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西浦
2025-02-11 11:42:27
2104文字
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せめて笑って死んでくれ
せめて笑って死んでくれ カルマ・ルデルマ×夢主(容姿名前有り)
逆噴射檸檬太郎さん宅の「カルマ・ルデルマ」さんの夢小説です。『不孝者のバラッド』に至るまでのある日の話。
誤字脱字があったらスミマセン。解釈違いがあったら笑って忘れてください。よろしくお願いします。
気が触れるほど美しい夜だった。
月の光が星たちを食い荒らし、木々は風と戯れる。獣共がいやらしく哄笑すれば、老人の死体に虫がたかり肉を貪る音がした。
神に唾を吐くにはこれ以上の日はないだろうそんな夜に、美しい黄金と白銀が薄暗闇に瞬いた。
「マリアちゃん! 見て見て、蝶々!」
「カルマさま、それは蛾ですね」
えへえへと子供っぽい笑顔で蛾の翅を摘んで見せてくるカルマに、マリアはさりげなく距離をとりながら努めて冷静に微笑んだ。七面倒臭いな
……
と内心で大きな舌打ちをして。
今日、カルマは外に出されることなく黙々と書類にサインを書きつける作業を強制されていた。ちょっと目を離すと、やれ「飽きたぁ」だの「インクこぼしちゃった!」だの
……
いじけたり余計な仕事を増やしたり脱走を図ったりなんとか机から逃れようとカルマは奮闘していたが秘書や部下たちの圧に負け、しょぼしょぼしながら山のように塊になった書類たちを然るべき場所へ旅立たせて行った。
ちなみにマリアはカルマが缶詰にされている間、「お前がいるとあの人は甘えて進む作業も進まない」と部下たちから唸られたので食事の下拵えや掃除などの雑用をこなしていた。仇のそばで内心を悟られないように世話する仕事よりよっぽど心休まる時間だったな
……
と遠い目をしながら。
さて、日中ほとんど椅子に縛り付けられていたカルマは、案の定眠ることができなくなった。
元々体力が有り余りすぎているカルマにとって適度
——
常人には過ぎた運動量だが
——
に身体を動かすことは犬の散歩のように必須と言ってもいい習慣だ。そんな風であるのに今日のカルマがやったことといえば見張られながらのストレッチ、あとトイレに立ったくらいである。
当然、若干やつれた精神とは裏腹に元気一杯の身体は睡眠という概念を忘れたようにそわそわと落ち着かず、マリアが絵本を読んだり子守唄を歌ったり
……
大きな身体をすり寄せて添い寝を要求され血反吐を吐く心地で隣に横たわったりもした。が、マリアの奮闘虚しくどうにもこうにも眠気は訪れなかったらしく寝ぐずりするカルマがとうとう「もうヤダッ寝ない! ねむくないっ!」といじけ始めたので、いい加減カルマのスムーズな入眠を諦めたマリアが「お散歩しましょうか」とカルマを庭に連れ出したのだ。
「うーん
……
静かだね」
「夜ですから、獣も寝ているのでしょう。
……
思ったより風が冷たいですね
……
、
……
カルマさま、寒くありませんか?」
「全然へいき! マリアちゃんがたくさん着せてくれたから、むしろあったかいくらい」
「そうですか」
「うん
……
あの、マリアちゃん」
「どうしました?」
「うんと、えっと
……
、
……
」
穏やかな低音はどこか幼なげで、マリアの手をちら、と盗み見る仕草は将軍とは思えぬほど拙い。
カルマの手がそわそわと指先を泳がせる落ち着きのなさに怪訝な表情をしかけたマリアが、そろそろと近づいてきたカルマの手にぱち、と瞬きをする。
——
ああ、手を繋ぎたいのね
美しい獅子のような男、カルマ。マリアよりもはるかに高い上背と女の身体なんて指先で壊してしまえるほどの力を秘めている肉体を持つくせに、今のカルマは頬を染め眉を下げて
……
まるで、叱られることを恐れる子供のように不安をいっぱいにした顔で唇を結んでいる。
「
……
カルマさま」
「ッ! な、なあに」
「私、手が寒くなってしまいました」
「ぇ、え?」
「手を、繋いでいただけませんか」
スッと、マリアがカルマの手を取る。
カルマの手は温かかった。大きく、厚く、固く、人間の手をしていた。
カルマは一瞬、きょとんと目を丸くしてそのあと輝く太陽のように笑った。無邪気で、幼気で、幸福を隠さない笑みを、忠誠など一つもないマリアに
……
カルマへの愛など一つもないマリアただ一人に向けて。
「
……
」
「えへへ、どう? マリアちゃん。手、あったかい?」
ああ、母の仇、黄金の獅子よ。戦場でこそ生きる獣よ。
「ええ、とても」
お前がこんなにも
幼
いとけな
くなければ、私は恨んでいられたのだろうか。
お前がこんなにも温かくなければ、私は恨んでいられたのだろうか。
お前がこんなにも人でなければ、私は恨んでいられたのだろうか。
——
きっと、できなかったろうな
遅かれ早かれ訪れた日が、たまたま今日だっただけ。マリアの燃え盛る憎悪は、血の味の覚悟は、男の笑顔ひとつで消えてしまうくらい安っぽいものだったってこと。所詮、マリアは女でしかなかったということ。
——
あーあ、私って酷い女
ああ、母の仇、黄金の獅子よ。戦場でこそ生きる獣よ。
強いままで死んでくれ。血潮に塗れて死んでくれ。頽れることなく死んでくれ。
美しいままで死んでくれ!
いつかの日、
来
きた
るお前の今際の際はせめて笑って死んでくれ。
そうしたら、そうしたら。地獄の業火に焼かれるときにあなたのその手を迎えに行って、優しくやさしく繋いであげる。
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