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のたり
2023-09-24 08:58:15
1786文字
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hrsz
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はるしず × 2
遥と雫がふたりになりました。
朝起きたら、私達はふたりになっていた。
なんで、とか、どうしよう、と勿論思ったけれど、仕事の時間も迫っていたし、とりあえずジャンケンでどちらが仕事に行くかを決めた。
私は今日はレコーディング、雫は雑誌のグラビア撮影。もうひとりの私達はおうちでお留守番。
最近オフが重なることなんてなかったから、雫と1日一緒に過ごせるなんて羨ましかったけれど、今日はなんだか私の方まで雫がずっと傍にいてくれるような安心感があった。
いつもより声が伸びる。歌っていて気持ちいい。
一発OKが出て、いつもより早く帰れることになった。帰りの足取りも軽い。雫はまだ撮影中だろうけど、家に帰ったらもうひとりの雫と会える。
***
「ただいまー」
ぱたぱたと駆け寄ってくるスリッパの音が聞こえる。
「おかえりなさい、遥ちゃん」
ふわりと笑って出迎えてくれた雫につられるように笑顔になる。
「予定より早かったのね」
「うん、レコーディング、すごく上手くいったんだ」
ピースサインを作ったら、「よくできました」なんて言いながら頭を撫でてくれた。ふたりで顔を見合わせて、ふふっと笑い合った。朝はどうしようと思ったけれど、これはこれでいいかな、なんて思ってしまう私は単純だ。
ダイニングに行ったらもうひとりの私が鼻歌交じりで夕飯を作っていた。
「おかえり」
「ただいま」
こっちはなんだか変な感じがする。雫から見る私ってあんな感じなんだ。
「熱っ!」
その声と同時に舌にビリッとした痛みを感じた。もうひとりの私が舌を出して顔を顰めていた。味見をして舌やけどをしたらしい。
「大丈夫? 遥ちゃん」
「大丈夫、ちょっと熱かっただけ」
びっくりした。もうひとりの私ほどじゃないみたいだけれど、少しジンジンしている。
「お水飲む」
「私も」
まだ少し痺れている感じがして舌を出すと、雫がきょとんとした顔を見せた。
「
……
遥ちゃん達、もしかして感覚が繋がってるの
……
?」
「うん、そうかもしれない。全部じゃなくて、少しだけだろうけど」
双子が相手が怪我をすると自分も痛くなるというような話を聞くけれど、そんな感じだろうか。だとしたら今日一日、雫が傍にいてくれたような感覚にも納得がいく。
「
……
」
複雑そうな顔をしたふたりに気付いて、なんだろうと思っていたら、ガチャガチャと鍵の開く音がした。そのままパタパタと駆け寄ってくる足音まで響く。いつもの雫よりずっと乱暴な音で、何かに慌てているみたいだ。
リビングに飛び込んできた雫が「ただいま」より先に、
「えっちなこと禁止!」
と、叫んだ。
「撮影中、大変だったんだから!」
「ご、ごめん」
「ごめんなさい、まさか感覚が繋がってるなんて思わなくて
……
」
「いつもより艶っぽいって褒められて早く終わったけれど、もうずっと、じ、焦らされてるみたいで
…
っ
……
」
顔を真っ赤にした雫がいつもより早口で捲し立てる。一瞬唖然としてしまった私も漸く事態を把握した。
「
……
あー
……
」
久しぶりの雫と一緒の完全オフ。一日雫と家でふたりきりなんだから。もし私が家にいても同じことをしていたんじゃないかな、と思うと申し訳ない気持ちになって、つい謝罪の言葉を口にした。
「
……
雫、ごめん
……
」
「どうしてそっちの遥ちゃんが謝るの? まさかそっちの遥ちゃんも昼間ここにいたの?」
「えっ、いないよ、さっき帰ってきたばかりだし」
「
……
そう」
雫がため息をつく。そんな雫にもうひとりの雫が寄り添うように隣に立った。
「本当にごめんなさい
……
」
謝られた雫が首を横に振る。
「
……
私もごめんなさい、取り乱して
……
。
……
逆だったら私もきっと同じことしてたわよね
……
」
雫が雫の滲んだ涙を指先でそっと拭った。
柔らかくて優しい雫達の雰囲気とは裏腹に、心も身体もざわざわした。ずっと焦らされてるみたいだったとか、そんな雫がカメラの前にいたのかと思うと、熱と冷たさがマーブル状に混ざり合ってぐちゃぐちゃになりそうだった。
隣を見たら、もうひとりの私も同じような表情をしていた。ぱち、と目が合う。むこうは違うだろうけど、雫をそんなふうにしたもうひとりの私に対しても嫉妬心が湧き上がる。
「
……
」
まいったなぁ。今日一日ずっと穏やかな気分だったのに。喉元まで溢れ出しそうになる感情を水と一緒に飲み込んだ。
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