずなのに、カチというスイッチの音がやけに大きく聞こえた。
玄関の靴がないことも部屋の明かりがついていないことも確かめるまでもない。遥ちゃんは今日も帰ってこない。
お泊りでお仕事なんだもの、前からわかっていたスケジュールだもの。わかっているけれど、やっぱり少し寂しい。
荷物を置いて洗面台に向かう。
手を洗って、お化粧落として。ご飯はどうしようかしら。棚から取ったタオルが遥ちゃんのものだったことに気付いて、戻そうとしたけれどつい手が止まった。
「
……
」
遥ちゃんが実家から持ってきたペンギン模様のタオル。ちゃんと洗うから、なんて、誰も聞いていない言い訳をして、タオルにそっと口元を埋めた。遥ちゃんの匂いがする。
ーー「ひとりでしないでね。ちゃんとご褒美あげるから」。
そう言った遥ちゃんの顔が頭をよぎって、心臓が小さく鳴った。
ざわ、と肌が泡立つような感覚。
大丈夫。今までだって何日も顔を合わせない日もあったし。それに自分でするより遥ちゃんにしてもらうほうがずっと気持ちいいし。
なのに遥ちゃんがそんなこと言うから。
「
……
」
目を閉じて、ぎゅっとタオルを握りしめた。
……
雫。
もうこんなになっちゃってるんだ?
可愛い。
大好きだよ、雫。
遥ちゃんがくれた声や遥ちゃんとのキスの感触が蘇ってきて、お腹の奥が疼く。
いつからかもうわからないけれど、キスだけでとろけそうになる。遥ちゃんが上手なのか、それともその先のことを身体が覚えて期待してしまっているのか。
……
きっと両方ね。
「
……
遥ちゃん、早く帰ってきて」
耳の奥で響く遥ちゃんの声を消したくて、そう声にした。
いつもよりぬるめのシャワーを浴びたら少し落ち着いた。
今日のお夕飯は鍋焼きうどん。
遥ちゃんのペンギンさんを借りて、一緒にソファーに座って台本を手にした。今度の役は主人公のお姉さん役。妹とその親友との元気のいい掛け合いは、杏ちゃんと遥ちゃんに少し似ている。
遥ちゃんはそんなことないよ、と言うけれど、今でも杏ちゃんといるときは負けず嫌いの面が顔を出す。そんな時やペンギンさんに夢中になっている時の昔と変わらない遥ちゃんはとても可愛い。
寄り添うように隣に置いたペンギンさんの頭を撫でた。ひとりでいるより落ち着けるかもしれない。
「今日は添い寝してもらおうかしら」
そう言って軽く抱きしめたら、遥ちゃんの匂いが鼻をくすぐった。
「
……
」
落ち着いた熱が燻ったような気がして、そっと隣に置き直す。台本を開き直したけれど、さっきより集中できない。
自分でしたらそれなりに解消するのだろうけど、しないでねって、良い子で待っていてねって、言われたから。それに遥ちゃんの言うご褒美を、期待している私がいる。
ため息をついて、熱を吐き出す。遥ちゃんが帰ってくるのは明後日の夜。もう少し。
早く、明後日になぁれ。
ペンギンさんの代わりに台本に顔を埋めた。
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