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のたり
2023-06-05 12:23:53
2463文字
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hrsz
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魔法学校パロしずはる
使い魔
「桐谷さんはどうするの?」
そう訊かれたのは変身術の授業の前だった。どう、というのは、教室移動中に話題になった使い魔のこと。
「まだ決めてないよ」
正直にそう答える。魔法とはほぼ無縁の生活をしていたヒューマンの家系の私とは違い、ウィザードやシャーマンの家系のクラスメイト達は入学前から使い魔がいる子達も多い。
人から譲り受けたり、専門店から買うのがメジャーだけれど、まだあまりピンとこない。
雫はどうなんだろう、と、ふと思った。ウィザードの家系だと言っていたから使い魔がいたっておかしくないけど、連れているところは見たことがない。
***
「雫は使い魔、いる?」
「使い魔?」
「うん」
「遥ちゃん、使い魔に会いたいの? 私はいないけど、妹が梟を飼っているから、よかったら会ってみる?」
「ありがとう。でも大丈夫だよ。そろそろ私も使い魔を検討した方がいいのかな、と思って、参考までに聞きたかったんだ」
「そうなのね。遥ちゃん、好きな動物は?」
好きな動物。そう言われてぱっと頭に浮かんだのはペンギンだった。
「ペンギン
……
」
「まぁ、ペンギンさん?」
「うん。昔から好きなんだ。丸いフォルムやちょこちょこ歩くところが可愛くて」
「そうね、可愛くていいんじゃないかしら」
「でも使い魔って感じじゃないよ
……
」
想像してみたけれど少し変な気がした。
「そう? 私、実際にペンギンさんを見たことがないけれど、鳥なんでしょう?」
たしかに鳥は鳥だけど、雫の言う鳥とは少し違う気がする。
「魔法界じゃお世話が大変かもしれないわね。でも遥ちゃんならきっと大丈夫よ」
「そうかな」
雫に大丈夫と言われると本当に大丈夫な気がするから不思議だ。、
「そうだわ、シュミレーションしてみない?」
「シュミレーション?」
「ええ。私をペンギンにしてみるの」
「
……
雫をペンギンに
……
?」
「変身術、そろそろ習ったでしょう?」
たしかに最近習ったし、授業では割とうまくいったけれど、あの時は筆箱と小さなネズミだった。人にかけるのは初めてだし、大丈夫だろうか。
「
……
できるかな
……
」
「大丈夫、やってみて」
「
……
うん」
杖を試しに軽く振ってみる。不安はあったけれど、背筋を伸ばして杖を構えた。
「フォーム!」
雫の周りに淡い光が舞って、身体が変化し始めた。雫の指が縮み始めて、インクが滲むように黒に染まっていく。
「
……
」
雫はなんでもないような顔で、むしろ微笑んでさえいたけれど、私は不安でいっぱいだった。だから雫の姿がちゃんとしたペンギンに変わった時、心底ほっとした。それと同時につい叫んでしまった。
「
……
かっわいい
……
!」
雫が羽をぴょこぴょこと動かす。可愛い。魔法学校に入学してからペンギンは一度も見ていなかったから、嬉しくてはしゃぎそうになる。
「ねぇ、雫、抱っこしてもいい?」
喋れないみたいで返事はなかったけれど、ちょこちょこと私の方へ歩いて来てくれたから、両手を広げた。
「
……
あ、でもどうやって抱っこすればいいんだろう」
ペンギンを撫でたことはあるけれど、持ち上げたことはない。雫が小さな子が抱っこを強請る時と同じように羽を上げたから、いいのかな、と思いながら脇に手を添えた。
「痛かったり苦しかったりしたら言ってね。
……
って、喋れないんだっけ。じゃあ、首を横に振ってね」
雫が頷いたから、できるだけ優しく掴む。思っていたよりふわふわで潰してしまいそうだ。気を付けながらそっと抱き上げた。
「
……
わぁ
……
!」
可愛い。やっぱり可愛い。
「可愛いなぁ。使い魔にできたら毎日抱っこできるんだよね、そんなことしていいのかな」
脚がプラプラしていたから、胸を合わせる形で縦抱きする。腕にちょこんと座った姿も可愛い。頬をすり寄せたら、すべすべしていて気持ちよかった。
「可愛い
……
」
肌触りがイメージ通りだなと思ったけれど、私が変身させたから本物のペンギンとは違うのかもしれないな。
雫がぺちぺちと羽で私の頬を叩いた。
「あ、そろそろ戻さないとダメだよね」
まだ慣れていない魔法だし、何かあっても大変だ。そっと雫を下ろして杖を構える。
「じゃあ戻すね。
……
レディーレ!」
けれど雫に変化は起こらなかった。ペンギンのままだ。
「
……
あれ?」
間違えてはいないと思うけれど、もう一度同じ呪文をかけてもいいんだろうか。迷っていたら、雫がなにか言いたげにジェスチャーした。全然わからない。
トコトコと雫が後ろに下がる。そして止まると頭を下げた。
「
……
雫?」
少しして、雫の身体の周りがぼうっと光り始めた。手のひらに乗りそうな程の大きさの光がいくつも浮かんでは、空気に溶けていくように消えていく。段々ペンギンが雫の姿に変わっていって、完全に雫に戻った時、光も消えた。
「
……
ふぅ」
「雫、ごめん、大丈夫?」
「ええ。私、こういう魔法は得意なの」
「よかった、元に戻って」
「ふふ、遥ちゃん、たくさん可愛いって言うから少し照れくさかったわ」
「あっ
……
」
そういえば、つい頬擦りもしてしまった。
「ごめん、雫」
「え? どうして?」
「ついはしゃいじゃって
……
」
なんだ、と雫は笑った。
「私は可愛い遥ちゃんを見られたし、たくさん抱っこして貰ったし、楽しかったわ。全然言いたいことが伝わらなかったのは残念だけど」
「そうだね
……
。使い魔にするなら意思疎通は必要だな」
雫はふふっと笑った。
「ペンギンさんを使い魔にしたら、私にも抱っこさせてね」
「うん」
頷いてから、ペンギンを抱っこする雫を想像して、それはきっと可愛いなと思ったけれど、すぐその後に少し胸が痛んだ。雫がペンギンを抱っこしたいなら、ペンギンに変身した私でもいいんじゃないかな。
自分で思ったことに少し戸惑った。こんなヤキモチ妬くなんて。
「
……
まだ使い魔はいいかな
……
」
「あら、そう?」
だから雫だって、使い魔がいなくても私が代わりになるよ、なんて、ちょっと言えないけど。
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