のたり
2023-02-09 23:01:37
2148文字
Public hrsz
 

酔ってる雫さんと素面の桐谷さん。

同棲設定のはるしず。…しずはる?

珍しく雫が酔って帰ってきた。
今日は高校の同窓会だと言っていたから意外だったけれど、「同窓会の後、愛莉ちゃんと2人だけで少し飲んできたの」と聞いて納得した。
…………
雫が背中を丸めて目を擦る。
「あ、雫、だめだよ、マスカラ……
……あ、うん……
ソファーで寝落ちしてしまいそうな雫の隣に座って、マグカップを支えながら白湯を飲ませた。
「大丈夫?」
……ん、大丈夫……。ありがとう、遥ちゃん」
雫はふわりと笑ったけれど、いまいち焦点が合っていない。この様子じゃシャワーは難しそうだし、とりあえずメイクだけでもと思って洗面所にグレンジングシートを取りに行った。リビングに戻ると、雫はマグカップを両手で持ってひと息ついていた。
「雫、顔洗いにいける?」
「どうかしら」
さっきよりはちゃんとした口調だったけれど、立ち上がる気はないらしい。
「メイク落とした方がいいよ」
「してくれないの? 遥ちゃん」
上目遣いでいつもより甘えた声を出す雫に一瞬息が詰まった。
……今までだってしたことないでしょ、そんなの」
「そうね」
雫はふふっと笑って、クレンジングシートを受け取る。元々雫の化粧は薄い方だけど、ルージュと一緒に大人びた雰囲気も拭われたように見えた。メイクをした雫も素敵だと思うけれど、素顔の雫はなんとなく安心する。
雫が使い終わったシートをゴミ箱へ捨てた。鏡を使っていないせいかまだ目尻に少しファンデが残っていたから、新しいシートを取り出して、雫の前に立った。
「雫。目、閉じてて」
「まだ残ってる?」
「少しね」
私を見上げた雫が素直に目を閉じる。顎に手を添えて、目尻に残ったファンデを拭った。全身がざわついてキスしたい衝動に駆られるけれど、それを抑えながら、他にも落とし忘れがないか確認してから手を離した。
「もういいよ」
雫は目を開けて、ふわりと微笑んだ。
「ありがとう、遥ちゃん」
「ベッドまで運ぶから、コート脱いで」
「脱がせてくれないの?」
そう言って雫は笑顔のまま両手を広げた。
小さくため息をついてから、コートを脱がせる。本当はハンガーに掛けたいところだけれど、先にもうベッドに連れて行ってしまおうと思って、とりあえずソファーの背もたれに掛けた。
「コートだけ?」
「ホントに酔ってるね、雫」
「ダメかしら」
「ううん。楽しいお酒だったみたいでなによりだけど」
「ええ。楽しかったわ」
「うん、よかった。じゃあ、雫、ちゃんと掴まってて」
「抱っこして連れてってくれるの?」
「うん」
雫の脇と膝裏の下に腕を入れて抱き上げるのに合わせて、雫は私の首に腕を回した。雫を抱き上げて、寝室に向かう。ふふっとまた笑った雫の声と頬に触れる髪が少しくすぐったかった。
「遥ちゃん、知ってた?」
「なにを?」
「私、遥ちゃんのこと好きだったのよ」
知っているもなにも、もう何度も言って貰ったし、同棲までしてるのに。それでも嬉しくて、なんだか照れ臭くなるけど。
……うん、知ってるよ」
私も好きだよ、と返す前に雫が言葉を続けた。
「そうじゃなくて、遥ちゃんがまだ中学生の頃から、ずっと好きだったのよ」
「中学?」
「ええ。久しぶりに高校のみんなと会ったから思い出したわ。あの頃から遥ちゃんしっかりしてたけど、まだ中学生なのよねって、年下の女の子を好きになるなんていいのかしらって、少し悩んだりしてたの。今となっては可笑しいけれど」
……そうなんだ」
それは知らなかったな。
「もっと早く言ってくれればよかったのに」
「だって遥ちゃん、私のこと、そんなふうに見てなかったでしょう?」
「見てたよ」
「え?」
高校生だった頃の雫を思い出す。泣き顔も困ったような顔も笑顔も、いつだって雫は。
「多分、好きになったのは私の方が先だから」
一度抱え直してから、ベッドに雫を降ろす。私が手を離した後も雫は私に抱きついたままだった。
「雫?」
「遥ちゃん、それ本当?」
「どれ?」
……もう。好きになったのは遥ちゃんの方が先、ってこと」
「本当。ずっと雫に片想いしてた」
高2の春、私から告白して両想いになれたあの日まで。
「もっと早く言ってくれればよかったのに」
「お互いさまだね」
腕を解いて、という意味で軽く腕をさすったけれど、逆に雫は腕に力を込めた。
……雫、そろそろ離して?」
「だめ?」
「だめじゃないけど……
自制心は強い方だと思っているけど、雫相手じゃ途端に自信がなくなる。今だって。
「本当に脱がせてくれないの?」
「くれない」
……残念」
苦笑いした雫の腕がするりと落ちて、そのままベッドに横たわろうとするのと同時に、雫を押し倒した。
「きゃっ」
「脱ぎたかったら自分で脱いで、雫」
「遥ちゃん……?」
「誘ったのは雫でしょ?」
「そうね」
ふふっと笑った雫の髪を梳くように頭の後ろに手を回して、キスをした。ほんのりと赤く染まった首筋に噛みつきたくなるのを我慢して、そっと撫でた。
……いつもより、熱いね」
……そう?」
「うん」
そのままもう一度キスをした。さっきより深く、長く。雫と覚えた大人のキスは、いつも甘くて優しい。今夜は少しお酒の匂いがした。