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のたり
2023-03-14 08:46:26
2221文字
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hrsz
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わかってる? って君は聞くけど
モモジャン解散後、互いに一人暮らししてるはるしず。
「あがっていかないの?」
きょとんとした顔で言われて、正直少し戸惑った。
「
……
雫、明日早いって言ってなかった?」
「ええ。遥ちゃんは遅いって言ってなかった?」
「うん。明日は午後から表参道」
「そうよね」
「雫は明日から京都でしょ?」
「ええ、明日は8時の新幹線に乗るから、マネージャーさんが7時には迎えにくるって」
「うん。じゃあ
……
」
「遥ちゃん、わかってる?」
「え?」
「私、明日から3日間東京にいないの」
わかってるよ。だから今日は少しだけでも一緒にいたくて、雫を仕事場まで迎えに行って、こうして家まで送ってきたんだから。
心の中で小さくため息をつく。
「
……
じゃあ、少しだけ」
「ええ」
雫はふふっと嬉しそうに笑うけれど、雫の方こそわかってない。少しでも長く一緒にいたいけど、それと同時に私がどれだけ我慢してるかってこと。
本当は雫にキスしたいし、雫に触れたい。できることなら雫を抱きしめたまま眠りたい。きっと泊まりたいと言ったら雫は迎え入れてくれるだろうけど、でもただ抱きしめたまま言葉通りに眠れるかと言われると自信がない。雫の仕事のパフォーマンスが落ちるようなことはしたくないから、大人しく帰ろうとしていたのに。
雫の後から家に入ってドアを閉める。鍵とチェーンをかけて振り返ったら、雫がすぐ近くにいて驚いた。それこそ額同士が触れそうな距離に。
雫が私の両頬を挟むようにして顔を上げさせて、その弾みで背中がドアにぶつかった。
「
……
し
……
」
雫、と呼ぶ前に、唇は塞がれた。
「
……
っ
……
」
私の唇を甘噛みした雫の唇は柔らかくて、まるで味見するみたいに舐めてきた舌にぞくりとした。
ーーああ、もう。わかっていてもわかっていなくても、本当に雫は狡い。崩れかけた理性をここから修正しようとしたって無駄なことは、もうとっくに思い知らされている。
……
なんて、ただの言い訳かもしれないけど、抵抗するだけ無駄だと半ば開き直って雫の腰に腕を回した。
「
……
ん
……
」
雫の唇。歯。舌。キスをゆっくり深くしていく。明日から3日間、雫は私の傍にいない。たった3日なのに。そのくらい会えなかったことなんていくらでもあるのにおかしな話だなと思うけれど、でも、寂しいよ、雫。
「
……
雫
……
」
キスの合間に雫の名前を呼ぶ。私の名を呼んで。声が聞きたい。そう思って唇を離したら、雫と目が合った。細められた目や唇から漏れた息に熱を感じて、その熱に当てられて頭の奥が痺れて行く。
「
……
ベッド行こう、雫
……
」
その一言が私の最後の理性だった。
***
「遥ちゃん」
「
……
ん」
「起きて、遥ちゃん」
「
……
ん
……
」
目を開けたら、雫の笑顔が見えた。
「私、もう行くわね」
「え
……
?」
もうそんな時間? いつもならとっくに起きているはずの時間まで眠ってしまったことに自分でも少し驚いた。
「合鍵、テーブルの上に置いておくから」
「
……
あ、うん
……
」
眩しい。そう感じて目を細めたら、雫がふふっと笑って顔を近付けてきた。そっと優しく目元に触れた後、「いってきます」と小さく囁く。
「
……
雫、待って」
雫の腕を掴んで、寝返りを打って顔を寄せる。キチンとボタンを止めたシャツの袖。まるで私だけが夜に取り残されているみたいだ。
「なぁに、遥ちゃん」
優しく頭を撫でてくれる手が心地良くて、どこにも行かないでって言いたくなるけど。
「
……
いってらっしゃい」
なんとか絞り出した私の言葉に返ってきたのは、嬉しそうな雫の声だった。
「ええ、いってくるわね」
ふふっと笑って、雫は私の鎖骨の下あたりを指先で撫でた。その場所に何があるのかは知っている。昨日、雫が私につけた跡だ。今はシャツの下に隠れて見えないけれど、雫の同じ場所には私がつけた跡があるはず。
「
……
大丈夫? 眠くない?」
「大丈夫よ。眠くなったら新幹線で眠るわ」
「
……
うん」
「ねぇ、遥ちゃん。お願いがあるの」
「なに?」
「もしよかったら、明明後日、おかえりなさいって言ってほしいの」
「
……
うん、わかった」
「遥ちゃん、本当にわかってる?」
わかってるよ。少し不安そうな顔をした雫に笑ってみせる。
「明明後日、この家で待ってる」
私がそう言うと、雫は今日一番嬉しそうに笑った。
雫が出て行くときのドアの音はベッドの中で聞いた。枕に残る雫の匂いを感じながら、しばらく目を閉じていた。
まだ指先にも唇にも雫が残ってる感じがする。雫の熱も蕩けるような蜜の味も。耳の奥には雫の不規則な息遣いや甘い声も。瞼の裏に映るのはシーツを握りしめて体を震わせながら感じてくれる雫の姿で。胸の奥に残っているのは、甘く満たされた名前のついていない何かと会いたいと願う寂しさ。
テーブルの上には雫が言っていた通り、合鍵が置かれていた。その横にはマグボトルと「遥ちゃんへ」と書かれた付箋。マグボトルを開けたらお味噌汁が入っていた。いつのまに作ったんだろう、と綺麗に片付いたキッチンを眺めながら、一口飲んだ。
「
……
美味しい」
口にし慣れた雫のお味噌汁の味にほっとした。
雫の合鍵には、緑のペンギンのキーホルダーが付いていた。私の車のキーにはお揃いの青のペンギンが付いている。私の合鍵に付け替えて雫に渡そうか。それとも、一緒に暮らそうってもう言ってもいいかな。
「
……
会いたいな」
つい1時間前まで会っていたのに、変な話だけど。
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