ゆきと
2025-02-11 11:08:01
2537文字
Public DQ3(賢勇SS/会話文)
 

ダーマで転職したときの話

あいかわらずの賢者と勇者が喋ってる会話文。うちの遊び人がしゃーねー賢者やるかあとなったときの話。

「ところで、なにかな?話って」
この前のこと、ちゃんと答えておきたかった」
「この前?」
「魔物だったら斬ったのか、って質問」
「ああ、聞いたねぇ、そんなことも気にしてたの、ゴメンゴメン」
「いい。あの時は即答できなかったから、考えてたんだ。それでもぐちゃぐちゃでうまく言えないんだけど聞いてくれるか?」
「いいですとも。聞いたのはボクだしね」
「ありがとう。結論から言うと、今はもう、斬れないかもしれない」
「今は?」
「おまえに聞かれなかったら、斬ってた気がする」
「ありゃ、それは悪いことをしたかな?」
「どうかな。おれはずっと、魔物はみんな魔王の手先だ、敵だ、と教えられてきた。でも実際はそうじゃない魔物もいて守るべき人間にも、よくない人たちは居て。アリアハンを出てから、世界はとても複雑だって知った」
「うん」
「あのときは、判じる理由にはならない、って言ったけど。あの場で相手の命を握ってたのはおれなんだから、判じることから逃げられるわけがなかったし、おれは許すという審判をしたんだよな」
「なるほど、そうだね」
「そう考えたら、人間とか魔物とかの区別であらかじめ許す許さないを決めるのは難しいって思った。だから、斬れない、かもしれない。おれはどこまでいっても人間側の存在だから、その善さを信じていたいし、人間側に甘い判断をするだろうけど、魔物だから斬るとは一概に判断したら駄目だって思った。伝わってるか?」
「十分に。ボクはね、単純に勇者クンの覚悟が知りたかっただけだったんだ」
「それは……すまない」
「いーや。満額回答におまけがついてきた気分!よし、ボク決めた!転職するよ。驚かせてあげる!」
「あんなに嫌がっていたのに?」

「きみの力になりたいと思ったんだ、アルス」

……おれ、おまえを頼りにしてるって、言わなかったっけ」
「聞いた。それ以上に、って話。ボク……いいや、いつものは無しで話そう。俺はね、きみの旅に同行してからずっと考えてたことがあるんだ」
「ずっと考えてたこと?」
「きみが俺の同行を受け入れた理由だよ。酒場の反応でわかったろ、遊び人を連れ歩く物好きなんてほぼいない。魔王を倒す旅の人選としては悪手もいいとこ」
「おまえが強引に来ていや、決めたのはおれか」
「それ、好きなところだけどほどほどにね。とにかく、きみが無意識にしろ、俺を連れて行く判断をしたのは何故なのかって考えてた」
わかったのか?」
「わからなかったんだなあ、これが」
「なんだよ、それ」
「わからなくても、きみは俺を連れて行こうとするし、俺がきみについていく目的には影響ないから、かまわないんだけどね」
すまない、おまえの言いたいことがつかめない」
「俺はきみのことを、きみが思っている以上に見てるし考えてる、ってことかな。そのうえで、俺は転職しようと思う」
「リドが言ってたことを気にしてる?」
「多少は」
「おれは、ルフェールがいまのままでもかまわない」
「それは俺が困る。このままだと死んじゃいそうだし死なせちゃいそうだしね。ただ、君の理由もわからない、俺の目的も達成できないまま投げ出すのがちょっと嫌でさ。だから抜けるか力をつけるか、選択肢は2つなんだ。そうして悩んでるところに、きみが来た」
あの質問に答えないまま別れるのは嫌だと思った」
「そっちの想定で来たわけだ、なるほどね。実際、離脱に心が傾いていたしなあ」
「でも、転職の話になるとは思わなかった。ルフェールは、遊び人っていう職業を気に入ってるし、プライドもあるように見えてたから」
「ありがとう。でも選択肢は俺の中で2つだったんだよ、アルス。きみは俺の、答えを出すのが難しい、でも戦っていくには大事な疑問に、よく考えてきみなりの決意をくれた。これまで見続けてきた積み重ねと、その決意が決め手で、きみは信頼に値すると判断した。だから、これからも見ていたいし力になりたいから転職してついていくよ、――ね、ボクの勇者クン!」
「ぼなんだよいきなり」
「あはは、まじめにしゃべるの疲れちゃった!転職はどんな感じか楽しみだけど、ずーっとあれは無理かも!」
「そこまで変える必要ないだろ」
「そうだね、ボクはかわらないよ。やり方が変わるだけ。だから勇者クンも心配しなくていいよ!たださあ、芸人にとってメイクは重要なんだよ〜。この純白の顔とお別れしたら、すこし芸風変えたほうがいいでしょ?」
「(なにかを想像している)……たしかに」
「ボクちょっと作戦練るからさ、宿もう一室とれない?蛹の姿は見られたくないなぁ」
「わかった。行ってくる」

(信頼に値する、かあ思い切ったことを言ったもんだ、俺も)



<以下追記>
で、この裏にあった思惑の話。
ルフェの転職、「遊び人の自分が、余裕のない勇者が実際は余力があることを可視化する装置になっている」→「どうやら自分は余白として依存され始めている」→「依存は良い笑いを生まないし、よくない傾向」→追い詰めるかもという意識がありつつ遊び人をやめる 賢者を選んだのは向いてる気がしたから
これ以外にも「勇者個人が、力を貸したいと思う好ましい人格だった」というのは当然あるし、「笑わせるには重責を排するアプローチのが良いかもしれない」という思惑もあるが、そもそも勇者を笑わせてやるからな、というの自体が彼にとっては壮大な暇つぶしなんだよな実は暇つぶしに命をかけるな
暇つぶしのはずだったんだけど、実際にまじめに戦いに向き合い始めてから(=賢者になってから)、勇者に対し少しずつ執着が芽生えてきた感覚があって、本人は観察のし過ぎで恋愛感情発生したのかと解釈しつつ、生きる理由がない自分がこの感情持つのおもろいな、と放置してるうちに大変なことになった
戦闘が激化してきてから「死んじゃいそうだから抜けたいな~」と思うことは何度もあったらしいんだけど、先陣張る勇者は健気だと思うし、勇者として重責をどんどん負わせてくる世界と謎の声にちょっとむかつくし、別に苦しめたいわけじゃないんだよな、で不思議と抜けられなかったんだって