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のたり
2023-06-11 08:02:25
1795文字
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hrsz
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きみ以外には
オメガバはるしず。ふたりともα。
雫の髪に顔を埋めたとき、微かに鼻を突いたのは雫の匂いにかすかに混じった甘いΩのフェロモンの残り香だった。
「
……
」
思わず顔を離した私に、雫はきょとんとして、それから何かに気付いたように苦笑いした。
「ごめんなさい、シャワー浴びてくるわね」
「あ、うん
……
」
そのまま雫を見送って、1人残された部屋で考えた。
誘発されるほどじゃなかったけれど、あれはたしかにΩのフェロモンだった。どうして雫から? あの様子じゃ雫には心当たりがあるんだろう。いったいどこで? 今日は学校が終わった後、一緒に雫の家まで直接来た。それなら学校? 雫の髪に直接触れるまで気付けなかったくらい微かな残り香だったから、もしかして昨日?
「
……
」
重く暗い感情が渦巻く。
雫が他の誰かと、なんて、疑うわけじゃないけど、でも雫の意志に反してΩのフェロモンに誘惑される可能性はある。雫は発情期もそんなに普段と変わらないし、Ωのフェロモンにも反応しにくいって言ってるけれど、いつ強く反応するようになるかなんて誰にもわからない。もし運命の番いに出会ってしまってら、雫だって
……
自分の考えにぞくっとした時、雫の声がした。
「遥ちゃん」
いつもと同じ雫の声にほっとした。
「開けるわね」
「あ、うん」
障子が静かに開く。雫と目が合って、雫は少しぎこちなく笑った。障子も閉めずに私のすぐ隣まで来て膝をつく。
「どうかしら」
私のすぐ横に正座して、髪を横に流しながらそう言った雫の首筋に鼻を近付ける。
「
……
いつもと同じ雫の匂い」
正直ほっとした。あの程度の残り香じゃ反応しないけど、でも雫に他人の匂いがついているのは嫌だった。
「今日、体育の時間にクラスメイトがヒートを起こしちゃったの。ペアストレッチ中だったから、多分その時に匂いがついちゃったんだと思うわ」
「
……
そっか。雫は大丈夫だった?」
「ええ。元々フェロモンは効きにくい体質だし、念の為に抑制剤も飲んでいたから」
「
……
うん」
よかった、という気持ちと、でも少し嫌だなという気持ちが入り混じる。あまりαとΩが体育や課外授業でペアにされることはないけれど、頼まれたら、大丈夫、と安請け合いする雫の姿は簡単に想像出来る。もっと自分を大事にして欲しい。出来れば、雫は私のだって、自覚を持ってくれればいいのに。
「遥ちゃん」
正座したまま、雫が私に近付く。触れそうなくらい近くに来た雫に胸が鳴る。抱きしめたいな。キスもしたい。あわよくば最後まで。
「
……
遥ちゃんは大丈夫だった?」
「え?」
不意に雫が見せたのは不安そうな表情。
「
……
大丈夫、って、何が
……
?」
もしかして私が不安がっていたことだろうか、とも思ったけれど、違う気がする。
「
……
遥ちゃんはフェロモンにあてられなかった?」
「それは、雫についてた残り香に、ってこと
……
?」
「ええ」
雫の目にどこか熱を感じて、身体の奥がざわつき始めた。
「
……
仕方ないってわかってるのよ。でも、遥ちゃんが私以外の人に、誘惑されるのは、嫌なの
……
」
どこか苦しそうにそう言った雫に愛しさと嬉しさが込み上げる。
「
……
されないよ」
されるわけない。
「雫のフェロモンを知っちゃったから、もう雫以外には誘惑されないよ」
赤くなった頬をそっと撫でる。きっと私も同じくらい赤くなってるんだろうな。
「
……
私、αよ?」
「知ってる。キスしていい?」
「
……
え、ええ
……
」
顔を近付けてそっとキスをした。キスをしながら、頬に触れていた手で耳に触れる。ぴくっと微かに雫が肩を揺らした。キスを深くしながら、耳の縁、耳朶、耳の裏。フェザータッチでゆっくりそっと撫でる。
「
……
んっ
……
」
私のキスに応えながら時折身体を揺らしていた雫が、耐えきれないように私の腕をぎゅっと掴んだ。
「
……
は、遥ちゃん
……
」
唇を離して、息をついた雫の表情にぞくぞくした。赤く染まった頬も熱い息を漏らす口もとろけそうに潤んだ目も、全部。
「
……
雫
……
」
腰を上げて膝立ちなって、雫を見下ろす。
「
……
していい?」
髪を撫でて、首筋に触れて。
「いいよね、雫」
雫が少し恥ずかしそうに、けれどふわりと微笑む。
「
……
ええ」
伸ばされた腕が私の首に回って、抱き寄せられる。
「たくさん、愛して」
耳元で囁かれた声も、まだ少し濡れた髪から香る匂いも、とびきり甘かった。
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