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のたり
2022-10-08 18:26:00
1467文字
Public
hrsz
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最後の共演
同じグループだと共演って言わないよね、って話。
最初に見た時、これはいつだったかしら、と思った。 そしてすぐに思い出した。
「これ、遥ちゃんと共演した時のやつね」
スマホで見せてもらった画像は少し荒いものだったけれど、そこに写っていたのは、テレビで共演した時の私と遥ちゃんだった。この番組の収録から数ヶ月もしないうちに、遥ちゃんは芸能界を引退した。
「遥ちゃんは覚えてる?」
「うん、覚えてるよ。チアデの曲のワンフレーズ、一緒に歌ったんだよね」
懐かしいな、と、遥ちゃんは笑った。
「私も覚えてるよ、ASRUNが歌い終わったらチアデのイントラが流れて、雫ちゃんが出てきて、そのままバトンタッチかと思ったら遥ちゃんも一緒に歌い出すんだもん!」
早口で熱く話すみのりちゃんが微笑ましくて、なんだか嬉しくなる。
「よかったわ。ファンのみんなが楽しんでくれるのが一番だもの」
あの演出を知らされた時、その場に満ちたのはメンバーの冷ややかな反応だった。本来なら3人で歌う冒頭ワンフレーズを2人で歌い終わった後、遥ちゃんと交代で他のメンバーが出てくるという演出に「また雫だけ」と言われるのは簡単に予想出来たし、実際にそうだった。
スマホ画面の中の、ASRUNの衣装を着た遥ちゃんとCheerful*Daysの衣装を着た私。
「
……
楽しそうね、私達」
でもこの時、遥ちゃんはアイドルを辞めるかどうか悩んでいたはずで、私はそれに少しも気付けなかった。
「実際、私は楽しかったよ」
「え
……
?」
「たしかにつらい時期だったけど
……
。雫、覚えてる? リハーサルの時、チアデの曲から歌ったでしょう?」
「ええ」
「メンバー以外の人と歌うなんてなかったから緊張したけど、久しぶりに気持ちよく歌えて、本番も怖くなくなったんだよね」
「
……
遥ちゃん」
「雫のおかげだね。ありがとう」
私もあのステージはとても楽しかった。控室でのことなんて全部忘れられた。遥ちゃんに動きを合わせるのが楽しくて、重なった歌声が心地良くて、もっと一緒に歌いたいと思った。
「今思えば、雫もこの頃悩んでたはずだよね。でもそんなこと、全然感じさせないくらい、カメラの前の雫は堂々としてた」
「
……
それは、遥ちゃんがリードしてくれていたから」
あの収録が終わった後、やっぱり私はセンターでみんなを引っ張っていくのは向いていないと落ち込んだりもしたけれど。
「そんなふたりが今は同じグループで活動してるんだから、人生何が起こるかわかったもんじゃないわよね」
「そうだね」
愛莉ちゃんの言葉に遥ちゃんが笑う。
本当に愛莉ちゃんの言う通りだ。こうして4人でアイドルをする日がくるなんて思ってなかった。あの頃の私に言ってもきっと信じられないと思う。でも、間違いなく私は今ここにいる。
「
……
また歌ってみたくなったわ」
「えっ、是非是非! すっごく聞きたいよ〜〜!」
「歌ってみたくなった
…
、って、あの時の曲? さすがにファンのみんなの前でとはいかないから、4人でカラオケの時とかかな」
「ええ、そうね。どうせならみんなで歌いましょう?」
「うん、そうだね」
「でもまずはおふたりで〜!」
「みのり、あんたはいい加減コールだけじゃなくて一緒に歌いなさいよ
……
」
「せっかくだからボイストレーニングも兼ねて普段歌わない曲も歌おうよ」
「あんたはまたすぐそうやってトレーニングにしようとして
……
、素直に遊ぶことも覚えなさいよ」
目の前の3人が眩しくて目を細める。きっと私も同じくらい輝けると信じてる。だって私達、同じグループのメンバーなんだもの。
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